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女性の健康支援のための「婦人科検診」とは?取り組んでいる会社の事例も解説

社会環境が大きく変化している中で女性が健康に働くには、企業における健康支援が重要なカギとなります。
中でも、婦人科検診の実施は重要です。本記事では、女性を支援するために企業ができる婦人科検診の支援についてご紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.婦人科検診の種類
  2. 2.企業での婦人科検診実施の状況
  3. 3.企業での婦人科検診の必要性
  4. 4.企業が婦人科検診を取り入れる際に取り組めるポイント4つ
  5. 5.婦人科検診受診を健康経営に取り入れている企業の取り組み事例5つ
  6. 6.女性が健康で働き続けるための企業戦略として婦人科検診を積極的におこないましょう!



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婦人科検診の種類

婦人科検診とは、女性特有の病気の早期発見を目的とする検査のことです。

子宮がんや卵巣がんを始め、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科領域の病気を発見するために実施されます。近年では乳がんなどが増えているため、乳がん検査も婦人科検診に含まれるケースが多いです。

国が勧めている代表的な婦人科検診は以下の通りです。


	婦人科検診 画像1
引用元:厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」


乳がん検診では、次の検査をおこないます。

  • 視診・触診:乳房やわきの下を見て、あるいは触ってしこりや皮膚のつっぱりの有無を診断する方法
  • マンモグラフィ(乳房のX線写真):乳房をプラスチック板ではさみ、専用の撮影装置を使って斜め方向と上下方向を撮影。撮影が終わるまで痛みを感じることが多い
  • 超音波検査:乳房に超音波をあてて内部からエコーを画像にし、異常の有無を検査


マンモグラフィでは、乳がんなどの乳房の病気は白く写ることが多く、高濃度乳房(乳腺の密度が高く、マンモグラフィで白く見える部分が多い状態)の場合は、白い乳腺の陰に病気が隠れていることがあるため、ガンがみつかりにくいとされています。費用は5,000円程度です。

​​​​​​​高濃度乳房の割合は年齢によって変化はあるものの、日本人の場合40歳以上の約4割とされているため、 検診では超音波検査とマンモグラフィの両方を受けるのが望ましいです。

超音波検査は妊娠中や妊娠の可能性がある人も検査ができ、しこりを見つけるのに優れています。費用は4,000円程度です。


子宮頸がん検診では、以下の検査をおこないま す。

  • 細胞診:子宮の入り口を専用の器具で擦って細胞を採り、異常な細胞がないかどうかを顕微鏡で調べる検査
  • HPV(ヒトパピローマウイルス)検査:子宮頸部の細胞がウイルスに感染しているかを調べる検査


細胞診は、がん細胞だけでなく、がんに進行する可能性のある「異形成」と呼ばれる細胞を発見できます。検査で異常があったとしても、がんになる前の状態であることがほとんどです。異常がある場合は速やかに医療機関で精密検査を受診しましょう。
HPV検査は、子宮頸がんの原因がHPVによる感染があることがわかり、開発されました。HPV検査と細胞診を合わせておこなうことで、検査の制度はさらに高まると言われています。費用は3,000~5,000円程度です。


企業での婦人科検診実施の状況

2020年度、厚生労働省がおこなった「職域におけるがん検診の実態調査報告」によると、事業主のがん検診の実施率は子宮頸がん検診が1番高く72.8%でした。

また、乳がん検診は68.4%となっており胃がん検診に次いで高い割合となっています。


	【リライト】婦人科検診画像2

引用:厚生労働省「2020年度職域におけるがん検診の実態調査報告」


検診の費用としては、事業主が「がん検診の費用を負担している」が49.7%、保険者が80.6%となっており、費用面ではまだ保険者の負担が大きい傾向にあります。

法定項目の中に婦人科系がん検診の項目は入っていないため、法令では企業がおこなう義務はありません。
しかし、健康保険組合が婦人科系のがん検診費用を補助している例もあります。


企業での婦人科検診の必要性

婦人科検診を含む女性への健康支援が必要な理由として、次の3つが挙げられます。

  1. 働く女性の増加
  2. 女性特有の健康問題
  3. 女性特有の健康課題による職場への影響

それぞれを詳しく解説します。


①働く女性の増加

近年、女性の社会進出が進んだ影響で、社会での活躍の仕方が大きく変わりました。総務省の「労働力調査」によると、労働力人口に占める女性の割合は4割を超えているという結果が出ています。

	婦人科検診 画像3

引用元:厚生労働省「令和3年の働く女性の状況」


最近では、女性の働き方が多様化し、就業期間が延びたり、初婚や初産の年齢が上がったり、生涯に産む子どもの数が減少したりするなど、女性を取り巻く環境が大きく変化しています。

女性の働き方が変化しているにもかかわらず、今まで企業の健康支援は、おもに男性を対象にしたメタボリックシンドロームなどの生活習慣病に重点が置かれてきました。
しかし女性の場合、これらの病気にかかる年代は男性よりも10〜15年後ろにずれることが知られています。


②女性特有の健康課題

男性と女性ではかかりやすい病気が違い、病気になる年代や病状が異なる場合もあります。男女で異なる健康課題を持っていて、働く女性の活躍が一層期待される今、職場において男性だけでなく女性従業員の健康支援が重要な健康課題となっています。

女性は思春期、性成熟期、更年期、老年期など生涯を通じて女性ホルモンの変動による影響を受けやすいです。

さらに、月経や妊娠・出産、比較的若い世代から発病する可能性の高い婦人科系がんなど、女性特有の健康課題はさまざまです。


③女性特有の健康課題による職場への影響


経済産業省における健康経営優良法人の認定制度でも、妊娠中の従業員に対する業務上の配慮、更年期障害への対応、婦人科検診への補助等を含む「女性の健康保持・増進に特化した取り組み」が認定項目のひとつに挙げられています。
このような背景から、女性に対しての健康支援の必要性が伺えるでしょう。

経済産業省の調査によると、女性従業員の約5割が女性特有の健康課題により「勤務先で困ったことがある」と回答しています。

	婦人科検診 画像4
引用:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」


また、約4割が女性特有の健康課題などが原因で、職場での女性特有の健康課題や症状、妊娠・出産・妊活等におけるサポートを諦めなくてはならないと感じた経験あると結果も出ています

	婦人科検診 画像5
引用:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」


さらに、月経に伴う症状による社会経済的負担は年間6,828億円に上っており、そのうち会社を休んだり、労働量や質が低下したりするなどの労働損失が72%を占めています。

女性特有の健康課題による仕事の生産性低下や、自分の望むキャリアを諦めなければいけないこと、責任の重い仕事から外れざるを得ないことは、女性従業員だけでなく企業にとっても大きな損失といえるでしょう。


一方で、健康に関する適切な情報を入手し、行動につなげるヘルスリテラシーが高い女性のほうが、月経や更年期など不調の際でも仕事のパフォーマンスが高いようです。女性の健康に関しての正しい理解は、企業の生産性において非常に重要であることがわかるでしょう。


企業が婦人科検診を取り入れる際に取り組めるポイント4つ

企業が婦人科検診を取り入れる際に取り組めるポイントは以下の4つです。

  1. 婦人科検診率向上のための取り組み
  2. 女性の健康課題を相談しやすい体制づくり
  3. ヘルスリテラシー向上の取り組み
  4. 働きやすい環境の設置

それぞれのポイントについて詳しく解説します。


ポイント①婦人科検診率向上のための取り組み

乳がんは女性の部位別で最も多く、子宮頸がんは若くてもかかりやすいがんとされています。そのため早期発見がなにより大切で、女性従業員一人ひとりに婦人科検診を受けてもらわなければいけません。検診率を向上させるために、企業として以下のような対策ができるでしょう。

  • 乳がん検診、子宮頸がん検診受診料の補助
  • 勤務時間内に検診ができる仕組みをつくる
  • 検診受診の重要性(早期発見・早期治療の重要性)に関する啓発


中には、勤務形態、場所を問わず「乳がんバス検診車」で就業時間中に受診できるようにしたり、定期健康診断時に受けたりできるように工夫している企業もあります。


ポイント②女性の健康課題を相談しやすい環境づくり

経済産業省がおこなった調査で、「管理職が女性特有の健康課題などの事情を持つ女性部下への対応が必要となった際に、職場で必要と感じたもの、あれば助かったと感じたものはあるか」と質問したところ、産業医や婦人科医、カウンセラー、アドバイザーなど専門家への相談窓口の設置が1番多い回答でした。

	婦人科検診 画像6.


引用:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」


管理職からは、男性にはわからない女性特有の症状に的確にアドバイスできないという声もありました。

女性の健康を支援するためには、女性の健康課題を相談しやすい体制づくりは大切です。具体的におこなえる支援は以下の通りです。

  • 女性特有の不調について相談できる女性の産業医、カウンセラーの設置
  • 対応可能な体制構築(産業医や婦人科医の配置、外部の医師の紹介)
  • 社内プロジェクトメンバーによる女性相談員の育成
  • 女性限定のチャットルーム等の設置、気軽に相談できる場の提供

上記のような環境を整えることで、女性従業員がちょっとした不調を相談したり、管理職が部下の健康状態を見ながら対処方法を相談したりでき、健康支援を適切におこなえるでしょう。


ポイント③ヘルスリテラシー向上の取り組み

「ヘルスリテラシー」とは、健康や医療に関する正確な情報を入手し、理解して活用する能力を指します。
ヘルスリテラシーを高めることにより、自分自身の健康状態や医療に関する意思決定を適切におこなえます。
ヘルスリテラシーを向上させるためにどのようなことができるのか、具体策をご紹介します。

  • 女性特有の健康課題や女性に多い症状に関する研修会の開催
  • 健康課題に関する啓発冊子の配布
  • 社内ポータルサイト等での健康情報掲載
  • オンラインを利用したワークショップ、動画の配信など


女性の健康課題に関する研修をおこなう際は、厚生労働省の資料を参考にしてみてください。

研修の中で女性の健康について取り上げることで、女性従業員も自分たちの健康に対する対処方法を知り、男性従業員や管理職も同僚や部下への接し方を知る機会になります。


ポイント④働きやすい環境の整備

女性特有の不調については、職場で言い出しにくく、仕方のないことだと我慢してしまう場合もあるでしょう。
女性が不調を訴えにくい状況を避けるためには、働きやすい環境の整備が大切です。たとえばテレワークや休暇の整備、シフト改善等をおこない、管理職や男性従業員も含めて実践すると、女性従業員がそれぞれの健康状態に合わせた柔軟な働き方ができ不調の際にも休みやすくなります。

また、生理休暇を取得しやすい環境づくりをはじめ、不調時の休養や治療と仕事を両立するための休暇制度の整備をおこなったり、フレックスタイム制や時差出勤、テレワークなどの制度を導入したりして、柔軟な働き方ができるように整えることも可能です。


婦人科検診受診を健康経営に取り入れている企業の取り組み事例5つ

実際に婦人科検診を取り入れている企業の事例を5つご紹介します。

  1. 河村電器産業株式会社
  2. 社会福祉法人 聖隷福祉事業団
  3. イー・バレイ株式会社
  4. 花王株式会社
  5. 株式会社浅野製版所


1.トップからの強いメッセージ発信により制度が浸透【河村電器産業株式会社】

河村電器産業株式会社では、男性が多い電気・建設業界であるにも関わらず、女性が働きやすくなるような「健康休暇」をはじめとする様々な制度を確率・定着させています。


【女性の健康支援への取り組み】

  1. 生活習慣病予防検診、乳がん・子宮がん検診の補助
  2. 従業員一人あたり年間5万円を付与し、健康診断の二次検査等に使えるように
  3. 生理休暇→健康休暇に名称を変更。女性には有給と別に年間12日に休暇を付与。労働安全衛生法で定める健康診断以外の検診、予防接種、二次検診等、健康増進に係る使途で利用が可能


女性特有の制度については男性社員からの理解や制度の周知と定着が必要不可欠であるとし、企業のトップから強いメッセージを発信、全ての従業員へ新制度について説明をおこない、制度の運用を成功させています。


2.定期健康診断の代用として人間ドックを受けられる【社会福祉法人 聖隷福祉事業団】

聖隷福祉事業団の女性職員比率は約7割で、女性の管理者、経営者の育成や、育児休業・介護休業を取っても安心して職場復帰できるよう、キャリア支援の充実を図っています。


【女性の健康支援への取り組み】

  1. 婦人科検診項目の充実
  2. 定期健康診断の代用として人間ドックを受けられる
  3. 35歳以上の従業員は婦人科や胃カメラのオプションを含め全額補助(35歳未満は自己負担3,000円)
  4. メンタルヘルス・婦人科疾患の相談を外部委託、従業員のプライバシーを保護している


以下は、女性の健康に関わる検診の実施状況です。

聖隷福祉事業団 婦人科検診負担

引用:職場における女性の健康支援の事例集


聖隷福祉事業団に就職を決めた理由として「健康経営に取り組み福利厚生が充実していること」を挙げる従業員が20%いるなど、取り組みの成果が出ていることがわかります。


3.婦人科検診を会社の健康診断に組み込んでいる【イー・バレイ株式会社】

イー・バレイ株式会社では女性従業員の増加にともない、女性に長く働き続けてもらう体制を整えるため平成28年2月頃から、女性活躍推進に取り組んでいます。

さらに女性の健康支援として、以下のような取り組みをおこなっています。


【女性の健康支援への取り組み】

  1. 子宮頸部細胞診、マンモグラフィーなどを受けやすくする仕組み
  2. 女性の健康相談についての窓口設置
  3. 病気の治療を受けながら安心して働き続けることができる支援
  4. 出産・育児との両立


子宮頸がん検診は20歳以上の偶数歳の年に、乳がんマンモグラフィーは40歳以上の偶数歳の年に受診できる仕組みを設けています。婦人科検診が会社の健康診断に組み込まれているため、女性従業員全員が受診できるようにし、検診費用も会社が負担しています。

また妊娠中や子育て中の女性従業員への配慮も心がけており、妊娠の報告があった際には利用できる制度や育児休業について説明したり、育休復帰支援プランなどを作成したりして働きやすい職場をつくっています。


4.女性の健康相談窓口を開設【花王株式会社】

花王株式会社では女性の健康支援のため、以下の取り組みをおこなっています。

【女性の健康支援への取り組み】

  1. 女性の健康セミナーの開催
  2. 乳がん、子宮がん検診の積極的な受診勧奨
  3. 相談窓口の設置
  4. 病気の治療を受けながら働き続けるための支援


定期検診に婦人科がん検診を組み込み、35歳以上の女性従業員は婦人科がん検診の受診が可能です。34歳以下の場合でも、2年に一度は受診できるように検診の機会を提供しています。

さらに女性特有の疾患の悩みを、どこからでもだれでもメールで相談できる「女性の健康相談窓口」を設置。
相談後、症状の悩みに合わせたヘルスケア関連商品を提供したり、社内で使用できる人事制度を紹介したりするなどのサポートをおこないながら、社員が健康情報に興味を持てるように工夫しています。


5.婦人科検診を全額会社負担で実施している【株式会社浅野製版所】

株式会社浅野製版所では、以下の取り組みを実施しています。


【女性の健康支援への取り組み】

  1. PMS(月経前症候群)研修の実施
  2. 生理などの急な遅刻や休みでも対応できるサポート体制
  3. 健康診断時の乳がん検診・子宮頸がん検診の実施


婦人科検診については、定期健康診断の際に、年齢に関係なく乳がん検診・子宮頸がん検診を全額会社負担で実施。就業時間内で検診を受けられるようにしています。


女性が健康で働き続けるための企業戦略として婦人科検診を積極的におこないましょう!

企業における女性の活躍推進が求められている今、女性の健康支援をおこなうことで企業の価値や信頼性が高まり、長期的な人材確保などのメリットに期待できるでしょう。

また少子高齢化により人材不足が深まる中での女性の活躍は、ますます期待されています。

女性だけでなく、だれもが働きやすい職場にするためにも、婦人科検診を含めた女性の健康支援を積極的におこない、社員全員が健康にいきいきと働けるように、企業全体で健康経営に取り組んでいきましょう。




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監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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