
特殊健康診断の費用は誰が負担する?会社負担の範囲を解説
導入
「特殊健康診断の費用は会社が負担すべきなのか、それとも従業員個人の負担でよいのか」という質問は、人事労務ご担当者からよく寄せられます。派遣労働者やパート従業員が対象業務に従事している場合、判断に迷う場面はさらに増えます。特殊健康診断は法令で実施が義務付けられているため、費用負担の考え方も定期健康診断とは異なる整理が必要です。誤った運用は労働者とのトラブルにつながりかねません。本記事では、特殊健康診断の費用負担の考え方と、実務上押さえておくべきポイントを解説します。
特殊健康診断の費用は原則として会社負担
労働安全衛生法に基づき事業者に実施義務がある特殊健康診断について、厚生労働省の通達では、健診に要する費用は事業者が負担すべきものとされています。これは、特殊健康診断が労働者本人の希望ではなく、事業者の義務として実施されるものである以上、その費用も事業者が負うべきという考え方に基づいています。健診機関への支払いはもちろん、対象労働者が別の医療機関で受診する場合の費用についても、原則として会社が負担する扱いとなります。
受診時間中の賃金の扱い
受診に要した時間については、法令上の明確な賃金支払い義務の規定はないものの、特殊健康診断が事業者の義務として実施される性質上、所定労働時間内に受診させ、その時間分の賃金を支払うことが望ましいとされています。多くの企業では、通常の勤務時間として取り扱っています。
会社負担となる費用の範囲
会社負担の範囲には、健診の受診費用そのものに加え、健診機関までの交通費が含まれる場合もあります。特殊健康診断の結果、医師が精密検査や再検査を必要と判断した場合の追加費用についても、業務に起因する健康影響の確認である以上、会社負担とすることが望ましいと考えられています。ただし、労働者が任意で受けるオプション検査など、法定項目を超える部分については、会社負担の対象外とする企業も存在します。
費用相場の考え方
特殊健康診断の費用は、対象となる業務の種類や検査項目数によって異なり、一般的には1人あたり数千円から1万円程度が目安とされています。血液検査や画像検査などの精密な検査項目が含まれる場合は、費用がさらに高くなる傾向があります。複数の特殊健康診断を同時に実施する必要がある労働者については、健診機関との調整により効率的に実施することで、コストを抑えられる場合もあります。定期健康診断とあわせて同日に実施できれば、労働者の受診負担と会社のコストの両方を軽減できます。
派遣労働者・パート従業員の費用負担
派遣労働者が有害業務に従事する場合、特殊健康診断の実施義務は原則として派遣先の事業者に課されます。そのため、費用負担についても派遣先が負担するのが一般的な考え方です。派遣元・派遣先間の契約でこの点が明確になっていないと、実施時期の遅れや費用負担をめぐるトラブルにつながるおそれがあるため、派遣契約締結時にあらかじめ取り決めておくことが望ましいでしょう。パートタイマーやアルバイトについても、対象業務に従事する以上は正社員と同様に会社負担で実施する必要があります。
費用管理の実務ポイント
対象業務や対象者数を正確に把握し、健診機関と事前に費用体系を確認しておくことで、予算管理がしやすくなります。複数拠点がある企業では、拠点ごとの健診機関との契約状況を一元把握し、コストの見える化を図ることも重要です。年度ごとの費用実績を蓄積しておけば、対象者数の増減に応じた翌年度予算の見積もり精度も高まります。
まとめ
特殊健康診断の費用負担については、①事業者の義務である以上、費用は原則として会社負担、②受診時間も所定労働時間内として賃金を支払うことが望ましい、③精密検査等の追加費用も会社負担が基本、④費用相場は業務内容により1人数千円〜1万円程度、⑤派遣労働者は原則派遣先が負担、という5点を押さえておく必要があります。雇用形態にかかわらず対象業務に従事する労働者は等しく保護されるべきという考え方が根底にあります。健康管理システムで対象業務・対象者・費用実績を一元管理すれば、予算計画や健診機関との調整がスムーズになります。費用負担のルールを社内規程として明文化しておくことも検討してみてはいかがでしょうか。











