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復職時に診断書は必要? 様式例や例文・意見書との違い・判断時の注意点などを解説


復職に関する法令はないため、復職診断書の提出が必要か不要かは、就業規則に定める必要があります。
本記事では、復職診断書の例文・診断書と意見書の違い・復職可否の判断基準など、ルール策定時に人事労務担当者が迷いやすいポイントについて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.休職や復職に関する制度規定は会社ごとに異なる
  2. 2.復職するにあたって診断書の提出は必要? 不要? 会社ルールを明確に
  3. 3.「主治医の診断書」と「産業医の意見書」の違い
  4. 4.休職者を復職させる際の注意点
  5. 5.復職までの全体の流れ
  6. 6.復職可否の判断基準
  7. 7.復職診断書の提出も含めて職場復帰の基準や流れを就業規則に定めよう


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休職や復職に関する制度規定は会社ごとに異なる

うつ病をはじめ、業務外で被った負傷、疾病、障害などを理由に「傷病休職」する労働者が増えています。

しかし、休職の定義や休職期間の制限などについては労基法に定めがないため、休職制度自体がない会社も少なくありません。


それと同様に、復職について細かく整備していない会社も多いです。

休職時の就労条件、休職中のフォローアップ、復職の流れや可否基準などは、会社ごとにあらかじめ整備・ルール化し、就業規則や労働協約に定めておく必要があります。

休職制度や復職制度を策定したら、労働者および管理監督者(上司など労働者を指揮命令する人)に周知しましょう。


休職の基準や休職中に企業が対応すべきことについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。ぜひご一読ください。

  「休職」とは?適切な企業対応と給与・手当など復職までの流れを詳しく解説 「休職」を利用する労働者は年々増加傾向にありますが、法的定めがないため対応に困る企業も多いのではないでしょうか。 休職の基準、休職中の給与・手当の規定、企業の適切な対応など、復職までに必要な情報をお伝えします。 mediment(メディメント)


復職するにあたって診断書の提出は必要? 不要? 会社ルールを明確に

診断書の提出は、就業規則など会社ごとの定めに従うことが原則です。

厚生労働省の「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(以下、手引き)」では、復職可能という主治医の判断が記された診断書を労働者に提出してもらうことを推奨しています。


注意:「主治医の診断書」は業務遂行能力の回復判断とは限らない

主治医による職場復帰の判断は、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限りません。

主治医による診断書の多くは、日常生活における病状の回復具合によって復職の可否を判断しており、さらには労働者の「早めに復職したい」という希望が含まれていることも考えられます。

復職の可否については、さまざまな視点から評価を行い総合的に判断することが大切です。診断書の内容が不十分な場合、産業医などが「情報提供依頼書(※)」を用いて復職に必要な情報・意見を主治医から収集する必要があります。

(※)厚生労働省の手引き24ページに掲載されている「職場復帰支援に関する情報提供依頼書【様式例1】」参照


復職診断書の内容は会社ごとにフォーマットを用意すると良い

産業医を設置していない会社も少なくないため、復職診断書については、あらかじめ会社で準備した書面(一般的な書式に具体的な就業上の配慮についての記載を追加したもの)を用いると良いでしょう。

以下は、フォーマットの一例です。

	【リライト】復職診断書

引用:業医学振興財団「職場復帰支援マニュアル」


職場で必要とされる業務遂行能力に関する内容を明文化し、労働者が業務を遂行できる状態まで回復していることを主治医の意見として提出してもらうようにしてください。

ただし診断書の内容を決める際は、プライバシーへの配慮について十分な議論を行う必要があります。

また主治医へ支払う文書作成料について、会社側・労働者側のどちらが費用を負担するのか、あらかじめ決めておくと良いでしょう。


復職診断書の内容に困ったら? 参考となる例文を4つご紹介

復職診断書に記載する内容に困ったら、以下の例文を参考にしてください。


上記の例文を参考に、より会社(事業場)の実態に即したものを作成するのが望ましいです。


「主治医の診断書」と「産業医の意見書」の違い

診断書と意見書の役割の違いを解説する前に、まず産業医と主治医の違いについて説明します。


産業医と主治医の違い

	復職 診断書 画像1

画像出典元:労働者健康安全機構「中小企業事業者の為に産業医ができること」


産業医と主治医(臨床医)の違いは以下のとおりです。


産業医      
  • 医師免許と、産業保健や労働衛生に関する専門的知識をもつ。
  • 職場巡視や衛生委員会への参加も職務の一環。
  • 面談などを通じて労働者の病状を把握し、事業場で働けるかどうかを専門的立場から指導・助言する。
  • 疾病の診断や治療は行わない。
  • 事業主への勧告権がある。

主治医

(臨床医)

  • 医師免許を持つ。
  • 患者と直接接して診察や治療を行う。
  • 診断書を作成する。
  • 事業主への勧告権はない。


産業医と主治医の違いを含め、産業医の選任義務や役割、業務内容などについてより詳しく知りたい方はこちらをご一読ください。

>>>産業医についての記事はこちら

  産業医とは? 選任義務・役割や業務内容・探し方などを簡単に解説! 安衛法第13条に基づき、常時50人以上の労働者を雇う場合は産業医の選任が義務づけられています。 産業医の設置を初めて実施する人事労務担当者に向け、産業医の選任条件や役割、業務内容、探し方と契約方法、費用相場などをわかりやすく解説します。 mediment(メディメント)


主治医の診断書と産業医の意見書の違い

「産業医意見書」は、主治医の診断書および復職希望者との面談結果を踏まえて作成されます。

主治医の診断書と産業医の意見書の違いは以下のとおりです。


主治医の

診断書    

日常生活における症状の回復程度によって復職の可能性を判断したもの。

産業医の

意見書

労働者の症状および業務遂行能力の回復程度、実際の職場環境を踏まえて復職の可否を総合的に判断したもの。

また、就業に関する最終的な措置などをとりまとめたもの。


復職における意見書のフォーマットは、厚生労働省 手引き「職場復帰に関する意見書【様式例3】(25ページ記載)」を参考にしてください。


主治医の診断書と産業医の意見書とで判断・意見が分かれたら?

労働者の休職・復職に際し、主治医と産業医とで判断・意見が分かれる場合があります。

産業医と主治医は同じ医師という立場ではありますが、見解が分かれた際は労働者の健康管理に対して事業主への勧告権をもつ「産業医」の意見を尊重するのが基本です。(安衛法第13条)

ただし労働者の休職に至った原因が、産業医の専門外である病気の場合には、主治医の診断書・意見に重きをおくケースもあります。


休職者を復職させる際の注意点

休職していた労働者を復職させる際は、元の慣れた職場へ復帰させることが原則ですが、配置転換や異動をしたほうが良い場合もあるため留意しましょう。

そのほか、復職時における注意点を解説します。


復職の決定権は主治医や産業医ではなく「事業者」にある

主治医の診断書は専門家の意見として重視すべきですが、業務内容や職場環境を熟知しているのは会社側です。

職場復帰可能という主治医の診断書があったとしても、社内ルールや業務の具体的内容などを考慮した上で、事業主が「復帰は時期尚早」と判定することもできます。

診断書と異なる判断を会社がした場合は、その合理的な理由を労働者本人に説明しましょう。

また主治医の判断に納得がいかない場合は、セカンドオピニオンとして会社が指定する医師の診断を労働者に受けさせることも可能です。


傷病休職の休職期間・期間満了時の対応について

業務外の傷病による長期欠勤が一定期間(3か月~6か月)に及んだ際に「傷病休職」の扱いとなるのが一般的です。

休職期間は就業規則などに定めることが必要ですが、勤続年数や傷病の種類に応じて区分を設ける会社もあります。

会社が定めた期間中に傷病から治癒し就労可能となれば休職は終了し、復職となります。

しかし治癒せず期間満了になった場合、自然(自動)退職または解雇の運びとなるのが一般的です。


試し出勤制度を設けて復職の可否判断に加味する

正式な職場復帰決定の前に、「試し出勤制度」を導入している会社もあります。

試し出勤制度を設けることで、休職者の状況を実際に確認しながら復職の可否を決めることが可能です。

<試し出勤制度の例>

  • 模擬出勤:通勤時間と同じ時間帯にデイケアや図書館などで時間を過ごす
  • 通勤訓練:実際の通勤経路で勤務職場近くまで移動し、一定時間過ごしてから帰宅する
  • 試し出勤:本来の職場に一定期間継続して出勤する

賃金支払いや労災の取り扱いなど、試し出勤中の就業規則を十分に検討し、会社でルールを定めてから実施するようにしましょう。


復職までの全体の流れ

復職診断書について理解が深まったところで、「復職までの流れ」を最終確認しましょう。


  1. 主治医による復職可の診断書を提出してもらう (業務遂行能力の回復レベルも合わせて記載してもらうと良い)
  2. 復職希望者と産業医とが面談をする
  3. 職場内の産業保健スタッフなどを中心に復職可否を判断する
  4. 職場復帰までの支援プランを作成する (職場復帰日や業務内容、治療上必要な就業制限、フォローアップの時期などを明文化)
  5. 復職に対する労働者の意思確認を行う
  6. 就業可否、就業上の配慮に関する「産業医の意見書」を作成する
  7. 事業者が最終的に復職可否を決定する


2や3において、産業医や産業保健スタッフを配置していない場合は、人事労務担当者や管理監督者などがその役割を担います。

また6においても「産業医の意見書」がない場合は、主治医の診断書および休職者との面談結果を参考にしてください。


復職可否の判断基準

復職可否については、個々のケースに応じて総合的な判断が必要です。判断基準については、以下を参考にしてください。

<復職可否の判断基準例>

  • 労働者が十分な意欲を示している
  • 通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
  • 就業規則に定められている勤務日・就労時間に、会社にいられるだけの精神的・身体的な力が回復している
  • パソコン作業など、業務に必要な作業が数時間継続してできる(注意力・集中力が回復している)
  • 作業による疲労が翌日までに十分回復する、昼間に眠気がない
  • 起床・就寝時間、食事の摂取、日中の活動などの生活リズムが整っており、それがある程度の期間維持されている

復職前に行う休職者との面談では、本人の症状や状況、生活習慣などを必ずチェックしましょう。


復職診断書の提出も含めて職場復帰の基準や流れを就業規則に定めよう

休職や復職については、その定義や期間の制限、診断書の提出義務などを定めた法令がありません。

そのため、休職時の労働条件や休職中のフォローアップ、復職の流れや可否基準などを会社ごとにあらかじめ整備・ルール化し、就業規則に定めておく必要があります。

また就業規則の整備はもちろんのこと、労働者が休職しないようストレスチェックや健康診断の実施、その事後措置の徹底も重要な業務です。



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監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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