職長・安全衛生責任者教育とは?受講内容や受講方法を紹介
建設業や製造業などにおいて、現場作業員に指導や指揮をおこなう職長・安全衛生責任者が担う役割はとても重要なものです。
それぞれの役職につくためには、労働安全衛生法で定められた教育を受ける必要があります。本記事では、職長・安全衛生責任者教育の受講内容やそれぞれの違いや、知っておきたい再教育などについて解説します。
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以下の資料では、安全衛生教育の種類や実施方法について図でわかりやすく解説しています。ぜひお役立てください。
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職長・安全衛生責任者教育とは
職長・安全衛生責任者教育とは、労働安全衛生法第60条にて義務付けられている、一定の業種における職長等への教育のことです。
職長とは、作業中の労働者を直接指導または監督する立場の人のことを指します。職長は、さまざまな作業員が働く現場の安全を守る大切な役割を担っています。労働災害を防ぎ、現場作業を円滑に進めるためにも、職長教育は重要です。
さらに、一定の要件を満たす建設現場に入った事業者は、現場における安全衛生の責任を負う安全衛生責任者を選任することが義務付けられています。
安全衛生責任者とは、建設業または造船業の現場にて、事業者の代表として現場の安全に対して責任を負う職務です。
2023年4月からは、改正労働安全衛生法が施行され、教育をおこなう義務のある対象職種が拡大されています。
新たに追加された業種 |
食料品製造業(うま味調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く。) |
職長教育とは
職長教育とは、職長またはその他の作業中の労働者を直接指導、監督する職務に新たに就いた方が必ず受けなければならない教育のことです。
職長教育は、現場作業が安全に進むよう、作業全体の状況を確認するためにも重要です。
職長教育の実施が義務付けられている業種は次のとおりです。
<対象業種>
対象業種:建設業、製造業(一部繊維工業・紙加工品製造業などを除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業、食料品製造業(うま味調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く)、新聞業、出版業、製本及び印刷物加工業 |
安全衛生責任者教育とは
安全衛生者責任教育とは、新たに安全衛生責任者に就く方、あるいは職務に就いてからおおむね5年ごとに受けなければならない教育のことです。
企業には、安全衛生責任者に選任して間もない方や、将来選任する予定の方に対して、「職長・安全衛生責任者教育カリキュラム」にもとづく安全衛生教育を実施するよう努めることが求められています。
安全衛生責任者は、複数の下請け会社がかかわる工事をおこなう元請会社が統括安全衛生責任者を選任しなければならない場合に、請負人がそれぞれ選任する必要があります。
安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者との連絡や調整、労働災害にかかるリスクの確認などをおこなう役割を担います。
安全衛生責任者教育の実施が求められる業種は、次のとおりです。
<対象業種>
建設業、造船業 |
職長・安全衛生責任者教育の同時受講も可能
職長・安全衛生責任者教育は、2つを同時に受講することも可能です。
建設業では、職長が安全衛生責任者に選任されるケースが多いことから、職長教育と安全衛生責任者教育を同時に受講できる研修が用意されています。
職長・安全衛生責任者教育の受講で、職長教育と安全衛生責任者教育の2つを修了したと認められます。
業務とは別に教育を受ける従業員の負担を軽減するためにも、職長・安全衛生責任者教育の同時受講は有効です。
職長・安全衛生責任者教育の受講内容
では、職長・安全衛生責任者教育では具体的にどのようなことを学ぶのでしょうか。ここからは、職長教育と安全衛生責任者教育、職長・安全衛生責任者教育それぞれのカリキュラムについてご紹介します。
職長教育のカリキュラム
職長教育は、職長または現場において作業員を直接指導・監督する班長や主任、リーダーなどが受講の対象です。職務内容に現場での指揮・指導が入る方は受講の対象のため、職長以外でも該当する従業員がいれば職長教育を受けてもらう必要があります。
具体的なカリキュラムは次の通りです。
内容 |
時間 |
作業方法の決定及び労働者の配置に関すること |
2時間 |
労働者に対する指導又は監督の方法に関すること |
2.5時間 |
危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること |
4時間 |
異常時等における措置に関すること |
1.5時間 |
その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること |
2時間 |
職長教育では、労働災害の仕組みと発生した場合の対応方法や、職長の役割、作業員への指導・監督の方法を学びます。
あわせて、危険性のあるもの、有害性のあるものの調査方法や、異常時の対応方法についての知識も得られます。
安全衛生責任者教育のカリキュラム
安全衛生責任者教育の対象者は、複数の下請け企業が入る作業現場の元請企業側の代表者と、元請企業の統括安全衛生責任者との連携や調整をおこなう人が対象です。
具体的なカリキュラムは次のとおりです。
内容 |
時間 |
安全衛生責任者の職務等 |
1時間 |
統括安全衛生管理の進め方 |
1時間 |
労働者に対する指導又は監督の方法に関すること |
1時間 |
作業設備及び作業場所の保守管理に関すること |
2時間 |
異常時等における措置に関すること |
2時間 |
引用:建設業における安全衛生責任者に対する安全衛生教育の推進について
職長教育と安全衛生責任者教育は、カリキュラムの内容と時間に違いがあります。安全衛生責任者教育では、安全衛生責任者の職務に加え、安全衛生に関する内容を学べます。
安全衛生責任者教育では、安全衛生責任者の心構えや労働安全衛生関係法令について、安全施行サイクルなどを学べます。
職長・安全衛生責任者教育の受講方法
職長・安全衛生責任者への教育には、大きく分けて企業が自ら実施するものと、外部の安全衛生団体が実施する研修を受講させるものの2つがあります。
また、受講方法には「会場」「出張講習会」「オンライン」の主に3種類があり、それぞれに特徴が異なります。職長・安全衛生責任者教育の受講方法とそれぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
会場での受講の特徴
受講者が会場に足を運び、現地で研修を受ける方法です。会場での研修には各地の労働基準協会の支部や協会などの団体が実施するものや、民間企業が実施するものがあります。
研修の日程や会場、受講料は実施団体などで異なるため、会場の受講を選択する際は事前に料金を含めた情報を比較すると良いでしょう。
会場で受講するメリットは、適度な緊張感の中で集中して研修を受けられる点にあります。受講中に生じた疑問はその場で講師に質問できることも利点です。
ただし、平日に受講しなければならないこと、移動にコストがかかること、天候などにより出席できないリスクがあることはデメリットといえます。
出張講習会での受講の特徴
職長・安全衛生責任者教育を受講したい企業が、講師を派遣してもらい実施する方法です。講師のスケジュールとの兼ね合いにはなるものの、会場での受講と比較して日程を柔軟に決められる利点があります。
ただし、料金は他の受講方法に比べて高い傾向にある点はデメリットといえます。多くの場合、料金は受講者の数や講師の交通費、宿泊などによって異なります。
出張講習会での受講を希望する場合には、複数の企業や団体に問い合わせ、料金や受講が可能な日程などを比較し選定すると良いでしょう。
オンラインでの受講の特徴
どこにいても受講できるオンラインの研修は、実施方法がさらに細分化されます。受講者のパソコンやスマートフォンから受講する方法や、会議室などに集まり集団で受講するもあります。
また、研修を実施する企業や団体によって使用するツールや環境が異なるため、事前のチェックが大切です。オンラインでの受講は、他の受講方法よりも比較的低コストで受講できる利点があります。また、オンライン受講では日時の調整がつきやすいため、業務の合間に受講できることもメリットです。
一方で、オンライン受講では開始から終了まで集中することが難しいケースがあること、講師に疑問点をすぐに確認できないことから学習効果が薄まる可能性がある点に注意が必要です。
職長・安全衛生責任者の再教育とカリキュラム
「安全衛生責任者教育とは」の項で説明した通り、建設業における職長・安全衛生責任者は、機械または設備に大きな変更があった際や、職務に就いてからおおよそ5年ごとに再度教育を受けるよう求められています。これを「職長・安全衛生責任者の再教育」と呼びます。
職長・安全衛生責任者の再教育のカリキュラムは次のとおりです。
内容 |
時間 |
職長等及び安全衛生責任者として行うべき労働災害防止に関すること |
2時間 |
労働者に対する指導又は監督の方法に関すること |
1時間 |
危険性又は有害性の調査等に関すること |
30分 |
グループ演習 |
2時間10分 |
初めて受講する職長・安全衛生責任者の講習と異なるカリキュラムとして、グループ演習があります。グループ演習では、「災害事例研究」「危険予知活動」「危険性又は有害性等の調査及び結果に基づき講ずる措置」のいずれか1つが実施されます。
安全な現場作業を実現するためにも!職長・安全衛生責任者教育を実施しよう
建設業・製造業をはじめとする特定の業種では、従業員に職長教育と安全衛生責任者教育を受講させる必要があります。職長・安全衛生責任者教育は、法律遵守の面だけでなく、現場の安全を守るためにも重要なものです。
初めて職務に就く従業員や安全衛生責任者に就いて5年が経過する従業員がいないかなど、職長・安全衛生責任者教育の必要がある従業員を洗い出し、どの受講方法が自社に適しているのか、コストも加味しつつ受講方法を検討してみましょう。
以下の資料では、安全衛生教育の種類や実施方法について図でわかりやすく解説しています。ぜひお役立てください。