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休職者への対応として企業が考慮すべきポイントとは?注意点を含めて解説

近年、多忙からくる健康上の問題や精神的な病気のために、一時的に休職する労働者が増加しています。

本記事では休職したいと希望する従業員に対して、企業はどのような点を考慮しながら対応すべきか、注意点を含めて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.企業が休職制度を設ける理由とは?
  2. 2.【休職前】休職者に対する適切な対応6つ
  3. 3.【休職期間中】休職者への連絡対応で考慮すべきポイント3つ
  4. 4.休職者への対応で知っておくべき注意点
  5. 5.【復職に向けて】職場復帰が可能か判断する手順
  6. 6.休職者の職場復帰までに実施検討したい制度も
  7. 7.休職者への適切な対応を行い従業員が安心できる職場づくりを


企業が休職制度を設ける理由とは?

休職制度は労働基準法等で義務付けられている制度ではなく、あくまでそれぞれの会社で定める制度です。

しかし休職満了後、職場復帰できない従業員に対して「自然退職」または「解雇」など、労働契約の終了を円滑に進めるため、休職制度は多くの会社で設けられています。

また、以下の理由でも休職制度を導入しています。

  • 職場生活などにおいて強い不安やストレスなど、心の健康問題による休職者が増えた
  • 長期雇用を前提とした優秀な人材の有効活用のため


休職者の今までの働きを評価し、一時的に労働できないとしても即座に解雇せず復職を願い様子をみるという会社の意図も含まれています。

休職制度は会社にとって、離職率上昇を抑えたり安心して働ける職場環境の提供ができたりするメリットもあります。

一方で、一度導入すると簡単には変更できないため、内容については慎重に考慮して就業規則に定めるようにしましょう。



休職対応の全容については、以下の資料で詳しく解説しています。従業員が休職した際に、人事労務担当者が対応すべきこともご紹介していますので、ぜひご活用ください。

>>>資料ダウンロード(無料)は こちら:休職対応マニュアル

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【休職前】休職者に対する適切な対応6つ

休職希望者に対して、休職前に「休職中に関する内容」について面談を行いましょう。内容は以下の6つです。

  • 休職期間や休職中の連絡方法の確認
  • 休職中のSNS利用方法に関する注意事項共有
  • 休職環境の確認
  • 休職者の家族への情報共有
  • 傷病手当金などの情報提供
  • 復職するために必要な生活リズムの記録

それぞれを詳しく解説します。


休職期間や休職中の連絡方法の確認

まず、休職期間の再確認と休職中の連絡方法について確認しましょう。

会社は休職中の労働者の状態を把握しておく必要があります。会社とのつながりを持たせるために、定期的に最低限の連絡をすることを伝えておきましょう。

また連絡方法は休職者の状態に合わせ、電話が難しい場合にはメールなど負担にならない方法で、状態の良いときに返信してほしい旨などを伝えられます。


休職中の連絡方法や頻度の詳細については、以下の記事で解説しています。

  休職中の連絡方法について人事労務担当者が知っておくべき確認事項とは? 従業員が休職することになった場合、該当従業員に対する休職中の連絡について、どのように対処するべきか迷いを感じる担当者も多いかもしれません。 本記事では、従業員が怪我・病気・メンタルヘルス不調で休職する際に、人事労務担当者が知っておくべき「休職中の連絡方法」について詳しく解説していきます。 mediment(メディメント)



休職中のSNS利用方法に関する注意事項共有

メンタルヘルス不調で休職していた場合、会社でのストレスが軽減されると休職前と同じ日常生活が送れるようになるケースもあるでしょう。

しかし、普段の生活ができるようになったからといって、休職期間中にレジャーや旅行に出かけたり、さらにはそれをSNSにアップして公開したりしてしまった場合、それを見た他の従業員はどう感じるでしょうか。

「体調が悪いから休職したんじゃないのか……」と休職者に対する不信感を抱かせてしまう可能性があります。

同時に、休職を認めた会社に対しても複雑な思いを感じるかもしれません。

会社は、休職者以外の従業員のことも、考慮する責任があります。休職期間中のSNSの利用方法に関して注意事項があれば、事前に伝えておくことが大切です。


休職環境の確認

休職期間中は、心と体をしっかり休ませることがなにより重要です。

そのため、心身を休ませられる環境があるかどうか、睡眠や食事、身の回りの世話などが整っているかを確認し、主治医の方針のもとに療養に努めるよう勧めてください。


休職者の家族への情報共有

上記でも述べましたが、会社は休職者の状態を把握しておくことが重要です。

しかしメンタルヘルス不調などで休職した場合、休職者本人が会社に連絡し報告するのが難しいケースもあるでしょう。

その場合、家族が代行し連絡するという取り決めを設けておくこともできます。

ただし、家族と連絡を取る際には本人の同意が必要です。家族だからこそ、不安や戸惑いを感じることを踏まえ、共感的態度で情報を共有するようにしてください。

病状に合わせての対応方法や病状確認の注意点をアドバイス、さらには現在の休職者の状況を家族としてありのまま受け入れ、寄り添う姿勢で支えてほしいなどの旨を伝えましょう。


傷病手当金などの情報共有

休職期間中、経済的な問題について不安を抱えている人もいます。

労働者が休職期間中に安心して療養できるように、傷病手当金などの情報、たとえば「受給の要件」「書類の手続き」「期間や金額」などを共有するようにしましょう。


復職するために必要な生活リズムの記録

復職するためには、日中に眠気がなく、業務遂行に必要な気力と体力があるかを判断する必要があります。

その判断材料として、生活や睡眠のリズム、日常生活の情報を収集することが重要です。そのため、休職者に1日の行動記録表を可能な範囲で記入してもらい、面談時に確認しましょう。

ただし、考える・書くといった意欲がわかない状態の場合には、無理に記入しなくてもよいことも説明してください。


【休職期間中】休職者への連絡対応で考慮すべきポイント3つ

休職期間中の従業員を、なにもせず放置していてはいけません。

休職者の状態を把握するため、どのように連絡し確認すべきか、考慮しなければいけない3つのポイントを解説します。


1.休職者の状態に合わせて連絡の回数や頻度を決める

休職中の連絡や頻度は、休職者の状態に合わせて調整しましょう。休職に入りたてで、まだまだ身も心も疲れ切っている状態では心身の回復が最優先になります。

そのため、なるべくストレスを与えないよう、連絡する頻度を少なくしてください。

休職初期はじっくり休んでもらうためにも1カ月に1度程度とし、状態が良くなってきたら2週間に1度と徐々に増やすなどします。連絡方法も電話から対面へと変えていけるでしょう。

休職者への連絡は職場復帰への焦りにつながるという意見もありますが、会社からの情報と併せて「良くなることをじっくり待っている」と伝えるのが大切です。


2.休職者への連絡対応をする窓口を1人にしぼる

連絡の対応窓口が毎回変わると、人によって伝えることや対応が違うなど混乱を招き休職者にストレスを与える可能性があります。

複数の担当者が対応するのではなく、担当窓口はなるべく1人にしぼりましょう。

窓口担当は、仕事の直接上司や同僚ではなく、離れた位置にいる産業スタッフ・衛生管理者・人事労務担当者など、休職者本人にとって連絡の取りやすい人が担当になると連絡が円滑に行える場合が多いです。


3.次回の連絡日を伝える

電話で連絡する場合、タイミングによっては休職者にとって苦痛になることもあるでしょう。

そのため、次回のおおまかな連絡日を伝えておくと休職者も心の準備ができ、ストレスや負担を軽減できる可能性が高くなります。


休職者への対応で知っておくべき注意点

休職者への対応において、個人情報などのプライバシーについても注意が必要です。気をつけるべき点は以下のとおりです。


必要最小限の情報収集にする

休職者の健康情報などの内容は必要最小限にし、職場復帰支援と安全配慮義務の履行を目的とした内容に限定しましょう。あらかじめ、目的と必要性を本人に伝え、承諾を得てください。


情報を取り扱う人を明確にする

どのような場で審議されるか、会社内の誰に情報を開示するかなど開示範囲を含めて明確にし、休職者の同意を得ましょう。


第三者に情報を伝える場合には必ず本人の承諾を得る

プライバシー保護を配慮した上で情報が開示されることを明確にし、開示範囲については本人の同意を得た上で、第三者への情報提供を行いましょう。


他の人に個人情報が漏れないように管理を徹底する

会社外への個人情報の持ち出しを禁止したり、外部の機関を利用するなどの際には、休職者のプライバシーの保護対策を講じた上で連携をおこなったりするなど、個人情報の管理を徹底しましょう。


個人情報の取り扱いについて休職に関する規定に明示しておく

休職に関する規定や体制の整備を図るにあたり、衛生委員などでの一定ルールを策定するとともに、保管方法を定め、周知しておきましょう。


【復職に向けて】職場復帰が可能か判断する手順

休職中の労働者から職場復帰の意思が伝えられたとき、適切な判断をするため以下のような手順を取りましょう。

  1. 必要な情報収集と評価を行い総合的に判断する
  2. 収集した情報をもとに職場復帰可否の判断をする
  3. 職場復帰支援プランを作成する

3つの手順をそれぞれ解説します。


1.必要な情報収集と評価を行い総合的に判断する

職場復帰の可否については必要な情報を収集し、さまざまな視点から評価を行いつつ判断することが大切です。情報の収集と評価の内容は以下のとおりです。

  • 労働者の職場復帰に対する意思の確認
  • 産業医や主治医からの意見収集
  • 治療状況や病状の回復状況、業務遂行能力、今後の就業に関する労働者の考えなど労働者の状態等の評価
  • 業務や職場との適合性、作業管理や作業環境管理に関する評価、職場側の支援の準備状況など職場環境等の評価

そのほか、治療に関する問題点や本人の行動特性、家族の支援状況、職場復帰を難しくしている要因などの情報を収集し、判断しましょう。


2.収集した情報をもとに職場復帰可否の判断をする

収集した情報をもとに職場復帰が可能か、産業スタッフや労務担当者などが中心となって判断を行います。


3.職場復帰支援プランを作成する

職場復帰が可能と判断されたら職場復帰を支援するため、支援対象となる個々の労働者ごとに具体的なプランを作成します。プランの内容は以下のとおりです。

  • 職場復帰日
  • 業務内容やサポートの方法、業務量の変更、治療上必要な配慮など管理監督者による就業上の配慮について
  • 配置転換や異動の必要性、勤務制度の変更の可否や必要性など人事労務管理上の対応等について
  • 安全配慮義務に関する助言や職場復帰支援に関する意見など、産業医等による医学的見地からみた意見
  • 管理監督者や産業保健スタッフなどによるフォローアップの方法や就業制限等の見直しを行うタイミングなどの関する休職者へのフォローアップについて

労働者自らが責任を持って行うべき事項などについても記載しておきましょう。

以上の手順を踏み、最終的な職場復帰の決定を会社が行います。また休職者が職場復帰した後も産業保健スタッフなどによるフォローアップを行い、労働者の状況により適宜、職場復帰支援プランの見直しをしましょう。


職場復帰支援プログラムの作り方については、以下の記事で解説しています。

  職場復帰支援プログラムの手引き|ひな形や復職事例も詳しく紹介 メンタルヘルスの不調による休職者が増える昨今、職場復帰支援は企業にとって必要不可欠な制度となっています。 この記事は、企業が職業復帰支援プログラムを作成するための手引きであり、プログラムの内容やひな形、復職事例までわかりやすく解説しています。 mediment(メディメント)


休職者の職場復帰までに実施検討したい制度も

休職者の正式な職場復帰決定の前に、休職していた労働者の不安を和らげ職場復帰の準備を行うため、会社が検討したい制度を紹介します。


通常の通勤時間に他の場所で過ごす【模擬出勤】

勤務時間と同様の時間帯にデイケアなどで模擬的な作業をおこなったり、図書館に行ったりして時間を過ごす模擬出勤制度。

スムーズな職場復帰ができるよう、リハビリ訓練のために行われます。


復職に向けての準備【リワーク】

復職に向けてのウォーミングアップを行うリワーク。休職から復職までの期間をスムーズに乗り切るため、リハビリテーションを行います。

リワークには以下のような3種類の実施主体があります。

  • 医療ワーク
  • 職リハリワーク
  • 職場リワーク

医療リワークは医療機関において、再休職の予防を最終目標として働き続けるための病状の回復と安定を目指した治療を実施します。多職種の医療専門職による医学的リハビリテーションをおこないます。
職リハリワーク(職業リハビリテーションリワーク)は、地域障害者職業センターが実施しているリワークです。
目的は職場への適応に向けた本人と会社への支援で、病状を回復させるための治療ではないことが医療機関のプログラムとの大きな違いです。
また、職場リワークは企業内で行われる復職支援のためのプログラムです。復職させて安定した就労ができるのかを見極めることが大きな目的です。
プログラムの内容は主にオフィスワークや軽作業、また復職後に精神的病気が再発しないための心理療法が行われます。

復職して再休職するなどの事態にならないよう、心と体を少しずつ慣らしていき、社会生活や仕事に対応できるよう促しているのがリワークです。


通勤経路を移動する【通勤訓練】

自宅から勤務先の近くまで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごしたあとに帰宅する通勤訓練制度。模擬出勤と同様、職場復帰をスムーズに行うためのリハビリ訓練です。


一定期間職場に行く【試し出勤】

職場復帰の判断等を目的として、本来の職場に試験的に一定期間継続して出勤する試し出勤制度。復職のリハビリ訓練に加え、職場復帰可否の判断材料として実施することもあります。


休職者への適切な対応を行い従業員が安心できる職場づくりを

休職者を出さないように、会社側も従業員の体の健康や心の健康に気を配る必要があります。しかし、多忙な毎日を送っていると休職する従業員が出てくる可能性はどの会社であっても否定できません。

もし休職希望者が出た場合、優秀な人材を確保しておく上でも会社として適切な対応を取るべきです。そして、休職者が安心してスムーズな職場復帰を行えるよう、従業員一人ひとりが安心できる職場づくりを目指しましょう。



休職対応の全容については、以下の資料で詳しく解説しています。従業員が休職した際に、人事労務担当者が対応すべきこともご紹介していますので、ぜひご活用ください。


>>>資料ダウンロード(無料)は こちら:休職対応マニュアル

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mediment(メディメント)は、従業員のあらゆる健康データを一元管理し、産業保健業務の効率化を支援するクラウドシステムです。 クラウドシステムならではの多彩な機能で、あらゆる業務のペーパーレス化を実現し、従業員のパフォーマンス向上に貢献します。

監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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