男女雇用機会均等法を簡単解説!ハラスメント防止対策も重要
1986年より、雇用において性別を理由とした差別を禁止し、男女の均等な雇用機会や待遇確保を目的として施行された「男女雇用機会均等法」。
この記事では、男女雇用機会均等法の内容や注意すべき項目のほか、人材募集や採用、配置変更の際に企業が対応すべきハラスメント対策を解説します。
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男女雇用機会均等法とは?
男女雇用機会均等法とは、1986年に企業に雇用された従業員が性別を理由にして差別を受けることがないように定められ、施行された法律です。
女性労働者の就業が増えて社会進出・活躍が広がる中、妊娠中および出産後の健康の確保を推進することを目的としていますが、男女双方の保護を対象としています。
男女雇用機会均等法により呼称が変更されたものの具体例として挙げられるのは、「スチュワーデス」を「客室乗務員」に、「看護婦」を「看護師」に変更した事例などです。
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男女雇用機会均等法の背景や改正の歴史
そもそも男女雇用機会均等法は、1972年に施行された「勤労婦人福祉法」が前身となり1985年に制定、1986年に施行されました。
背景には、高度経済成長期に社会進出が増えた女性が各所で受けた差別的な扱いが問題視されたことにあります。
具体的には、営業部の外勤は基本的に男性社員、既婚または子持ち女性社員は上司の推薦なしに研修やプロジェクトへの参加不可などです。
1997年の改正では採用から退職まで、事業主の女性に対しての差別を禁止、2006年には男女ともに性別を理由とした差別の禁止、間接差別の禁止が新設されました。
2016年はマタニティハラスメント防止措置が義務付けられ、2020年にはパワハラ防止法とセクシュアルハラスメント防止の強化についても改正されました。
性別関係なく、男女が平等かつ十分にそれぞれの能力を発揮できるような雇用環境を提供できるよう、時代に対応しながら変遷しています。
男女雇用機会均等法で雇用に関する注意すべき項目7つ
男女雇用機会均等法で雇用に関して注意すべき項目は7つあります。禁止されている項目も含め、正しく理解しておきましょう。
1.人材募集・面接・採用における差別
求人募集をする際の男女差別や、面接や採用において男女で不当な扱いをおこなうことは禁止とされています。
例えば、人材募集時に「男女採用する」としておきながら、性別による採用人数の設定や応募条件に性別で差を付けるのは不当です。また、「男性歓迎」や「女性向け」といった表記方法も男女差別を示唆するため、禁止となっています。
さらに、求人情報提供に関して、男女で異なる情報を提供する行為も同様です。
2.人員配置に関する差別
人員配置は労働条件の中でも重要です。性別などを理由にした不当な人員配置はNGとされています。
具体的には、「男性は営業職」「女性は事務職」「一定年齢以上の女性のみを出向」「女性労働者のみ他部門へ配置転換しない」などです。
男女のいずれかを排除または優先したり、配置条件を男女で異なるものにしたりすることも禁止されています。
3.教育・訓練における差別
教育・訓練の現場において男女間の差別は禁じられています。教育や訓練を実施する場合、勤続年数や出勤率を条件としているにも関わらず、男女間で異なる条件を提示することは不当です。
男女どちらかを教育・訓練の対象外にしたり、研修内容や機関を男女で異なるものにしたりするなどです。教育・訓練において男女間で異なる条件を提示することも差別に当たります。
4.昇進・降格に関する差別
性別で昇進・降格を決めることや、役職への昇進条件を男女で変えて不当な扱いをすることは禁止です。よくある具体例は以下の通りです。
- 男性と女性で昇進条件が異なる
- 女性には一定の昇進制限がある
- 女性のみ特定の降格条件がある
日本は他国に比べ、女性の管理職の割合が低い現状にあります。男女どちらもそれぞれの能力に応じて役割を与えて能力を生かせるよう、また女性活躍の機会促進をできるよう、企業側には努力と対応が求められるでしょう。
5.福利厚生の差別
性別によって福利厚生を差別することは禁止とされています。
- 女性労働者にのみ、婚姻を理由に社宅の貸与の対象から外す
- 男性労働者にのみ、社宅を貸与する
上記のように、生活資金や教育資金の貸付、住宅の貸付などに男女間で差があるのも違法です。
6.定年・解雇・労働契約更新における差別
男女間で定年や解雇の年数が違う、または労働契約の変更は禁止です。
- 男性と女性で定年の年齢が異なる
- 女性だけ解雇
- 男性の一般職への変更を認めない
上記のように、男女どちらかを優先する解雇はもちろん、男女で異なる労働契約条件をつけ、労働契約更新は男性のみ・女性は更新不可といった対応も不当です。
7.職種や雇用形態の変更時の差別
総合職から一般職への変更、一定年齢に達した場合専門職から事務職へ変更するなど、職種や雇用形態の変更においても、性別での不当な扱いは禁止とされています。
男女それぞれ、平等に雇用の機会を付与できるよう、また働きやすい環境提供ができるよう、再度、自社の就業・労働条件や教育・訓練、福利厚生面、雇用における昇進・契約更新方法の見直しをおこなうと良いでしょう。
男女雇用機会均等法では間接差別も禁止
上の見出しで解説した直接差別はもちろんのこと、「間接差別」も禁止とされています。
間接差別とは、厚生労働省令において「性別以外の事由を要件とする措置であり、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを合理的な理由がないとき時に講ずること」と示されています。
つまり間接差別とは、一見すると性別以外の理由であるかのように見えて、実際には性別を理由としている差別を指します。
- 募集や採用時に身長や体重、体力を要件に記すこと
- 募集や採用、昇進、職種変更に際し、転勤可否を要件にすること
- 昇進の要件に、転勤経験を含めること
上記のような対応は間接差別に該当し、違法と判断される可能性があるため、雇用管理には注意が必要です。
男女雇用機会均等法において女性労働者への不利益な取り扱いもNG
男女雇用機会均等法では、婚姻・妊娠・出産を理由に女性労働者が不当に扱われることを禁止しています。具体的には、下記の通りです。
- 婚姻・妊娠・出産を機に退職や解雇させる
- 減給や賞与での不利益な算定など
他にも、妊娠・出産等を理由に就業環境を害する、降格させる、不利益な配置変更をする、不利益な自宅待機を命ずる、労働契約内容の変更を強要するなども不利益な取り扱いに当たります。
補足:妊娠中や出産後の健康管理を義務化
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の第12条に提示されているように、妊娠中や出産後1年以内の女性には、定期的に健康診査などが必要です。
また、妊娠中や出産後の女性の健康を守れるよう、勤務時間の変更や勤務軽減の措置をする等、企業側の対処が求められるでしょう。
代表的な職場でのハラスメント5つ
近年ではさまざまなハラスメント問題が生じています。ここでは職場で発生しやすい、主なハラスメントを5つご紹介します。
- パワーハラスメント
- セクシュアルハラスメント
- マタニティハラスメント
- モラルハラスメント
- ジェンダーハラスメント
1.パワーハラスメント
パワーハラスメントとは、上下関係を利用して嫌がらせをおこなうことです。以下の3つの要素全てを満たす行為がパワハラに当たると法律上明確化されています。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
- 労働者の就業環境が害されるもの
精神的・身体的な攻撃、過大な要求、人間関係からの切り離しなどが挙げられます。
以下の記事ではパワハラ防止法について解説していますので、ぜひご覧ください。
2.セクシュアルハラスメント
セクシュアル ハラスメントとは、性的な嫌がらせのことをいいます。男女問わずおこなわれるもののことを指しますが、多くが男性から女性に対しておこなわれている現状があります。
具体的には、以下の通りです。
- 職場における上司・部下といった関係性などを理由に、性的な行為を強要する
- 過度な身体的接触をする
- 容姿に対して相手が不快になる発言をする
ある行為がセクシュアルハラスメントに該当するかどうかは、個人の感覚により異なりますが、セクシュアルハラスメントを受けた側が不快と感じた時点で、その行為はセクシュアルハラスメントに該当します。
セクシュアルハラスメントに対する防止対策としては、まず企業におけるセクシュアルハラスメントにおける規定法の周知が必要です。
そして、セクシュアルハラスメントがおこなわれた場合、相談窓口で被害を受けた労働者の声に耳を傾けて支援できるよう、早期の対応が重要です。
労働者が生き生きと働けるよう、企業はセクシュアルハラスメント防止対策を強化していく必要があるでしょう。
3.マタニティハラスメント
マタニティハラスメントとは、妊娠や出産した女性に対しておこなわれる嫌がらせです。具体例は以下の通りです。
- 産休や育休を取得させない
- 産休や育休を取りたいと申し出た場合、退職を促される
- 産休・育休を取ったため、業務量が増やされた・負担が増えた
実際に、育休明けの解雇が無効と判断された事例や、妊娠中の配置転換から復職後も配置が変わらず、損害賠償を請求した事例もあります。
4.モラルハラスメント
モラルハラスメントとは、精神的な苦痛を与えることです。身体的な攻撃はないものの、相手の意見や人格そのものを否定したり、無視したりします。
加害者に自覚がなく、「間違ったことはしていない」と思い込んでいる場合が多いです。そのため、見た目ではわかりづらい分、周りの人が気付きづらい特徴があります。
5.ジェンダーハラスメント
ジェンダーハラスメントとは、男性らしさや女性らしさの固定概念を強要するハラスメントです。
「ジェンダー」とは、社会的・文化的に作り上げられた性的役割分担を指します。
「男性なんだから家庭のことは妻に任せて残業をしろ」「お茶くみは女性の仕事だから」といった性別への偏見による発言は、ジェンダーハラスメントに当たります。
性別を理由とした採用や昇進機会の損失、人員配置での男女の偏りもジェンダーハラスメントのひとつです。
全ての働きたい女性が十分な能力を発揮できる社会を目指すための女性活躍推進法については、以下の記事で詳しく解説しています。
女性の活躍推進のために企業ができる取り組みについては、以下の資料で分かりやすく解説しています。
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ハラスメントの防止対策は、まず企業側がさまざまなハラスメントにおける防止規定を確認、見直すことが大切です。
そして、企業におけるハラスメントに関する防止規定法の方針や対処法の周知・啓発をおこないましょう。
もしハラスメントが起きた場合は、相談窓口の設置や相談担当者が適切に対処できるよう研修の実施、再発防止体制の整備など、適切かつ早めの対処が重要です。
男女雇用機会均等法に違反すれば罰則も!
男女雇用機会均等法において、法施行のために必要がある場合の指導等も挙げられています。具体的には以下の通りです。
- 報告の徴収と助言、指導、勧告
- 実効性の確保
男女雇用機会均等法において、法違反があると見なされた場合、厚生労働大臣より企業側に対して報告を求められ、指導や勧告などがおこなわれます。
万が一、厚生労働大臣からの報告の求めに応じない場合、最大20万円の罰金を課せられる場合もあるため注意が必要です。
さらに勧告に従わなかった場合は、企業名が公表されるため、指摘事項は必ず是正しましょう。
セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントは、民事責任に問われる可能性もあります。
企業は男女雇用機会均等法の内容や知識を正しく理解し、労働者へ正しい情報の周知・啓発に努めましょう。
企業として取り組める対策を、できることからはじめてみてください。
男女雇用機会均等法を理解して健全な職場づくりを!
男女雇用機会均等法は、性別を理由に差別されることなく働けることを目的に施行され、何度も改定がおこなわれています。
人材配置や教育、昇格・降格、福利厚生、定年・解雇などさまざまな項目における規定があり、女性に対するハラスメントも多く見受けられます。
ハラスメントは労働者のパフォーマンスを下げるほか、離職率を高める、企業イメージを低下させるなど、企業においてデメリットが多くあります。
企業側は男女雇用機会均等法を理解し、性別関係なく労働者が生き生きと安心して働けるようにしましょう。
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