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高齢者雇用で得られるメリットは?取り組める具体的内容についてもご紹介

少子高齢化の影響で労働人口の減少が見込まれる中、高齢社員の戦力化が重要となり大いに活躍できる職場づくりが必要です。

本記事では、企業が高齢者を雇用するにあたってのメリットや取り組める具体策、注意点をご紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.高齢者雇用を推進する理由
  2. 2.高年齢者雇用で企業が得られる5つのメリット
  3. 3.高齢者雇用において企業ができる必要な配慮とは
  4. 4.高齢者雇用の際に取り組める事柄
  5. 5.高齢者雇用において企業が利用できる国からの支援策
  6. 6.高齢者雇用のメリットを活かしてシニア世代が活躍し続けられる職場づくりを


高齢者雇用を推進する理由

高齢者の雇用を積極的におこなう背景として、以下が挙げられます。

  • 少子高齢化の急速な進展
  • 65歳を超えても働きたいと考える高齢者が多い


それぞれの理由を詳しくご紹介します。


理由1:少子高齢化の急速な進展のため

高齢者雇用の背景には、少子高齢化が進み労働力が減った点があげられます。

日本の総人口は近年減少傾向にありますが、高齢者の人口は2022年9月15日現在で3,627万人と過去最多で、総人口に占める割合は29.1%と過去最高となっています。

総人口が減少する中で65歳以上の増加により高齢化率は上昇を続け、2036年には33.3%となり3人に1人が高齢者になる見込みです。

急速に高齢化が進み、やがて「1人の若者が1人の高齢者を支える」という厳しい社会が訪れることまで予想されています。


また、厚生労働省の就業者シミュレーションによると、経済成長と労働参加が適切に進まない場合、2040年までに就業者数は1,285万人減少すると見込まれています(2017年比)。

人口減少や少子高齢化が急速に進展している現状を考えると、新卒者などの若年就業者の採用が難しくなり、若手の労働力だけに頼るのは厳しいと言わざるをえません。

労働力不足を補うためには、豊富な経験や知識を有する高齢者を積極的に雇用することが重要でしょう。


理由2:65歳を超えても働きたいと考える高齢者が多いため

高齢者雇用を推進する2つ目の理由は、65歳を超えても働きたいと希望する高齢者が多いことです。

2020年の高齢者の就業率は25.1%となり、9年連続で前年に比べ上昇しています。

高齢者雇用 メリット(1)

引用:「総務省統計局」


厚生労働省の調査で60歳以上の高齢者に、収入をともなう就業希望年齢として「いつまで働きたいか」という質問をしたところ、全体の約2割の高齢者が「働けるうちはいつまでも」と回答。

さらに、高齢者の約4割が65歳を超えても働くことを希望しています。


高齢者雇用 メリット(2)

引用:厚生労働省「シニア世代の仕事力を引き出す」


就業する理由として、以下が挙げられます。

  • 生活の糧を得るため
  • 健康を維持するため
  • 生活の質を高めるため
  • 働くことに生きがいを感じているため
  • 時間に余裕があるため


金銭面や健康面が理由となっているケースが多いですが、年齢が上がるほど「健康を維持するため」や「勤務先から継続して働くことを望まれている」などの理由が高い傾向にあります。


また、65歳〜79歳までの男女の身体機能が20年前よりも若返っていることも、就業意欲を持つ理由になっています。

このような背景から、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、企業が高年齢者の活躍の場を整備することが重要でしょう。


高年齢者雇用で企業が得られる5つのメリット

高齢者を雇用することで、企業には以下のメリットがあります。

  • 職場の活性化につながる
  • 豊かなノウハウ、技能・技術、人脈の即戦力になる
  • 働きやすい職場の実現につながる
  • 国からの支援が受けられる
  • 人手不足の解消につながる


それぞれのメリットを詳しくご紹介します。


メリット1:職場の活性化につながる

意欲的に働く高齢者が周りにいると、若手社員も長く働き続けられるという将来像が描けるでしょう。

また、従業員の職場定着や高齢者が働く姿を見ている他の従業員のモチベーションも向上し、職場の活性化につながります。

さらに仕事をするにあたって、同じ世代の人たちにはない高齢者ならではの視点や考え方を取り入れることで、企業の力を高められるでしょう。

またさまざまな年代の人の雇用によって新しい価値観を生み出すことができ、企業としての見方も広げられます。


メリット2:豊かなノウハウ、技能・技術、人脈の即戦力になる

高齢者は経験豊富な「人材の宝庫」。これまで培ってきたノウハウや技能・技術、人脈を活かして企業の競争力アップが期待できます。

また高齢者が講師となって社内研修を実施し、実務に沿ったノウハウや技術を若い世代に伝承することで、従業員のスキル向上や人材育成につながるでしょう。


メリット3:働きやすい職場の実現につながる

短時間勤務等の導入や作業環境の整備など高齢者の健康と安全に配慮した職場づくりは、高齢者以外のあらゆる世代の従業員にとっても働きやすさにつながります。

柔軟な対応ができる職場であれば、子育てや介護の両立、傷病中ならば治療と仕事の両立がしやすくなり、従業員の定着が期待できるでしょう。


メリット4:国からの支援を受けられる

企業において高齢者雇用を進めるための環境を整備したり、積極的に新たな高齢者を雇用したりする場合、助成制度や税制上の優遇措置の対象になります。

詳しい内容は下記で説明しますが、高齢者雇用で企業が受けられる助成金には次のようなものがあります。

  • 65歳超雇用推進助成金
  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  • 高年齢労働者処遇改善促進助成金


また税制上の優遇措置としては、地域により社員以外の65歳以上の従業員の給与合計額は、事業所税の課税標準となる従業者給与総額の算定から除外されることも。

また、従業員数の合計から65歳以上の従業員を除くと100人以下になる場合は、事業所税を免除されるという措置があります。


メリット5:人手不足の解消につながる

近年、少子高齢化の進展により人手不足が問題視されています。特に中小企業では新たな人材確保が難しい状況です。

そんな中、新入社員など若手社員を一から育てるのも人手不足の企業には難しい場合も。

しかし、スキルや経験がある高齢者がいれば即戦力として働いてもらう、人材育成をしてもらうことが可能です。

高齢者雇用をおこなうなら、人手や労働力が不足する状況を避けられるでしょう。


高齢者雇用において企業ができる必要な配慮とは

高齢者を雇用する際に起こりうる問題に対して企業はどのような配慮ができるのか、必要な対策についてご紹介します。


①健康管理対策に力を入れる

健康であることは、高齢社員が能力を十分に発揮する前提条件です。しかし、年齢を重ねると若手社員に比べて健康上の問題が生じやすくなります。

そのため、企業として健康管理面の支援に一層力を入れることが大切です。

社員の意識を高めるために、健康状態を定期的に報告してもらったり健康確保に役立つ情報を提供したりして、健康管理に対する理解を促進するように努めましょう。


②体力面での負荷を軽減する

加齢による筋力の低下は30代後半から始まるといわれています。また、平衡感覚や股関節機能の低下により、転落や墜落が起きやすくなることも。

そのような事故やけがを防ぐためには、まず高齢社員本人に心身の機能の低下を自覚してもらうと良いでしょう。

その上で、企業としては以下のような配慮ができます。

  • 腰痛防止のための作業方法を指導する
  • 作業内容や作業量を事前に確認し、無理をさせないようにする
  • 長時間運転や作業をしたあとには、
     運転席から慎重に降りるよう注意を促す
     縮まった体を伸ばすような体操をおこなうよう指導する
     すぐに負担の大きな作業をおこなわせないようにする
  • 無理なく続けられる運動をおこなうよう促す
     筋肉を柔軟にするためのストレッチ体操
     日ごろから筋力を鍛えるためのウォーキングなど


上記のような配慮を示せば、高齢社員の体力面での負荷を軽減する助けになるでしょう。


③判断力・注意力低下を補う

一般的に30代ごろから脳は萎縮をし始め、60歳を過ぎるころからは認知機能が徐々に低下していくといわれています。

加齢による衰えから判断力や注意力が低下しパソコンが苦手と感じている高齢社員であれば、簡単に操作ができるシステムに改修するなどの工夫をすることでフォローできるでしょう。


またシステムで検知した危険事例を社内に周知し、従業員の意見を参考に設備の改善をおこなうことで高齢社員の判断力や注意力低下を補えます。

1件の大きな事故や災害の裏には、29件の軽微な事故・災害そして300件の「ヒヤリ・ハット」(事故には至らなかったもののヒヤリとした、ハッとした事例)があるとされています。

重大災害防止のためには高齢社員の判断力や注意力低下を補うとともに、「ヒヤリ・ハット」の段階で対処することも重要です。


高齢者雇用における配慮の注意点

ただし、高齢社員を特別視し「高齢者のためにおこなう」と前面に訴えないように気をつけましょう。

前面に出しすぎてしまうとかえって高齢社員自身が嫌がったり、若手社員が「なぜ高齢社員だけ優遇されるのか」と感じたりして逆効果になってしまう可能性も。

高齢社員にとって働きやすい職場は、全社員にとって働きやすい職場であるという発想で職場環境の改善を心がけましょう。



高齢者を雇う際には、労働災害にも気をつけると良いでしょう。以下のお役立ち資料では、高齢者の労働災害をふせぐためにできることについて、詳しくご紹介しています。

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高齢者雇用の際に取り組める事柄

高齢者を雇用する際に、企業が取り組める事柄についてご紹介します。


定年年齢や継続雇用上限年齢を延ばす

企業内の仕組みなどを熟知した高齢社員を引き続き雇用すると、優秀で安定した労働力を確保できるでしょう。

定年年齢の引き上げにより対象者は会社から期待されていると感じ、仕事に対して以前よりも前向きになりモチベーションの向上に期待できます。

また65歳以上でも働き続けられるようにするなら、高齢社員だけでなく他の社員にも雇用に対して安心してもらえるでしょう。


役割や能力に見合った賃金設定をおこなう

能力や実績に応じた賃金設定をし、グレード分けして報酬を支払えるでしょう。たとえば以下のように設定できます。

  • グレード1・2:専門性やスキル・ノウハウが高度な業務
  • グレード3:定年前と同じ一般通常業務
  • グレード4:未経験も含めた補佐的な業務
  • グレード5:短時間のパート


役割や仕事内容により継続雇用の高齢社員をグレードに分けて、それぞれに応じた報酬を支給します。

また、設定の背景や根拠も明らかにすると高齢社員の納得度も高まり、モチベーションを高く持ってもらえるでしょう。


多様な働き方を提供する

高齢期における就業希望の多様化や体力の個人差に対応するため、短時間勤務や隔日勤務、フレックスタイム制の活用により、勤務形態の柔軟化を図れます。

また在宅勤務や隔日勤務の導入で、優秀な人材をつなぎ止めたり、仕事と育児や介護などの両立がしやすくなったりします。

高齢社員の勤務形態の柔軟さや働き方の工夫は、全社員にとって働きやすい環境となり、若者や女性の人材確保にも大いに役立つでしょう。


作業設備の改善をおこなう

経験豊かな高齢者は企業にとって貴重な存在ですが、体力や身体機能の低下は避けては通れません。

身体機能の低下を補いながら今までと変わらぬ成果を出してもらうためには、設備改善等の取り組みが必要です。

たとえば以下のように改善できるでしょう。

  • 作業補助具の導入を含めた機械設備の改善
  • 作業方法の平易化
  • 照明、そのほかの作業環境の改善


また、福利厚生施設の導入・改善を通じ、体力や身体的機能の低下した高齢社員の職場からの排除を防ぎ、職業能力を十分に発揮できるように努めます。

その際には、「独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構」が有する高年齢者のための作業施設の改善に関する情報を、積極的に活用できるでしょう。


高年齢者の職域の拡大

「職域の拡大」とは、職業や職務の範囲、また受け持つ仕事の領域を広げることを意味しています。

高年齢者の職域の拡大を図る際は高齢化に対応した職務の再設計をおこない、高齢社員の能力や知識、経験等が十分に活用できるように努めましょう。

経験や強みを活かせるなら、仕事に対してのモチベーション向上につながり、いきいきと活躍してもらえるでしょう。


高齢者雇用において企業が利用できる国からの支援策

高齢者を雇用するなら国から以下のような助成金の支援が受けられます。

  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  • 65歳超雇用推進助成金
  • 高年齢労働者処遇改善促進助成金


それぞれの助成金についてご紹介します。


特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

60歳以上65歳未満の高年齢者や障害者等の就職困難者を、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に対して、賃金の一部に相当する額を支給してくれる制度です。

ただし令和5年度より見直され、65歳以上の高齢者も対象になりました。


また65歳以上の離職者をハローワーク等の紹介により、1年以上の継続雇用が確実な労働者として雇い入れる事業主に対して助成される「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」がありますが、こちらも令和5年度より見直され廃止されました。


参考:令和5年度から「特定求職者雇用開発助成金」の見直しを行います

65歳超雇用推進助成金

高年齢者が意欲と能力のある限り、年齢に関わりなく働ける生涯現役社会を実現するため、下記の内容をおこなう事業主に対して助成されます。

  • 65歳以上への定年の引き上げ
  • 高年齢者の雇用管理の整備
  • 高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換


助成金は次の3つのコースで構成されています。

  1. 65歳超継続雇用促進コース:65歳以上への定年の引き上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主に対して助成するコース
  2. 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース:高年齢者向けの雇用管理制度の整備等にかかる措置を実施した事業主に対して助成するコース
  3. 高年齢者無期雇用転換コース:50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対して助成するコース


高年齢労働者処遇改善促進助成金

高年齢労働者処遇改善促進助成金は、令和3年4月より新設された制度です。

60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇の改善に向けて、就業規則等の定めるところにより高年齢労働者に適用される賃金規定等の増額改定に取り組む事業主に対して助成されます。

ご紹介した助成金を支給してもらうためには、それぞれの要件が設けられています。

  高齢者雇用において支給される助成金とは?種類や対象要件などを含めて解説 | mediment(メディメント) 高齢化社会に伴い、2021年4月から、高年齢者雇用安定法が改正され施行されました。中には経験ある高齢者に活躍してもらうため、高齢者の採用を積極的におこなっている企業もあります。 本記事では、高齢者を雇用する場合に企業が活用できる助成金について解説します。 mediment(メディメント)


高齢者雇用のメリットを活かしてシニア世代が活躍し続けられる職場づくりを

現在、少子高齢化の進展により生産年齢人口は減少しています。一方で、健康寿命の延伸で元気な高齢者が増え、「働きたい」と意欲を持っている人も多い状況です。

高齢者が働ける環境を整えると、職場の活性化になったりスキルがある経験豊富な働き手の確保につながったりするため、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。

高齢者の働きたいという思いを叶えるため、適材適所を心掛けながら制度などを上手に活用し、高齢者雇用に積極的に取り組んでいきましょう。




高齢者を雇う際には、労働災害にも気をつけると良いでしょう。以下のお役立ち資料では、高齢者の労働災害をふせぐためにできることについて、詳しくご紹介しています。

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mediment(メディメント)は、従業員のあらゆる健康データを一元管理し、産業保健業務の効率化を支援するクラウドシステムです。 クラウドシステムならではの多彩な機能で、あらゆる業務のペーパーレス化を実現し、従業員のパフォーマンス向上に貢献します。

監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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