【労務担当者向け】介護による休職制度とは?介護休暇・介護休業の取得条件を解説
介護による休職には「介護休暇」と「介護休業」の大きく2種類が存在します。それぞれ特徴が異なるため、従業員から申請があった場合に備え、取得条件や概要について把握しておくことが重要です。
本記事では介護による休職について、種類や休暇を得るための条件、企業側が気をつけたいポイントまで詳しく解説します。
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介護による休職には、介護休暇と介護休業がある
冒頭でも紹介したとおり、介護による休職には「介護休暇」と「介護休業」の2種類があります。まずは、2つの制度の違いについて紹介します。
介護休暇と介護休業の違い
介護休暇と介護休業はどちらも、要介護状態の家族を介護するために休みを取得できる制度のことです。「名前が似ているため大きな違いはないのでは」と感じるかもしれませんが、取得条件や手続きの方法、取得日数などさまざまな面で違いがあります。
以下の表は、介護休暇と介護休業の主な項目についてまとめたものです。
介護休暇 |
介護休業 |
|
概要 |
労働者が要介護状態(※1)にある対象家族の介護や世話をするための休暇 |
労働者が要介護状態(※1)にある対象家族を介護するための休業 |
対象となる労働者 |
対象家族を介護する男女の労働者(日々雇用を除く) ※入社6カ月以下の労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は対象外 |
対象家族を介護する男女の労働者(日々雇用を除く) ※労使協定を締結している場合は、入社1年未満の労働者・申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は対象外 |
対象となる家族 |
配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫 |
配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫 |
取得できる日数 |
対象家族が1人の場合は年5日まで、対象家族が2人以上の場合は、年10日まで ※2022年1月1日からは、1日または時間単位での取得が可能 |
対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業可能 |
申請手続き |
書面と口頭のどちらでも可 |
休業開始予定日の2週間前までに、書面などにより事業主に申出が必要 |
経済的支援 |
なし |
一定の要件を満たす場合は、休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給される |
※1:負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
全体として似ている部分も多いものの、取得できる日数や手続き方法などが異なります。また、経済的支援の有無にも違いが存在します。
では、介護休暇と介護休業は、どのように使い分けるものなのでしょうか。次項からは、それぞれの特徴や、取得が適しているケースについて詳しく解説します。
介護休暇とは
介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護や世話をするための休暇のことです。ここからは、介護休暇についてご紹介します。
介護休暇の特徴
介護休暇の特徴は、取得できる休みの期間が短いことです。
取得できる休暇の日数は、対象家族が1人の場合は年5日まで、対象家族が2人以上の場合は、年10日までと定められています。また、2022年1月1日からは、1日単位だけでなく、時間単位での取得が可能となっています。
介護休暇の取得可能日数 | |
対象家族が1人 |
年5日まで |
対象家族が2人以上 |
年10日まで |
そのため、家族の体調不良などの突発的な出来事への対応や、通院などの単発的な介護のために休みを取得したい場合に向いているといえます。
介護休暇の取得が適しているケース
介護休暇の取得が適しているケースについて、より具体的に見ていきましょう。繰り返しにはなりますが、介護休暇は取得できる日数が少ないため、比較的短い時間で終わる作業のための取得が適しています。
- ケアマネジャーとの面談
- 通院の付き添いや送迎
- 市役所など各種保険などの手続き
- 介護者の体調不良や急なアクシデントの対応
などの場合は、介護休暇が向いているでしょう。
もし、より長い休みを取得した場合は、次項で紹介する介護休業を取得するか、介護休暇と有給休暇を組み合わせることが効果的です。
介護休業とは
介護休業とは、要介護状態にある対象家族を介護するための休業のことです。ここからは、介護休業についてご紹介します。
介護休業の特徴
介護休業の特徴は、取得できる休みの期間が長いことです。対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業可能と定められています。そのため、分散して取得したり、一気に取得したりと、自由に組み合わせることも可能です。
介護休業の取得例 |
|
介護休業の申請には法定様式はありません。社内で規定されている書面がある場合は社内様式を利用し、ない場合は厚労省が掲載している社内様式例をご活用ください。
介護休業の取得が適しているケース
介護休業の取得が適しているケースは、長期的な介護や手伝いが必要な場合です。老人ホームの入居準備など、ある程度の期間が必要な介護のために取得することが適しています。
- 老人ホームの入居準備をする
- 遠方に暮らしている家族の介護をする
- 病状が悪く見取りが近いため、付きっきりで介護をする
などの場合は、介護休業が向いているでしょう。
従業員から介護休暇や介護休業の申請があった際の注意点5つ
介護休暇や介護休業は法律で定められた権利のため、ある日突然、従業員から申請があるかもしれません。最後に、介護休暇や介護休業の申請があった際に知っておきたい注意点を紹介します。
1.従業員に制度のメリットやデメリットを伝える
1つ目の注意点は、従業員にそれぞれの制度のメリットやデメリットを伝えることです。
さまざまな項目のなかでも特に確認が必要なのは、経済的支援の有無についてです。介護休業の場合は雇用保険からの給付金を受給できるものの、介護休暇の場合は各種給付金などを受給することはできません。
介護休暇 |
介護休業 |
|
経済的支援 |
なし |
一定の要件を満たす場合は、休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給される |
また、介護による休職中に給料が支給されるかどうかは、各企業の規定によって変化します。それぞれの条件を事前に確認したうえで、従業員にメリットやデメリットについてしっかりと伝えることが重要です。
2.介護による休職中は社会保険料・住民税が免除されない
2つ目の注意点は、介護による休職中であっても、社会保険料や住民税の支払いは免除されないことです。
介護による休職には社会保険料の免除制度がないため、たとえ会社から給料が支給されていなくても、健康保険料や厚生年金を支払う必要があります。また、住民税も支払いの対象となります。
ここで気をつけたいポイントは、休職中の給料を支給しない場合は、給料から社会保険料を天引きできないことです。そのため、復職後の給料からまとめて徴収したり、従業員に毎月振り込みを依頼したりするなどの対応が求められます。
3.介護休暇や休業を理由とした不利益な扱いをおこなわない
3つ目の注意点は、介護による休職を理由とした不利益な扱いをおこなわないことです。労働者が介護休暇や介護休業を取得したことにより、降格、減給などの不利益となる取り扱いをすることは禁じられています。
また、休む頻度が多いなどの理由で、退職を強要したり、正社員から非正規雇用への変更を強要したりすることも、育児・介護休業法により禁止されています。介護休暇や介護休業は法律で認められた権利のため、申請があった際には適切な対応を心がけましょう。
育児・介護休業法については、以下の記事で詳しく解説しています
4.医師の診断書の提出を義務付けない
4つ目の注意点は、従業員に医師の診断書の提出を義務付けないことです。従業員から介護休暇や介護休業の申し出を受けた場合、会社は対象家族が要介護状態などにあることを証明する書類の提出を求めることができます。
しかし、この書類は医師の診断書に限定されていないため、診断書がないとの理由により、介護休暇や介護休業の申請を拒否することはできません。人事労務担当者は、労働者が提出できる書類にて判断することが重要です。
5.別の会社で介護による休業をしたことがあっても、以前の休職日数はカウントしない
5つ目の注意点は、過去に別の会社で介護休業をしたことがある場合でも、以前の休職日数はカウントしないことです。
「別の会社ですでに休業していた場合、以前の休業の取得日数はどのように数えるのだろう」と感じる人事労務担当者は多いかもしれません。しかし、他の事業主の下で休業をしたことがある場合でも、現在の勤務先での介護休業取得日数には算入されません。
中途入社の従業員から申請があった際も、以前の休業日数を調べる必要はないため、新規申請者と同様に扱いましょう。
従業員から介護の休職申請があった際は、事情に応じた対応を
介護の休職申請には介護休暇と介護休業があり、それぞれ取得日数や経済的支援の有無などの条件が異なります。従業員から申請があった際は、各制度の特徴を説明したうえで、最も適した制度を活用して休職できるよう案内することが重要です。
また家族の介護をしている従業員は、転院の手続きや体調不良時の看病など、突発的な休みが必要になるケースも多く存在します。従業員の状況を理解したうえで、事情に応じた対応をおこなうようにしましょう。
休職対応の全容については、以下の資料で詳しく解説しています。従業員が休職した際に人事労務担当者が対応すべきこともご紹介していますので、ぜひご活用ください。