企業が休職を判断する基準とは?注意点や休職者への対応を含めて解説
近年、在宅勤務によるコミュニケーション不足や強い不安が原因でメンタルヘルス不調を抱え休職する労働者が増加しています。
本記事では休職したいと申し出る従業員に対して、企業はどのように休職の判断を行えばよいか、判断基準や注意点を含めて解説します。
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休職対応の全容については、以下の資料で詳しく解説しています。従業員が休職した際に、人事労務担当者が対応すべきこともご紹介していますので、ぜひご活用ください。
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休職を判断する流れ
労働者から休職したいと申し出があった場合、どのようなステップを踏み判断するか解説します。
休職者についての情報収集
まずは休職したい労働者について情報収集を行います。特にメンタルヘルス不調が原因での休職希望であれば、以下のような情報を調べましょう。
- ストレスチェック
- 過重労働
- 日々の業務中の様子
ストレスチェックにおいて高ストレス判定が出たり、長時間労働や休日出勤、不規則な勤務などにより、労働者の身体的・精神的負荷が大きくなっていないかどうか調べます。
また、「イライラしている・落ち込んでいる」「遅刻や欠勤が増えた」「仕事のミスが増えた」「身だしなみに無頓着になった」など、今まで当たり前にできていたことができなくなったという情報も休職の判断材料となるでしょう。
特にメンタルヘルス不調の場合は、早期発見と早期対応が重要になってきます。
通常勤務可否の判断をする
通常勤務とは以下のような状態です。
- 上司による業務管理のもと、業務ができている
- 会社における通常の労務管理下で就業態度や勤怠などの就業規則を守っている
- 「健康上の問題」はなく、業務の遂行・継続によっても健康上の問題は生じない状態
「健康上の問題」は、疾病が業務遂行上の支障になり療養が必要な状態のことを指しています。以上の通常勤務ができるかどうかを考慮し、難しければ休職を判断します。
労災可否の判断をする
休職に至った病気やケガなどが労災に当てはまるか確認しましょう。労災として認定される条件は、病気やケガが仕事に起因しているかどうかです。
メンタルヘルス不調などの精神障害の労災認定は、仕事による強いストレスが原因の場合に限られます。そのため、企業で実施されるストレスチェックは労災認定の参考にする上で非常に重要な判断材料となるでしょう。
厚生労働省による精神障害に関する労災認定のための要件は以下のとおりです。
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「業務による強い心理的負荷が認められる」とは、業務による具体的な出来事があり、その出来事とその後の状況が労働者に強い心理的負荷を与えたことをいいます。
休職の判断基準
休職を判断するための基準は以下のとおりです。
- 主治医による診断書を参考にする
- 産業医による意見書を参考にする
それぞれを詳しく解説します。
主治医による診断書を参考に判断する
主治医は医学的な立場から労働者が業務を行えるかどうかの診断をし、休職が必要と判断した場合には診断書が出されます。
診断書には、病名・症状・休職の期間などが記載されているため、会社はその診断書をもとに休職させるかどうかの最終的な決定を行います。
産業医による意見書を参考に判断する
産業医は労働者に対して、会社での業務の負荷や勤務時間などを配慮した上で診断をします。仕事が原因で体調不良になっているなら、産業医との面談を設定し業務可能かどうかを判断してもらいましょう。
産業医は主治医の診断を参考にしつつ労働者の安全であろう措置となるよう調節するため、その意見をもとに会社が最終的な判断を決定します。
休職を判断するにあたっての注意点
「主治医」と「産業医」の判断が異なる場合、原則として「産業医」の意見を尊重しましょう。(労働安全衛生法第13条の3,4)
「主治医」と「産業医」では立場や判断基準が異なります。「主治医」は病気の治療をする医師であり、日常生活を送れるレベルまで回復しているかなどを診断します。
一方、「産業医」は日常生活が送れるレベルではなく、ストレスがかかる勤務ができるかどうか企業内の状況を把握した上で、医学的な判断ができる立場にいます。
そのため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容などについて、「産業医」が精査した上で取るべき対応をし、判断することが重要です。
また、あらかじめ主治医に対して、労働者の職場での業務遂行能力に関する情報を提供しておくことも有効でしょう。
休職判断後から休職期間中のケア
会社が労働者に対し「休職が必要」と判断した場合、休職者に対し休職から復職までの大まかな流れについて確認しておきましょう。確認する点は以下のとおりです。
- 休職期間について(主治医や産業医の診断書と就業規則における休職期間)
- 給与の支払いや社会保険料の支払いについて
- 休職期間中の経済的支援について(傷病手当金等の給付金)
- 休職中の連絡先・連絡方法について(頻度は休職者の病状に合わせて決定するが、月1回程度と最低限にする)
- 復職時に必要な書類について(主治医の職場復帰可能の診断書など)
また休職期間中、不安や悩みを抱えることもあるため相談先を紹介しておくこともできるでしょう。適度な距離を保ちつつ、適切な方法で連絡することが大切です。
復職を判断する流れ
休職していた労働者が復職を希望する場合に、会社側が復職を判断するまでの踏むべきステップを解説します。
本人の意思表示を知る
「単に病状が回復して通常の生活ができるようになったから仕事がしたい」「休職期間が終わってしまうから復職したい」という理由で職場復帰の判断をしてしまうのはリスクを伴います。
休職者の中には、容態がまだ十分に回復していないにもかかわらず、今後のことを心配するあまり早期復職を願い出ている場合もあります。
そのような状態で職場復帰すると、症状が悪化したり再発したりして再休職する可能性も……。
本人が職場復帰を望む場合、今まで行っていた業務を通常の時間、継続して行うことができるかという意思を確認することが重要です。
面談や文書で具体的に「できること」を確認する
休職者が以下に挙げられているような、具体的に「できること」の確認をしましょう。
<普段の生活リズム>
決まった時間に起床し規則正しい生活ができているか、適切な睡眠覚醒リズムが整っており昼間に眠気がないかを確認します。また通勤時間帯に一人で安全に通勤できるかも確認しましょう。
<現在の症状、通院状況、服薬状況>
会社関係の人など、誰とでもコミュニケーションが取れるか、どれぐらいのペースで通院しているか、決まった勤務日・時間に就労が継続して可能かを確認します。
<業務関連の準備、集中力、遂行能力>
会社側が就労可能なレベルにまで達しているかどうかの判断基準を決め、業務に必要な作業ができるか、業務遂行に必要な集中力・注意力が回復しているかなどを確認します。
また、会社の規模や職種によりますが、「短時間勤務や異動は可能か」「試し出勤制度等を取り入れるか」「上司や周りの支援がどこまでできるのか(期間や業務について)」など、よく会社内で話し合って決定するようにしましょう。
通常勤務に戻ったときに健康状態が悪くならないか主治医の判断をもらう
上記でも述べましたが、本人の早期復職の希望だけで復職させてしまうと病状が悪化し、再休職になる可能性もあり得ます。そのため復職を決定する上で、必ず医学的な問題がないと証明されていなければ復職はできないとしておきましょう。
主治医が業務内容を正確に把握することは難しいですが、前もって文書などで以前の業務内容を説明すれば、より具体的に想像でき判断もしやすくなるでしょう。
また、主治医の負担を少なくするために会社の職場復帰基準も文書で配布し、「主治医の意見書として就業制限が必要か」「復職して病状が悪化しないか」などをチェックして回答できるようにしておくことも有効です。
職場環境の状態を確認する
休職していた労働者が復帰するで気をつけるべき点は何か、事前に主治医や産業医の意見を確認し、その「配慮」が職場内でできる範囲であるかどうか検討しましょう。
「短時間勤務」や「交代勤務の制限」、「単純作業のみ可」など条件付きの復職の場合、同じ職場で働く他の労働者に過度の負担を強いらせたり不公平になってしまったりする可能性があります。
こうした不平等が生じないよう、各条件が職場で本当に対応できるのか、上司や同僚など一緒に働く労働者と話し合うことが大切です。どちらか一方だけに大きな負担がかかってしまうような復帰は避けましょう。
休職の判断基準を企業が明確にし休職者へのスムーズな対応を
休職者に対しても、企業はしっかりと対応しなければ安全配慮義務違反になってしまいます。
休職の判断基準を明確にしスムーズに行えるよう、産業医との連携や就業規則を確認しつつ対応していきましょう。
休職対応の全容については、以下の資料で詳しく解説しています。従業員が休職した際に、人事労務担当者が対応すべきこともご紹介していますので、ぜひご活用ください。