「休職」と「有給休暇」の使い分け!休職者への対応ポイントを解説
重度の病気やケガだけでなくメンタルヘルスの不調などもあり、企業が「休職」対応をする機会は増えています。
休職者の対応にあたり、疑問となるのが「有給休暇」との使い分けでしょう。
この記事では「休職」と「有給休暇」の違いを確認し、休職者への対応ポイントを解説します。
目次[非表示]
休職と有給休暇に関するよくある質問について、以下の資料ではQ&A形式でご紹介しています。資料は無料でダウンロードができますので、ぜひお役立てください。
>>>資料ダウンロード(無料)はこちら:休職トラブル防止のために伝えるべきこと
「休職」と「有給休暇」の違い
まず「休職」と「有給休暇」の違いを確認しましょう。
休職とは
「休職」とは、業務外でのケガや病気などで長期の治療が必要であり、その間労働が困難な従業員に対し、労働が免除される期間のことです(業務中のケガや病気の場合は「労災認定休職」となり、規定が異なります)。
休職に関する法律の定めは特になく、各企業の判断に委ねられている制度ですが、以下図より多くの事業所で対応されていることがわかります。
引用:厚生労働省働き方・休み方ポータルサイト「病気療養のための休暇」
休職の期間や条件は企業の就業規則によって異なりますが、長期の療養を考慮し、数か月以上の休暇を認める企業が多いです。
休職中の有給・無給(給与の支払いの有無)も企業次第ですが、休職中は「傷病手当」を受け取れるため、多くの企業では無給を採用しています。
有給休暇とは
「有給休暇」は「休職」と異なり、労働基準法第39条で事業場に義務付けられている制度です。所定の休日以外で、賃金の支払いを受けて仕事を休める日のことを「有給休暇」といいます。
利用目的は問われないため私用で休むことができ、休暇日も自由に申請できます(ただし会社の正常な運営を妨げるときに限って、別の時期に休暇日を変更させることができる)。
付与される休暇日数は、勤務時間や日数に応じて法で決められており、最長でも年20日です。
休職と有給休暇は従業員の収入に差が出る
従業員にとって休職と有給休暇では、収入に違いが出ます。
有給休暇を利用した場合は通常の「給与」が受け取れるのに対し、休職期間中はほとんどの企業では無給であり、休職者の生活は健康保険の「傷病手当」が支えとなる場合が多いです。
傷病手当の支給額は「1日につき、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額」とされており、おおよそ給与の3分の2となります。
給与と傷病手当、休職する従業員にとっては、大きな差と感じるでしょう。
休職中に有給休暇は消化できる?
休職と有給休暇の内容から、長期の療養の場合は基本的には「休職」扱いにするべきです。
しかし休職者には、収入面から有給休暇を利用するメリットがあります。
では、休職中に有給休暇は消化できるのでしょうか?
休職「中」は有給休暇を消化できない
長期の療養が必要であり、すでに休職期間に入っている従業員は、有給休暇を消化することはできません。
有給休暇は「労働義務がある日を対象に、その労働を免除する制度」であるため、「労働の義務を免除されている期間」である休職期間中は利用できないのです(以下参照)。
長期休職中の場合の年次有給休暇 休職発令により労働義務が免除されている場合は、年次有給休暇を請求する余地がなく、年次有給 休暇の請求権は行使できない(ただし、休職発令によらず、傷病での長期療養中の場合は、年次有給 休暇を労働者が病気欠勤等に充当することは許されている)【昭 24.12.28 基発 1456 号、昭 31.2.13 基 収489 号】
(大阪府「休職と休業」より引用)
つまり、休職後に復帰が困難と判明して退職が決まった場合も、残った有給休暇の消化はできないのです。
休職期間満了後に有給休暇を消化して辞めたいという申し出は多くありますが、退職が決まった以上「労働義務がある日」が存在しないため、有給休暇は消化できません。
休職「前」であれば有給休暇を消化できる
休職期間中は有給休暇の消化はできませんが、休暇期間に入る前であれば、有給休暇の消化は可能です。休職期間に入る前は「労働義務がある日」に該当し、有給休暇の利用ができるのです。
ただし「休職」の規定は各企業によって異なるため、活用できないルールになっている可能性もあります。規定に合わせて対応しましょう。
有給休暇の利用は休職者が決めること
ここで大切なことは、有給休暇の利用は休職者が決めることであり、企業が指定することはできないということです。
企業は従業員に有給休暇の消化を促す義務はありますが、「どこで使うか」については従業員の自由とされています。
休職前に有給休暇を消化すると、収入が確保できたり、休職期間の終わりを伸ばすことができたりとメリットがありますが、復職後の通院などのために残す必要があるかもしれません。
企業はそういった情報提供を休職者に行うだけに止め、最終判断は休職者に委ねましょう。
休職中も有給休暇は付与されるのか?
では次に、休職期間中に「有給休暇の付与日」が到来したときの話です。休職している従業員にも有給休暇は付与されるのでしょうか?
新たな付与の有無により、休職前に有給休暇を使い切るなどの判断をする場合もあるでしょうから、事前の確認と休職者への説明が必要です。
休職期間中でも要件を満たせば付与される
まず休職期間中でも、年に1度の「有給休暇が付与される日」は変わりません。有給休暇の付与日は入社日から起算されており、出勤の有無は関係ないとされています。
付与日の時点で以下2つの要件を満たしていれば、休職期間中の労働者にも有給休暇が付与されます。
- 雇入れの日から6ヶ月継続勤務
- 全労働日の8割以上出勤
付与日の前1年間のうち、休職期間を除いて8割以上の出勤があれば、勤続年数などの条件に合わせて有給休暇が付与されます。
反対に、休職することにより出勤率が8割に満たなければ、その年の有給休暇の付与は「0日」となります。
勤怠管理、人事・労務管理、経費、サイン、ワークフローなどをリアルタイムで管理できるクラウド型人事労務システムのジンジャー(jinjer)がおすすめ
休職対応3つのポイント!
次に、休職希望者の対応ポイントを3つお伝えします。大切なのは「適切な情報提供」と「休職者の意思を尊重すること」です。
ポイント①休職・有給休暇については就業規則に明記
有給休暇はもちろんですが、導入に法的義務がない「休職制度」でも、制度を作る場合は、就業規則や労働協約などで定めなければならないとされています(労働基準法第89条第1項第10号)。
加えて雇用契約を結ぶ際に明示することも決められています(労働基準法第15条第1項、同法施行規則第5条第1項第11号)。
休職制度を設けている場合は、以下モデルなどを参考に必ず就業規則に明記を行いましょう。
(厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則」より引用)
加えて、就業規則内の「有給休暇」の項目には、休職期間を含めた付与基準を記載しておくことをおすすめします。
休職制度・有給休暇いずれも就業規則に明確に記載することは、休職者へのスムーズな対応とトラブル防止に繋がります。
ポイント②傷病手当の説明と申請は事前に
休職の相談を受けた時点で「傷病手当」の説明を行うことが大切です。
傷病手当の金額や条件が、休職前の有給休暇消化の判断基準になる可能性があるためです。
また傷病手当の申請は、基本的には企業が行うため、従業員が休職に入る前に手続きを行いましょう。
ポイント③休職前に社会保険料の徴収対応を
傷病手当と同時に、休職者へ「社会保険料」の説明も行いましょう。
休職中でも従業員は社会保険料の支払いを免れることはできません。休職者はそれを踏まえた収入の検討が必要であり、休職前の有給休暇消化の判断に関わる可能性が出てきます。
加えて企業側は、社会保険料の徴収方法を事前に決めておく必要があります。
休職期間中は無給な場合が多く給与天引きでの徴収ができません。
一時的に立替で対応し、復職後に請求することもできますが、復職後の従業員の生活を圧迫する可能性があります。
また復職せずに退職して、請求できないというケースも多く見受けられます。
振込対応にするか、または傷病手当を企業経由にして天引き対応するか、休職前に確認を行いましょう。
休職が必要な従業員には適切な情報提供を!有給休暇は本人の希望に応じて対応を
休職と有給休暇の違いに加え、休職者の対応について解説しました。
休職対応で一番大切なのは「適切な情報提供」です。
傷病手当や社会保険料などの適切な情報提供を行ったうえで、休職前に有給休暇を消化するかどうか、休職者の判断に委ねましょう。休職が始まってしまうと、有給休暇の消化はできなくなります。
休職を希望する従業員は体調がすぐれない状態であり、なるべくスムーズな対応が必要とされます。
円滑に対応できるよう、体制を整えておくことがおすすめです。
休職と有給休暇に関するよくある質問について、以下の資料ではQ&A形式でご紹介しています。資料は無料でダウンロードができますので、ぜひお役立てください。
>>>資料ダウンロード(無料)はこちら:休職トラブル防止のために伝えるべきこと
medimentは、クラウド型の健康管理システムです。medimentなら導入の際もカスタマーサクセスによる伴走支援が手厚く、スムーズにシステムの移行をおこなえます。
以下からサービス資料が無料でダウンロードできますので、ぜひご覧ください。