健康診断の有所見者とは?改善に向けて企業が取り組める対応策をご紹介
労働安全衛生法に基づき、企業において健康診断の実施が義務づけられていますが、年々健康診断における有所見者の数は増えています。
増加に歯止めをかけ改善するために企業としてどのような取り組みや対応ができるのか、本記事にて解説します。
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有所見者への対応を含む事後措置の流れや企業の義務については、以下の資料で説明していますので、ぜひダウンロードしてお役立てください。
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健康診断での有所見者とは?
定期健康診断等の結果、なんらかの異常の所見が認められた際に「有所見」といいます。
異常の有無は、一般的に基準範囲を外れているか否かで判断される場合が多いでしょう。
医師による「異常なし」「要精密検査」「要治療」の診断結果のうち、異常なし以外の人のことを「有所見者」といい、1項目でも異常値があると有所見者に該当します。
健康診断での有所見者の推移
健康診断の有所見者率は長期的に増加傾向で推移しており、令和2年は63.6%と10年前に比べて11.3%の増加となっています。
引用:厚生労働省「2.健康診断有所見者の推移」
さらに項目別に見ると、血中脂質検査が36.9%と最も高く、次いで血圧、肝機能検査、血糖検査の順となっています。
引用:厚生労働省「2.健康診断有所見者の推移」
性別的に見ると「男性68.2%」「女性55.7%」と、男女とも半数を超える人に所見が認められる結果となっており、前年度よりも上昇しています。
引用:東京都産業保健健康診断機関連絡協議会「職域における定期健康診断の有所見率(2020年度)」
男性で有所見率が高かったのは腹囲計測44.4%で、続いて血中脂質検査40.9%、肥満度(BMI)23.3%、肝機能検査22.4%、血圧測定21.5%、心電図9.5%、聴力検査(4000Hz)9.4%の順となっています。
一方、女性で有所見率が高かったのは血中脂質検査29.3%で、次に肥満度(BMI)17.7%、貧血検査14.6%、腹囲計測12.4%、血圧測定11.9%、肝機能検査8.9%、心電図検査8.1%、血糖検査7.7%と続きます。
男性が女性よりも高かったのは聴力検査や血圧測定、肝機能、血中脂質、血糖など複数ありますが、女性のほうが高い項目は貧血検査のみでした。この結果からも、男女で有所見率の差があるとわかるでしょう。
健康診断で有所見者になる基準値は?
ここからは、健康診断でおもに使用される基準値、および受診したほうがよい判定基準についてご紹介します。
健診機関でおもに採用されている有所見者の基準値
労働安全衛生法に基づく健康診断では、基準範囲が法令で決められておらず、各検査項目の有所見の判定は各健診機関に委ねられています。
多くの健診機関では、おもに以下の基準値が採用されています。
引用:「定期健康診断有所見率の上昇と労働者の高齢化との関連」
有所見者に受診を勧奨する判定値
厚生労働省が出している「標準的な健診・保健指導プログラム」において、有所見者に受診するよう勧める判定値は下記の値となっています。
引用:厚生労働省「受診勧奨判定値について」
健康診断での有所見者率が高い場合の問題点
項目別の有所見率をみると、糖代謝、脂質、肝機能が上位になっており血圧も高い割合になっています。
上記はすべて生活習慣病に関与する項目です。
生活習慣病は三大死因(ガン・脳卒中・心疾患)の原因となるため、有所見者は脳・心臓疾患のリスクがさらに高まる可能性があります。
時間外労働や夜勤などで長時間にわたる労働や体調管理を怠ってしまうと、労働者の心身に悪い影響が及ぶ場合も。
さらに上記のような労働負荷の増加によって、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる可能性もあります。
実際に「脳・心臓疾患」による労災請求は毎年発生していて、企業が病気の発生を防止することが重要です。
また、従業員の健康が悪化すればするほど、心身の不調を抱えながら仕事をしたり業務がおこなえなくなったりして、企業の生産性が下がるかもしれません。企業として生活習慣病などの病気を予防に取り組めば、利益率や労働生産性といった企業レベルのパフォーマンスの改善が期待できるでしょう。
健康診断にて有所見者がいる場合の企業の対応
健康診断の結果有所見者がいる場合、企業がどのように対象者に対して対応できるかご紹介します。
①健康診断結果を労働者へ通知する
労働安全衛生法において、事業者は健康診断の受診者全員に所見の有無にかかわらず健診結果を文書で確実に通知するよう定められています。
労働者が自分の健康の保持や促進のための取り組みに積極的に努めるようにするために、まずは自らの健康状況を把握することが重要です。
労働者本人が有所見者だと気づけば、改善に向けて取り組みやすくなるでしょう。
有所見者が通知を受けたのち、健康を改善するためになにを行えばよいかわからない場合もあります。
こうした状況に対処するため、結果を通知するとともに、電子メールなどで健康教育や保健指導等において示された内容を着実に実施するよう促すこともできるでしょう。
②産業医や医師等からの意見聴取
労働安全衛生法により事業者は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者に対し、就業上の措置について3ヶ月以内に産業医や医師等の意見を聞かなければいけないと定められています。
意見聴取は、医師や産業医からおこないます。
産業医の選任義務のない労働者50人未満の事業場の場合は、労働者の健康管理等をおこなうのに必要な知識を有する地域産業保健センターを活用できるでしょう。
適切な意見を聞くため、必要に応じ労働者の労働環境などの情報を産業医や医師等に伝えます。提供する代表的な情報は以下の通りです。
- 作業環境
- 労働時間
- 労働密度
- 深夜業の回数および時間数
- 作業態様
- 作業負荷の状況
- 過去の健康診断の結果等に関する情報
- 職場巡視の機会
また、健康診断の結果のみでは労働者の身体的または精神的状態を判断するのが難しい場合、労働者との面接の機会を提供しましょう。
医師等の意見を勘案し必要があると判断した場合には、事業者は労働者の就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じます。
医師等に求める事後措置のための意見は以下の通りです。
通常勤務 |
通常の勤務でよいもの |
就業制限 |
勤務に制限を加える必要のあるもの |
要休業 |
勤務を休む必要のあるもの |
「就業制限」の内容は、勤務による負荷を軽減するため、出張の制限や時間外労働の制限、労働負荷の制限、昼間勤務への転換等の措置が含まれます。
さらに「要休業」は、療養するために休暇・休職等を取り、一定期間勤務させない措置を講じることです。
有所見者に対してどのような措置が適切かを医師等に聞き、労働者の健康を守っていきましょう。
③有所見者が健康改善するためのフォロー
企業は健康診断の有所見者に対して、医師等による食生活の改善や日常生活での保健指導をおこない、労働者自身も健康管理をするための指導や情報を活用して健康保持に努めることが大切です。
また、栄養改善や運動などに取り組むよう健康教育や健康相談を積極的に実施すると、労働者本人も健康教育を利用して健康保持や増進に取り組みやすくなるでしょう。
④常時50人以上いる事業場は労働基準監督署へ健診結果を報告
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、以下の健康診断をおこなった場合には「定期健康診断報告書」を所轄の労働基準監督署長に報告しましょう。
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 特殊健康診断
有所見者の人数を報告する際は、業務や健康への影響が出やすい「C、D、E」「要経過観察」「要再検査」「要精密検査」「要治療」の判定結果のみを有所見者の対象とするケースが多いです。
健康診断での有所見者への対応を適切におこない1人ひとりの健康意識を高めていきましょう!
健康診断の有所見者の増加を抑え改善するためには、従業員一人ひとりの健康に対する意識付けや生活習慣の見直しが重要です。企業は、健康診断の結果に基づいた食生活に関する保健指導の実施や、健康管理に関する情報提供などを通じて対策をおこないましょう。
また、有所見者への受診勧奨に積極的に取り組むことも重要です。
受診勧奨をして有所見者が医療機関を受診することで、病気の早期発見・早期治療につながり合併症や重症化を防げます。
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しかし、従業員1人ひとりの健康データの管理は企業にとって大きな負担になる場合もあるでしょう。
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