産業医がすべき職場巡視とは?目的やポイントについて徹底解説!
職場巡視は、労働安全衛生規則で定められている産業医がおこなうべき大切な役割のひとつ。
職場巡視は職場環境の現状を把握したり、従業員の健康を守ったりするために欠かせません。
本記事では、産業医がおこなう職場巡視のポイントや流れなどを詳しく解説します。
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産業医が職場巡視をおこなう目的
産業医の職場巡視は、労働者の危険や健康障害を未然に防ぐために義務付けられています。
産業医が作業環境を実際に見て、労働災害になりかねない危険や問題の発見があれば、専門的な立場から改善するよう事業者に指導やアドバイスをします。
産業医から改善指導があったなら、事業者は速やかに衛生委員会に報告し改善策を話し合う必要があるでしょう。
対処せず事故が起きた場合、事業者が「安全配慮義務」を怠ったとして責任を問われる可能性があるため、すぐに対応することが必要です。
職場巡視を正しくおこなうには、自社に合う産業医を選ぶことが大切です。
産業医を選ぶ際に気を付けたいポイントについて、以下の資料で詳しくご紹介しています。ぜひ業務にお役立てください。
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産業医が職場巡視をおこなう際におさえておくべきポイント
産業医が職場巡視について、覚えておきたいポイントについて解説します。
職場巡視の際のチェックポイント
産業医が職場巡視をする際に、事務所(オフィス)と工場とでは作業環境が大きく変わるため、チェックするポイントも違ってきます。
事務所(オフィス)の場合と工場の場合、それぞれご紹介します。
【事務所(オフィス)の場合】環境面においてのチェックポイント
オフィスでの仕事は長い多くの時間を同じ環境で過ごすことが多いため、作業環境を労働者が快適に働ける場所にする必要があります。
そのため、産業医は以下のポイントをチェックしましょう。
- オフィス内の温湿や冷・暖房などの温度環境
- 受動喫煙防止対策や空調設備、換気などの空気環境
- 採光・照明の明るさ、パソコンを用いた作業が適切に管理されているかなどの視環境
- 騒音箇所はないかなどの音環境
- 床はつまずいたり滑りやすくないか、安全通路は確保されているかなどの作業環境
- 非常口、消火器、消火栓等の周囲に物が置かれておらず整理整頓されているか
- 休憩室の環境はどうか
従業員とコミュニケーションを取りながらチェックをおこないます。
【工場の場合】環境面においてのチェックポイント
作業をおこなう場合が多い工場のような環境では、直接的な労働災害につながる可能性もあるため、安全が確保されているかチェックすることが重要です。
以下のようなチェックポイントが挙げられます。
- 重量物の運搬方法は適切かなどの作業方法
- 化学物質等を扱う際、保護具が適切に使用されているか
- 危険物の保管状況は適切か
など、有害要因が多い事業場であればしっかりチェックしておくことが重要です。
【事務所(オフィス)・工場の場合】心身の健康面でのチェックポイント
オフィスであっても工場であっても快適な職場づくりには環境だけでなく労働者の心身の健康管理も大切です。
健康維持や増進のため、以下のようなチェックをおこないます。
- 長時間労働になっていないか、有給休暇が取れているかなどの働き方チェック
- メンタルヘルスケアはされているかなどのストレス対策チェック
- 健康診断は定められているとおりに実施されているかなどの健康管理チェック
上記のようなチェックをおこなうことで、疲労やストレスの少ない快適な職場にすることができるため、仕事の活性化にも良い影響を与えるでしょう。
職場巡視をおこなわない場合は罰則も
職場巡視は、労働安全衛生規則第15条で定められている産業医の義務です。
そのため、職場巡視をおこなわなければ法律違反となり50万円以下の罰金を科せられるおそれがあります。
また、職場巡視を適切におこなわず労働災害が発生した場合、「安全配慮義務違反」とされる可能性があるため、必ず取り決めておこなうようにしましょう。
職場巡視をおこなう頻度
平成29年に産業医制度にかかる見直しについて、労働安全衛生規則等の改正がおこなわれました。
改正前は産業医の職場巡視は毎月1回以上とされていましたが、改正後は条件を満たせば2ヶ月に1回以上にすることが可能です。
その理由として、過重労働による健康障害の防止やメンタルヘルス対策等が事業場における重要な課題となっており、産業医のより効率的かつ効果的な職務の実施が求められています。
そのため、メンタルヘルスケアや長時間労働者への対応にさらに時間を割く目的で改正されました。
またそれらの対策のための情報収集にあたり、職場巡視と他の手段を組み合わせることも有効と考えられています。
産業医の職場巡視を2ヶ月に1回にできる2つの条件とは?
職場巡視の感覚を2ヶ月に1回とできる条件とは以下のとおりです。
- 事業者から産業医に所定の情報を毎月提供する
- 事業者の同意を得る
それぞれの条件について詳しく解説します。
条件①事業者から産業医に所定の情報を毎月提供する
産業医の職場巡視を毎月1回以上から2ヶ月に1回以上にするためには、以下の情報を事業者から産業医に提供しなければなりません。
- 衛生管理者が少なくとも毎週1回おこなう作業場等の巡視の結果
・巡視をおこなった衛生管理者の氏名、巡視の日時、巡視した場所
・巡視をおこなった衛生管理者が「設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがある とき」と判断した場合における有害事項及び講じた措置の内容
・その他労働衛生対策の推進にとって参考になる事項
- 上記に掲げるもののほか、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が産業医に提供するとしたもの
・労働安全衛生法第66条の9に規定する健康への配慮が必要な労働者の氏名及び労働 時間数
・新規に使用される予定の化学物質、設備名、これらに係る作業条件、業務内容
・労働者の休業状況
- 休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合において、その超えた時間が1ヶ月当たり100時間を超えた労働者の氏名、及びその労働者に係る超えた時間に関する情報
事業場の衛生環境に関する情報を適切に提供すれば、巡視の頻度を減らすことは可能です。
条件②事業者の同意を得る
職場巡視の頻度を減らすには、事業者の同意を得る必要があります。その際、産業医の意見に基づき、衛生委員会において調査審議をおこなった上で決定しなければいけません。
必ず、産業医と事業場双方の同意を得てから職場巡視の頻度を決定するようにしましょう。
また、調査審議は頻度を変更する一定の期間を定めた上で、その一定期間ごとに産業医の意見に基づいておこなうことも必要です。
産業医の職場巡視の基本ステップ
産業医が職場巡視をおこなうにあたり、どのような流れで実施するのかご紹介します。
ステップ1:職場巡視の計画や事前準備
いつ職場巡視をおこなうか年間の巡視計画を立て、重点的にどこを巡視するのかテーマを決めておきましょう。
また、事前準備として以下の内容を産業医と一緒にまとめ、共有しておくのがおすすめです。
- 作業工程や作業内容の確認
- 有害物質取り扱いの確認
- 巡視用のチェックリスト
上記を準備しておくと、効率よくスムーズに職場巡視ができるでしょう。また悩むことなく巡視をおこなえるので、予定よりも大幅に時間が過ぎてしまったなどのトラブルも避けられます。
ステップ2:職場巡視の実施と記録
職場巡視を実施する際、重点的にチェックしたいポイントを意識しながら、準備したチェックリストを用いて確認していきます。
改善点があった場合には、後から話し合えるようにチェックシートに記載します。
職場巡視のときには、ただチェックだけをして終わるのではなく、労働者とのコミュニケーションを取りながらおこないましょう。
そうすれば労働者の様子を把握でき、気づかなかった改善点が出てくる可能性もあるからです。
職場巡視が終わったあとは巡視報告書を作成します。報告書を作成し巡視記録を残しておけば、衛生委員会との共有もスムーズにおこなえます。
職場巡視報告書には以下の点を記載しましょう。
- 巡視日時
- 巡視職場名
- 同行者職氏名
- 指摘事項
- 良好な事項(継続することが望ましい)
上記のような情報を記載しておくと、労働基準監督署から情報の提示を求められた場合でも、速やかに対応できるでしょう。
また作成した記録は、必要な共有をしたのち健康診断結果や議事録などの保管期間に合わせて保存します。
ステップ3:職場巡視の結果報告
職場巡視報告書をもとに安全衛生委員会で結果を報告します。
問題点や改善すべき点が大きくすぐに対処できない場合でも、応急処置を講じつつ安全衛生委員会での審議によってどのように対策すべきか、解決策を見つけることが重要です。
産業医の職場巡視を適切におこない快適な職場づくりを
従業員の健康障害の防止やメンタルヘルス対策、また労働災害を防ぐためには産業医の職場巡視は非常に重要です。
医学的視点から職場をみる産業医と連携を取りながら、決められた職場巡視をおこない労働者を守っていきましょう。
職場巡視を正しくおこなうには、自社に合う産業医を選ぶことが大切です。
産業医を選ぶ際に気を付けたいポイントについて、以下の資料で詳しくご紹介しています。ぜひ業務にお役立てください。