女性活躍推進法とは? 2022年以降の改正内容や取り組み義務などを解説
2025年度末までの時限立法として2016年4月より施行された「女性活躍推進法」は、働く女性の活躍を後押しするための法律です。
本記事では、常時101人以上の労働者を雇用する企業に義務づけられた取り組み、法改正のポイントなどを解説します。
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女性活躍推進法とは? 取り組み内容や法改正の概要を解説
女性活躍推進法とは、働きたいと望む女性が個性・能力を十分に発揮できる社会の実現を目指して制定された法律です。
正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といい、2016年4月1日より全面施行されました。
日本では人口減少による労働力不足が懸念されており、意欲や能力のある女性の力を活かすことは人材確保において非常に有効な手段です。
女性が職業生活と家庭生活とを両立しやすい職場環境をつくるために、女性活躍推進法には国や地方公共団体、一般事業主がおこなうべき取り組み事項が明示されています。
義務づけられている取り組み、法改正の内容などを詳しく見ていきましょう。
女性活躍推進法に基づいた取り組み・罰則について
女性活躍推進法に基づき、国や地方公共団体、一般事業主(常時101人以上の労働者を雇用する事業主)に対して以下の取り組みが義務づけられています。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
上記の取り組みをおこなわない場合、厚生労働大臣から報告を求められたり勧告されたりしますが、その時点での罰則はありません。
ただし報告を求められたにもかかわらず、報告をしない、もしくは虚偽の報告をした場合には20万円以下の過料が課せられます。
また、勧告に従わない場合には企業名が公表される可能性もあるため注意しましょう。
女性活躍推進法は2022年4月の法改正に要注目!
2022年4月の法改正により、行動計画の策定や情報公表などの取り組み義務の対象が、常時雇用する労働者数301人以上から「101人以上」の事業主に拡大されました。
100人以下の事業主は努力義務です。
「常時雇用する労働者」とは、正社員やパート、契約社員、アルバイトなどの名称にかかわらず、次の①または②のいずれかに該当する労働者を指します(学生アルバイトは除く)。
参考:厚生労働省「⼥性の活躍推進企業データベース」
ただし日本企業の国外にある事業所で雇用される労働者は、「常時雇用する労働者」に該当しません。
この点も踏まえ、人事労務担当者は自社の「常時雇用する労働者数」を正しく確認しましょう。
【改正の変遷一覧表】女性活躍推進法は2025年度末までの時限立法
女性活躍推進法は、10年間(2025年度末まで)の時限立法として2015年8月28日に国会で成立しました。
施行された2016年4月1日以降、次のように法が改正されています。
参考:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」
2025年度末(2026年3月31日)までの間、国を挙げて集中的かつ計画的に女性の職業生活における活躍を推進していきます。
今後も法律が改正される可能性があるため、人事労務担当者はこまめに情報収集をおこないましょう。
女性活躍推進法の一般事業主行動計画の策定・公表・届出までの流れ
女性の活躍に向けた課題には、「女性の採用の少なさ」「第1子妊娠・出産前後の就業継続の困難さ」「男女を通じた長時間労働」「女性管理職の登用の困難さ」などがあります。
このような課題を解決するにあたり、女性活躍推進法に基づいて「一般事業主行動計画」(以下「行動計画」)を自社で策定しましょう。
引用:東京都産業労働局「令和元年度 雇用平等ガイドブック」
行動計画を策定したら、周知・公表・届出をおこなう必要があります。上記のように5つのステップに分けて、具体的な手順を見ていきましょう。
ステップ1.自社の状況把握と課題分析
「女性労働者がどのくらい活躍しているのか」といった自社の状況把握から始めましょう。
女性活躍推進法では、次の4つを「基礎項目(必ず把握すべき項目)」に定めています。
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参考:厚生労働省「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
1と2は、職種や雇用形態別に把握しましょう。
基礎項目の数値を算出したら、以下のように自社課題を書き出して分析します。
引用:千葉労働局「①行動計画らくらく策定シート」
基礎項目以外にも「選択項目(必要に応じて把握する項目)」が定められています。
把握したほうが効果的だと考えられる項目を選び、数値算出・課題分析をおこないましょう。
ステップ2.行動計画の策定
ステップ1の結果を踏まえ、自社の課題解決に向けた施策を「行動計画」として策定してください。
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行動計画はA4用紙1枚程度にまとめれば問題ありませんが、上記の項目を盛り込む必要があります。
詳しくは、厚生労働省の資料にて「行動計画の策定について」や「行動計画策定にあたっての留意点」をご一読ください。
女性活躍推進の行動計画例・参考サイトの紹介
引用:「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」
上記は見本の一つであり、次の参考サイトには「女性の離職率が高い会社向け」「製造業向け」といった複数のパターンで行動計画例が公開されています。
計画例を組み合わせて2つ以上の目標を設定することも可能ですので、いろいろと参考にしてみましょう。
ステップ3.行動計画の社内周知・外部公表
⾏動計画を策定・変更したら、非正社員を含めた全ての労働者に周知します。また、外部への公表も忘れずにおこないましょう。
<社内周知の方法>
<外部公表の方法>
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「女性の活躍推進企業データベース」には入力フォーマットが用意されているほか、更新時期お知らせメールなどの便利機能もあるため、ぜひ活用してみてください。
ステップ4.行動計画を策定した旨を届出
「行動計画を策定(または変更)しました」というお知らせを、管轄の都道府県労働局に届け出ましょう。
提出方法 |
郵送・労働局への持参・電子申請 |
届出様式名 |
様式第1号 一般事業主行動計画策定・変更届 ※記入例はこちら |
様式ダウンロード先 |
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省令第1条に定められた必要事項が記載されていれば、上記以外の様式で届出を提出しても有効となります。
ステップ5.行動計画の実施と効果測定(計画変更があれば届出を)
行動計画の策定と届出が済んだら、実際に取り組みをスタートさせます。
実施する際には、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のPDCAサイクルを確立させると効果的です。
行動計画の進捗を定期的に点検・評価しながら、その結果をその後の取り組みに反映させ、計画の変更(改定)をおこないます。
計画を変更する場合は「様式第1号 一般事業主行動計画策定・変更届」を労働局へ提出し、変更した旨を社内周知・外部公表しましょう。
女性活躍推進法の「女性の活躍に関する情報の公表」について
「女性の活躍に関する情報の公表」とは、女性の活躍に関する状況について求職者が簡単に閲覧できるようにするための取り組みです。
常時雇用する労働者数101⼈以上の事業主に対して公表が義務づけられていますが、行動計画の外部公表とは別物ですので注意してください。
公表項目の詳細や公表方法、更新頻度について解説します。
公表項目の詳細
参考:厚生労働省:女性の活躍に関する「情報公表」が変わります
2022年7月の法改正により、常時雇用する労働者数301人以上の事業主は「男女の賃金の差異」が情報公表の必須項目となりました。
上記の図表を見ながら、次のように公表項目を選択してください。
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また、公表義務のある項目のほかに、女性の活躍の一助となる社内制度を公表している企業もあります。
公表⽅法と更新頻度
「女性の活躍に関する情報の公表」はインターネット上(女性活躍推進企業データベースや自社HPなど)にておこない、年1回以上を目安に更新しましょう。
公表する際は以下の点に留意してください。
- いつの情報なのか分かるよう更新時点を明記する
- その時点に得られる最新の数値(特段の事情がない限り、古くとも公表時点の前々年度の数値)を公表する
公表内容によって、求職者は企業を比較検討する可能性があります。
より多くの情報を正確に公表することで、優秀な⼈材の確保や競争⼒の強化が期待できるでしょう。
女性活躍推進法の目指すところは?【成果・課題・目標】
2016年4月に女性活躍推進法が施行されてから、2023年で8年目を迎えます。
これまでの成果や課題、政府の方針、企業が目指せる認定制度についても確認しておきましょう。
2016年4月(施行後)~2021年までの成果
「男女共同参画白書 令和4年版」や「第16回(2021年)出生動向基本調査」によると、
- 女性の就業者数が、2015年から2021年までの6年間で238万人増加
- 2015〜19年に第1子が生まれた妻の就業継続者割合は53.8%で、2010〜14年の42.5%から約11ポイント上昇
といった結果が発表されており、女性活躍推進法の施行後、徐々に成果が出ているといえるでしょう。
採用や育成にコストを投じた女性労働者が継続就業できる職場環境にしていくことは、企業の成長にも繋がります。
一つひとつの企業が、引き続き取り組みを持続させていくことが大切です。
女性の活躍推進における現状の課題
成果が現れている一方、政府が2003年に掲げた「2020年までに指導的地位の女性割合を30%にする」という目標に対し、2021年は13.2%と目標を大きく下回っています。
引用:男女参画共同局「男女共同参画白書 令和4年版」
実際のところ、就業を希望しながら求職していない女性171万人のうち、その多くが非正規雇用を希望しているのが実情です(2021年)。
国際社会に目を向けると、日本の推進スピードは遅れていると言わざるを得ません。
グローバル化に対応するためにも、今後も女性の活躍推進が重要課題となるでしょう。
政府が掲げる今後の目標
政府は「2030年代には、指導的地位にある人々の性別に偏りがない社会を目指す」と発表しています。
2020年代は引き続き「指導的地位に占める女性の割合が30%程度」を目指して、取り組みを進めていく方針です。
企業は「えるぼし認定」の取得を目指してみよう
行動計画の策定・届出をおこなった企業のうち、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良などの一定の要件を満たすと、「えるぼし認定」を取得できます。
<認定取得のメリット>
- 企業イメージが向上する
- 優秀な人材の確保に繋がる
- 低利融資の優遇措置を受けられる
また、2020年6月には更なる上位認定制度として、「プラチナえるぼし認定」が施行されました。
認定の取得は企業成長の一助となりますので、ぜひ積極的に女性活躍推進に取り組んでみましょう。
認定制度の概要や要件など、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
女性活躍推進法は改正に注意しながら取り組もう!
女性活躍推進法は、女性が活躍しやすい職場環境をつくるための法律です。
法に基づき、常時101人以上の労働者を雇用する事業主に対して、行動計画の策定や情報公表などの取り組みが義務づけられています。
10年間の時限立法として2016年4月1日より全面施行され、2020年、2022年に法が改正されました。2025年度末(2026年3月31日)までの間、引き続き国を挙げて集中的かつ計画的に女性の職業生活における活躍を推進していきます。
人事労務担当者は、法改正に留意しながら自社の女性活躍推進に取り組んでいきましょう。
女性の働き方については以下のお役立ち資料でも詳しく解説しています。
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