「休職」とは?適切な企業対応と給与・手当など復職までの流れを詳しく解説
「休職」を利用する労働者は年々増加傾向にありますが、法的な定めがないため対応に困る企業も多いのではないでしょうか。
休職の基準、休職中の給与・手当の規定、企業の適切な対応など、復職までに必要な情報をお伝えします。
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「休職」とは?|休業・欠勤との違い
「休職」とは、そもそもどのようなものでしょうか。「休業」や「欠勤」とどのように異なるのか、違いを確認しましょう。
「休職」とは
「休職」とは、労働者側の個人的事情により就労できない場合に、会社との労働契約を継続したまま労働が免除される期間のことです。休職に関する法律の定めは特になく、導入や内容は各企業に委ねられています。
ただし休職制度を導入している企業には、就業規則などに記載すること、労働者の雇用時にその旨を伝えることが義務付けられています(労働基準法第15条第1項、同法施行規則第5条第1項第11号、労働基準法第89条第1項第10号)。
休職には以下の8つの種類があります。
<休職の種類>
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これらの休職は個人的事情のため、労働者が期間中の賃金や勤続年数の算入などを企業に要求することはできません。
「休職」と「休業」の違い
「休業」とは、休職と異なり法的(労働基準法や育児・介護休業法など)に定められている休暇で、労働契約を継続したまま、労働者の個人的事情または会社の都合で休暇を取得することを指します。
終日に限らず、時間単位の休業も含まれます。
<自己都合による休業の種類>
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<会社都合による休業の種類>
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休業は法的に定められた制度であるため、労働災害であれば「休業補償給付(労災保険)」、個人的事情であっても「出産手当金(健康保険)」や「育児休業給付金(雇用保険)」「介護休業給付金(雇用保険)」など、各種手当の体制が整っています。
また会社都合の休業であれば、「休業手当」として平均賃金の100分の60以上の支払いが企業に義務付けられています(労働基準法第 26 条)。
休職と休業の違いについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
「休職」と「欠勤」の違い
「欠勤」とは、労働義務がある日に自己都合で休むことです。
欠勤は個人的事情であり、かつ労働義務も免除されないため、もちろん給与は発生しません。
休職制度のメリット|中小企業にこそ必要な理由
導入の法的義務がない休職制度ですが、導入する企業は多く、特に中小企業にこそ必要な制度だといえます。
企業が休職制度を導入するメリット・デメリットを確認し、導入の判断基準にしてください。
休職制度導入の5つのメリット
<休職制度導入のメリット>
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まず休職制度を導入することで、優秀な人材が就業不能になっても企業に留めることが可能です。
また、企業に休職制度が存在することで働く従業員の安心と企業への信頼は高まり、離職率の低下や企業全体の生産性の向上も期待できるでしょう。
さらに休職制度の導入は、「従業員を大切にしている企業」というイメージアップになります。新規採用の人材確保だけでなく、取引などの企業活動にも影響を及ぼすでしょう。
デリケートでありトラブルが起きやすい休職において、制度として明確な基準を構築しておくことは、トラブルが発生したときの指針としての役割も果たします。
復職する際に起こりやすいトラブルとその対策については以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
休職制度導入の2つのデメリット
<休職制度導入のデメリット>
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休職は復帰を前提としているため、休職者が発生しても新規労働者の雇用が難しく、他の従業員の負担が増加するパターンが多いです。
加えて退職とは異なり、休職は長期的かつデリケートな対応が必要であり、休職者対応にあたる人事担当者の労力も大きくなりがちです。
また、休職期間中も企業は休職者の社会保険料を支払う必要があり、小さな企業の場合、長引く休職は企業に負担となり得ます。
とはいえ、休職制度を導入しない場合、離職者の増加・新規雇用にかかる労力やコスト負担増などが想定されます。
多くのメリットが期待できるからこそ、休職制度の導入に踏み切る企業が増えてきています。
中小企業こそ休職制度の導入が必要
これらメリット・デメリットを考慮すると、中小企業にこそ休職制度の導入が必要でしょう。
従業員の数が少ない中小企業にとって、一人ひとりの人材が企業に大きな影響を及ぼします。
優秀な人材確保、採用の確保ができることで企業全体の生産性に直結します。一方で、反対にひとりの従業員のトラブルも中小企業にとって大きな打撃となります。
中小企業には、休職制度の基準をしっかりと設け、明確化しておくことをお勧めします。
休職者の収入|「給与」「傷病手当」について
従業員から休職の相談を受けた際に、従業員が特に心配しているのは休職中の収入である場合も多いです。
休職期間中の「給与」や「手当」について、企業が必要な対応を確認しておきましょう。
休職期間中の「給与」
休職は法律に定めのない制度です。企業に決められた義務はなく、導入や給与の有無についても企業の判断に委ねられています。
多くの企業では、休職者が「傷病手当」を受け取れることを前提に無給を採用しています。
休職期間中の「傷病手当」
休職者には、条件を満たせば休職期間中、健康保険から「傷病手当」が支給されます。要件や支給期間・金額は以下の通りです。
厚生労働省保険局「傷病手当金について」より引用
傷病手当金の支給額は「1日につき、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額」とされており、おおよそ給与の3分の2です。
傷病手当の手続きは基本的に企業側で行いますので、休職前に説明を行い、手続きを行いましょう。
補足:休職期間中の「社会保険料」
見落としがちですが、休職期間中の「社会保険料(健康保険・厚生年金)」についても確認が必要です。
従業員は休職期間中も「社会保険料」の支払い義務を免れることはできません。給与の支払いがないため企業は天引きできず、トラブルが起こりやすくなります。
以下の選択肢から事前に対応を取り決めておきましょう。
- 企業が立て替えておき、復職後にまとめて請求する
- 休職期間中、休職者が企業へ振込をする
- 傷病手当金の振込先を企業にしておき、手当金から天引きをして残りを従業員へ支給する
復職後の従業員の生活や、復職せずに退職した場合などを想定しながら従業員と相談して決めてください。
休職の判断|診断書・産業医の意見・就業規則が基準
労働者から休職の相談を受けた際、休職の許可や期間についての判断は、従業員の希望だけでなく、「診断書」「産業医の意見」「就業規則」など様々な角度からの検証が必要です。
休職の判断基準については、以下の記事で詳しく解説しています。
主治医の「診断書」
労働者から休職の相談を受けたら、まず「診断書」を受け取りましょう。本人からの申告だけでなく、病状を医学的な面から正確に把握することが必要です。
診断書の役割や、診断書と産業医の意見書との違いについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
「産業医」の意見
診断書は主治医の意見であり、日常生活が基準となっていることが多いです。そのため診断書だけで判断せず、実際の業務や職場環境を把握している「産業医」の意見を必ず仰ぎましょう。
職場環境を変えることで回避できる場合もありますし、反対に復帰部署を事前に変更して伝えておく必要があるかもしれません。
職場の実態と従業員の病状を照らし合わせて判断することが大切です。
休職の際の産業医の役割に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
「就業規則」による各社の休職制度
休職制度は各企業が定めるものであり、内容は企業によって異なります。
「診断書」と「産業医」の意見をもとに、「就業規則」で定められた対象の従業員・休職できる基準・休職期間などを確認し、最終判断を行いましょう。
もちろん最終目的は休職後に復帰して戦力となってもらうことですから、休職希望者の気持ちをしっかりと汲み、尊重してあげることも忘れないでください。
就業規則への休職制度の記載については、以下の記事で詳しく解説しています。
休職の手続き|企業が行うべき対応の流れ
休職が決まったら、休職者が安心して休めるよう、スムーズに手続きを行い休職を開始することが大切です。
<休職前>事前に行う情報提供と必要手続き
まず休職前に、必要な事務手続きや職場復帰の手順など、次のような項目について情報提供を行いましょう。
- 傷病手当金などの経済的な保障
- 休職中の社会保険や税金
- 復帰までのスケジュール・連絡先
- 不安・悩みの相談先
- 公的または民間の職場復帰支援サービス
- 休業の最長(保障)期間 など
ほとんどの休職者は、休職期間中はできる限り連絡を控えたいと思っています。可能な限り、休職が始まる前に適切な情報提供を行い、必要な手続きを済ませましょう。
また休職の最終目的は復職です。復帰への無理のないスケジュールを組んでいる点、休職者の気持ちを尊重する準備がある点を伝えることも非常に大切です。
「担当マニュアル別紙(独立行政法人労働者健康安全機構)」により詳しく書かれていますので、参考にしてください。
<休職中>休職者への連絡・対応
企業は主治医と相談した上で、体調に配慮しながら休職期間中も休職者と連絡を取るようにしてください。
体調や心境の変化、困っていることはないか、などのヒアリングを行います。
頻度は無理をせず、2週間、1か月など期間を区切って実施することを事前に取り決めておき、休職者の負担にならないように気を付けましょう。
対面や電話が難しいようであれば、メールなどでも問題ありません。
大切なのは、休職者を焦らせないこと。復職を目指すことが最終目的です。ゆっくりと丁寧に行いましょう。
休職中の連絡方法については以下の記事で詳しく解説しています。
<休職期間満了後>復職・退職対応
復帰については、休職開始時以上に慎重に判断する必要があります。
休職開始の判断と同様、主治医の意見(診断書)に加え産業医の意見を仰ぎ、労働者の復帰後の職務内容、職場環境などを考慮して判断しましょう。
復帰後のフォローアップができる体制を整えておくことも、企業の責務となります。
また復職せず、退職を希望される事例も多くあります。勤務日数や退職金などトラブルになりやすいので、対応できるよう事前に規則を把握しておきましょう。
復職する際の判断基準や、復職後の企業の対応については、以下の記事で詳しく解説しています。
休職者対応のカギ|就業規則や職場復帰支援プログラムなどの体制整備
休職者対応をスムーズに行い復職に繋げるために大切なことは、「就業規則の規定」や「復職支援のプログラム」などの事前の体制整備です。
「就業規則」への必要項目の記載
企業が休職制度を導入する際は就業規則への記載が義務とされていますが、形式的に記載するだけでは十分ではありません。
休職希望者が出た際のスムーズな対応のためにも、また復職できず退職する際のトラブル防止のためにも、就業規則には以下のような内容を漏れなく記載しておきましょう。
<就業規則に記載する休職規定>
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明確な規定があることで、休職する従業員、退職する従業員、対応する担当者の負担は大きく減り、企業を救うことに繋がります。
就業規則に盛り込みたい、休職期間や延長期間、有給休暇の取り扱いについては、以下の各記事で解説しています。ぜひご覧ください。
▼休職期間についての記事はこちら
▼ 休職の延長期間についての記事はこちら
▼ 休職と有給休暇の違いについてはこちら
「職場復帰支援プログラム」の策定
休職の中でも特に復職が難しいのは、心の病が原因の休職者です。休職の最終目的が復職であるにもかかわらず、心の病の場合、休職後の復帰ができず離職したり、復職したものの再び休職する事例が多くなります。
そこでおすすめしたいのが、厚生労働省が推奨している「職場復帰支援プログラム」の策定です。
「復職支援プログラム」とは、心の健康問題で休業している労働者が円滑に職場復帰するために、休業から復職までの流れを明確化した計画書のことです。
復職支援のための複数の担当者を事前に決めておき、休職対応をチームで行います。
休職者ごとに専用のプランも作成し、段階的な職場復帰を目指します。
復帰までの道筋が見える化しており、休職する側も、対応する側も安心して同じ方向を向いて取り組むことができ、離職や再休職を防ぐ効果があります。
復職支援プログラムについては、以下の記事で詳しく解説しています。
休職者への対応に関しては、以下の記事で網羅的に解説していますのでぜひご覧ください。
休職者を出さないために|「健康経営」の取り組みを!
休職制度は大切な従業員を守るために必要な制度です。確立した制度を企業内で定め、復職に繋げましょう。有力な人材を守ることは、企業の発展に繋がります。
とはいえ、休職者が発生しないのが一番です。昨今増えているメンタルヘルス(心の病)による休職者を出さないためにも、企業には「健康経営」(従業員の健康を本人任せではなく、経営的な視点で捉え戦略的に管理する取り組み)の必要性が増大しています。
休職対応の全容については、以下の資料で詳しく解説しています。従業員が休職した際に、人事労務担当者が対応すべきこともご紹介していますので、ぜひご活用ください。
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