企業が決定する休職期間延長の判断基準とは?注意点も含めて解説!
近年、メンタルヘルス上の理由で休職者が増加し、企業にとって大きな課題となっています。
休職は職場復帰を踏まえた措置ですが、もし休職期間の延長を求められた場合、企業担当者が対応すべき事項があります。
本記事では、休職期間延長の判断基準と注意点について説明しています。
休職制度とは?
休職とは「労働者について、労務に従事させることが不能又は不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら、労務への従事を免除すること又は禁止する制度」と定められています。
つまり、就業継続が難しくなった従業員に対し、雇用関係を維持したまま一定期間就業を免除する制度です。
休職に関する詳細な内容については法律では定められていません。
休職制度を設けるかどうかも含め、企業ごとの判断に委ねられています。しかし、休職制度を設ける場合には、労働基準法にて「労働契約の締結に際し、労働者に休職に関する事項を明示しなければならない。」と決められています。
就業規則や労働協約(労働組合と使用者が書面で取り交わした約束事)等で明確に定義づけましょう。
休職対応の全容については、以下の資料で詳しく解説しています。従業員が休職した際に、人事労務担当者が対応すべきこともご紹介していますので、ぜひご活用ください。
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一般的な休職期間の日数はどれぐらい?
うつ病などのメンタルヘルス不調を含めた「傷病休職」の場合、企業の休職期間の上限は、およそ3か月から長くても3年ほどが一般的です。
先にも述べたように、具体的な休職期間においても法律による規定がなく、企業ごとの判断に基づきます。
企業の規模によって従業員一人ひとりが企業に与える影響には差がある場合があります。自社に適した休職期間を定め、社内で認識を共有するようにしましょう。
休職期間の設定はどう決定するか
休職期間の設定は、以下の3つのポイントを検討材料として判断するといいでしょう。
- 休職者の勤続年数
- 傷病手当金の支給期間
- 医師の診断書
順に解説します。
休職者の勤続年数
休職者の勤続年数によって休職期間を設定する方法を取り入れている企業が多いです。これまでの会社への貢献度を踏まえ、勤続年数が長い従業員には休職期間を長期に設定することも。
また、企業規模によって設定期間が前後する傾向もみられます。特に入社1年未満の従業員には休職制度を適用しない企業もあります。
自社の就業規則に休職に関する規定がある場合は記載期間を参考にしてください。
就業規則に明確な定めがない場合は、後々のトラブルにならないよう早期に規則の策定に取り組みましょう。
傷病手当金の支給期間
傷病手当金(健康保険組合に加入している労働者が休職し、事業主から十分な報酬が受けられない場合に本人と家族を守る制度)の支給期間を考慮し、1年6カ月を最長休職期間と定めている企業が多いです。
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から最長1年6カ月と決められており、延長はありません。
休職期間であっても社会保険料は企業・従業員共に負担しなければなりません。給与・賞与に関しては、各企業ごとに支払いを決めている企業もありますが、無給としているところが多いです。
従業員の経済的負担から、傷病手当金の支給期間を考慮し、休職期間を検討する必要があります。
医師の診断書
就業規則上の定めに加え、医師の診断書により、どれくらいの休職期間が必要かを判断するケースもあります。
休職者の傷病状態をみて、一般的に労働が不可能であるかを確認します。必要な療養期間、復帰の目途を鑑みて、休職期間を決定するのが望ましいでしょう。
休職期間を延長するかを判断するポイント
休職している従業員から、就業規則等に定められた休職期間が終了した後に期間延長の申し出があった場合はどう対応するのが適しているのでしょうか。
多くの企業の就業規則においては、傷病等による休職期間が満了したら該当する従業員は当然に退職するといった規定を設けている場合が多いです。
しかし、休職者の状況により休職期間の延長を求められる可能性があります。休職期間の延長を受け入れる判断基準について解説していきます。
・休職者の回復状況
休職者の早期の復職が望めるのであれば休職期間の上限を超えそうな場合でも、延長を認める場合があります。
休職前の勤務態度、その他、評価上特に問題のない社員かどうかも含め、休職期間の延長を考慮しても良いかどうか判断しましょう。
・医師の診断
医師の診断により回復する見込みが近い(延長期間が最短で済む)と判断される場合もあるため、医師からの診断書も判断基準として活用できます。
ただし、休職期間を延長する際には、復職の目途が立っている場合に限った方が良いでしょう。
復帰の目途が立っていない場合に延長を認めてしまうと、最終的な回復が見込めず、他の従業員の負担増、社会保険料の未払いなどのトラブルが起こりうるからです。
休職期間を延長する場合に気をつけるべき注意点
企業が休職者の休職期間を延長する場合には、トラブルを未然に回避する十分な対応が求められます。
就業規則等に定められた休職期間終了後は、原則として延長を認めなくとも問題はありません。
ただ、事情によっては延長を認めるケースもあるでしょう。休職期間を延長する場合の注意点についてご説明します。
無用に延長期間を長くしない
休職制度を就業規則等に定めている以上、無用に延長期間を引き延ばすのは好ましくありません。
傷病による休職等について、休職期間満了後は原則として、就業規則の定めに則って退職を促すのが一般的です。
休職制度の延長を認めると、会社側が認めた休職期間(延長を含む)が満了するまで解雇できない状態が続くケースがあります。
会社への貢献もみられず、解雇したい従業員を在籍させる期間が長期化してしまうことにもつながるため、休職期間を不用意に長期化させるのは注意が必要です。
明確な理由がない場合の期間延長は避ける
「現時点では回復見込みが判断できないため、もう少し様子を見たい」という曖昧な理由での期間延長は避けましょう。
例えば、他に復職を見込めない休職中の従業員がいた場合に、曖昧な理由での延長を認めてしまうと他の社員との違いが説明できず、「他の従業員は認められているのに、自分はどうして延長が認められないのか」などトラブルに発展する可能性が出てきます。
休職期間の延長は、就業規則に明確な根拠を記載し、延長の基準は客観的かつ合理的な内容にすると無用なトラブルを防げます。
期間延長をする場合は書面にして保管しておく
就業規則に基づく休職期間の延長について書面にて記録します。
口頭のみでのやり取りでは、どのように対応したかわからなくなってしまう可能性があるからです。
会社の対応を証明するためにも、必ず書面を作成し保管するようにしましょう。
書面に記載する場合に以下の4つのポイントは必ず盛り込む必要があります。
- 具体的な事情
- 延長した期間
- 延長後の対応
- 賃金の支払い
休職延長期間が終了した場合には、それ以上の延長はなく退職となることを明確に伝えておきましょう。書面を作成したら、必ず休職者に確認し同意を得ます。
また、作成した文書を資料として保管しておくと、今後、同様の事情で休職期間の延長を検討する場合のに参考になります。
休職期間の延長は慎重に吟味して決定すべき!
休職期間の延長について就業規則に定めるポイントと注意点について解説しました。休職期間の延長について法律上での決まりはなく、企業ごとの判断基準で決められます。
原則として、休職期間の延長を認めなくとも問題はありません。
延長を認める場合は、休職者の回復が見込まれる場合、医師により、回復の目途が立っていると診断された場合など、明確な基準を定めておくと、後々のトラブルを防げます。
休職者への取扱いは、一歩間違えるとトラブルに発展するリスクをはらんでいます。
必要事項は就業規則に明確に定め、自社を守るために些細なやり取りも書面に残しておくと良いでしょう。
休職対応の全容については、以下の資料で詳しく解説しています。従業員が休職した際に、人事労務担当者が対応すべきこともご紹介していますので、ぜひご活用ください。