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ポピュレーションアプローチとは?メリットや導入ステップ、取り組み事例まで詳しく解説

ポピュレーションアプローチとは、集団全体に働きかけることにより、健康リスクを低下させる取り組みのことです。この記事では、ポピュレーションアプローチの概要やメリット、似た言葉であるハイリスクアプローチとの違いや、導入ステップまで詳しく解説します。


目次[非表示]

  1. 1.ポピュレーションアプローチとは
  2. 2.ポピュレーションアプローチのメリット2つ
  3. 3.ポピュレーションアプローチのデメリット
  4. 4.ハイリスクアプローチとは
  5. 5.ポピュレーションアプローチの導入ステップ
  6. 6.ポピュレーションアプローチの具体例
  7. 7.社員の健康意識上昇のためにポピュレーションアプローチを実施しましょう


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ポピュレーションアプローチとは

「最近ポピュレーションアプローチについて耳にするようになったけれど、具体的にはどのようなものなのだろう」と感じている方も多いかもしれません。
ポピュレーションアプローチとは、集団全体に働きかけることで、全体の健康リスクを低下させ、良い方向へシフトさせる取り組みのことです。

健康状態にかかわらず、全員に同様のアプローチを実施することで、従業員の健康維持や、健康意識の底上げなどが期待できます。
近年は、健康経営の実現に向けた取り組みの一環としても注目されており、具体的な取り組みの内容としては、以下のようなものが挙げられます。


【ポピュレーションアプローチの具体例】

  • ストレスケアや健康増進に関するセミナーの開催
  • ウォーキングやヨガなどのイベントの開催
  • スポーツジムの利用費補助
  • 社員食堂での健康に配慮した食事提供
  • ノー残業デーの導入


ポピュレーションアプローチが注目されている背景

現在ポピュレーションアプローチが注目されている背景には、働き方改革の推進や健康経営の浸透により、従業員の健康管理の重要性が認識されつつあることが挙げられます。
特に近年は、健康経営に注力する企業が増加傾向にあります。

2023年に実施された健康経営調査及び健康経営優良法人(大規模法人部門)の結果によれば、2023年度における認定数は2,988件にものぼり、2020年度と比べると約1.6倍増加しています。

26_ポピュレーションアプローチ②.png

出典:健康経営の推進について|経済産業省


一方、中小規模法人部門においても、2023年度における認定数は16,733件で、2020年度と比較すると約2倍増加しています。

26_ポピュレーションアプローチ①.png

出典:健康経営の推進について|経済産業省


健康経営優良法人については以下の記事をご覧ください。

  【保存版】健康経営優良法人とは?メリット・認定基準・2024年最新動向まとめ 「健康経営優良法人制度(「健康経営」を実施している企業を評価する制度)」の概要と、認定によって得られる企業のメリットについて解説します。 また、年度によって変更されることもある認定基準や申請手順などについて、最新情報を含めて確認します。 mediment(メディメント)


企業が健康経営を推進する理由には、

  • 求職者が転職先を選ぶ際に、健康経営の実施の有無を確認している
  • 企業の取り組みに注目して投資する「ESG投資」に注目が集まっている

などが挙げられます。
ポピュレーションアプローチは、ただ単に従業員の健康維持・増進が可能になるだけでなく、経営面においても多くの効果が期待できる取り組みといえるでしょう。


ポピュレーションアプローチのメリット2つ

次に、ポピュレーションアプローチの主な2つのメリットを紹介します。


1.従業員の健康意識の向上につながる

ポピュレーションアプローチを実施すると、従業員が自身の健康について考える機会が増えるため、健康意識の向上が期待できます。
たとえば、今まで特に健康について意識していなかった従業員でも、

  • 生活習慣に関するイベントへの参加をきっかけに食生活を見直す
  • スポーツジムの補助が出たことをきっかけに運動を始める

など、健康意識に変化が生じる可能性があります。
元々健康管理に対するモチベーションが高い従業員はもちろん、あまり健康に気を遣っていなかった従業員にもアプローチできるため、結果として会社全体の健康意識の向上につながります。


2.生産性が向上する

生産性の向上も、ポピュレーションアプローチを実施するメリットの一つです。
ポピュレーションアプローチにより従業員の健康意識が向上すると、生活習慣の見直しにより健康的な生活を送るようになり、従業員のコンディションの改善が期待できます。

たとえば、毎日就寝時間が遅かった従業員が、社内で生活リズムを整える重要性についてのセミナーを受講したことで、早寝早起きを心がけ、以前より前向きに仕事に取り組めるようになるといった効果が生まれます。

心身の不調を抱えたまま業務に取り組むと、業務の効率が悪くなってしまうかもしれません。
ポピュレーションアプローチによって従業員の健康状態が改善すれば、仕事に対するやる気が高まり、結果として生産性の向上が期待できるでしょう。


ポピュレーションアプローチのデメリット

一方でポピュレーションアプローチには、以下のようなデメリットも存在します。

  • 個人に対する効果が低い
  • 社内の健康格差が拡大する可能性がある

繰り返しにはなりますが、ポピュレーションアプローチは従業員全体に対する働きかけです。そのため、健康リスクが著しく高い従業員に対しては、効果を発揮しない可能性も高いといえます。
たとえば、メタボリックシンドロームや高血糖など、すでに健康リスクが高い従業員が複数在籍しているとします。この場合、健康リスクがあまり高くない人向けのセミナーを受講しても、健康状態の改善を期待することは難しいでしょう。


また、ポピュレーションアプローチを実施しても、健康意識が元々高い人と低い人の間でギャップが生まれてしまうリスクも存在します。
もちろん、健康関連のイベント参加などをきっかけに意識が向上するケースも多いものの、元々高い人はさらに高くなる一方で、低い人はそのままとなり、結果として健康格差が拡大してしまうのです。

なお、上記のようなデメリットの解消については、ハイリスクアプローチの実施が効果的です。ハイリスクアプローチについては、次項にて詳しく解説します。


ハイリスクアプローチとは

ハイリスクアプローチとは、健康リスクが高い人を対象とした取り組みのことです。集団全体に働きかけるポピュレーションアプローチとは反対に、リスクが高い人のみに働きかけます。
具体的には、

  • 健康リスクが高まりやすい一定年齢以上を対象とした成人病検診を実施する
  • メタボリックシンドロームなど、健康リスクが高い人のみ保健指導をおこなう

などが挙げられます。

ハイリスクアプローチの最大の特徴は、個人への高い効果が望めることです。ハイリスクアプローチは対象者を絞って実施されるため、ポピュレーションアプローチでは難しかった、健康リスクが著しく高い人の健康状態の改善も期待できます。
一方で、従業員全体への効果が少ない点はデメリットといえるでしょう。


ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチは、どちらを実施すべき?

では、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチは、どちらを実施すべきなのでしょうか。
結論から言えば、両方に取り組むことが重要です。「ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチのどちらに取り組めば良いのだろう?」と悩むのではなく、社内の状況に合わせて、併用することがポイントです。

具体的には、以下のように複数の施策を組み合わせると効果を発揮しやすくなります。


ポピュレーションアプローチ

ウォーキングやヨガなどの運動系のイベントを開催する

喫煙や肥満の健康リスクについてのセミナーを実施する

ハイリスクアプローチ

メタボリックシンドローム気味の従業員に個別の保健指導を実施する


ポピュレーションアプローチの導入ステップ

次に、ポピュレーションアプローチの導入ステップを3段階に分けてご紹介します。ポピュレーションアプローチは、段階を踏みながら徐々におこなうことが重要です。


1.現場を把握する

最初に実施すべきは、現在の社内の状況を把握し、課題を洗い出すことです。現在の課題が明確ではないまま、適切なアプローチを実施することは難しいでしょう。
アンケート調査のデータや健康診断の結果、勤怠データなどを参考に、課題を整理しましょう。具体的な課題の例としては、

  • 喫煙率が高い
  • 長時間労働が慢性化している
  • 肥満者率が高い
  • 従業員エンゲージメントが低い

などが挙げられます。


2.取り組みの内容に優先順位をつける

次に、取り組みの内容に優先順位をつけます。整理したそれぞれの課題について、実現性を含めて一つずつ検討しましょう。
検討時に確認したいポイントとしては、以下が挙げられます。

  • 緊急性の有無
  • 実現可能性の有無
  • 自社に適しているか/効果が期待できそうか
  • 従業員の関心の高さ
  • 費用

なお、課題によっては、ハイリスクアプローチが適している場合もあります。

  • 健康リスクが高い特定の人を対象とした取り組みを実施する場合:ハイリスクアプローチ
  • 全体的なリスクの低下を目的とする場合:ポピュレーションアプローチ

といったように、両方を組み合わせた取り組みも検討すると良いでしょう。


3.取り組みを振り返る

実施後は必ず振り返りを実施しましょう。振り返りをしないで放置すると、どの程度の効果があったのか分からず、さらなる取り組みを実施する必要性を判断できません。
従業員の反応やアンケートの結果、健康診断のデータなどを参照しながら、ポピュレーションアプローチがどの程度効果を発揮したのかについて確認することが重要です。


ポピュレーションアプローチの具体例

最後に、ポピュレーションアプローチの具体例をご紹介します。


【実施事例】株式会社ローソン

コンビニエンスストアを展開する株式会社ローソンでは、社長がCSO(最高サステナビリティ責任者)として、健康経営を強化・牽引しています。多種多様な取り組みのなかでも、ポピュレーションアプローチとしては、健康増進施策として年に2回「元気チャレンジ!」を実施。

「コミュニケーション醸成」「アプリ活用による健康リテラシー向上」「歩数計測による運動促進」をメインとして、SDGsスタンプラリーや新幹線日本縦断企画など、さまざまな企画を実施しています。
その他にも、食事内容を1日3食継続して入力した従業員を対象に稼働賞を付与するなど、モチベーションの維持や持続のための工夫も施されています。


社員の健康意識上昇のためにポピュレーションアプローチを実施しましょう

ポピュレーションアプローチとは、集団全体に働きかけることで、全体の健康リスクを低下させるための取り組みです。
従業員の健康意識の向上や生産性の向上などのメリットが存在する一方で、全体に働きかけるという性質から、個人に対する効果が低い、社内の健康格差が拡大する可能性があるなどのデメリットも存在します。

そのため実施時には、まず社内の課題を整理したうえで、ハイリスクアプローチを含めて、どのようなアプローチが適しているのかを検討することが重要です。
ポピュレーションアプローチの実施によって、社内における健康意識の底上げに取り組んでみましょう。


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mediment(メディメント)は、従業員のあらゆる健康データを一元管理し、産業保健業務の効率化を支援するクラウドシステムです。 クラウドシステムならではの多彩な機能で、あらゆる業務のペーパーレス化を実現し、従業員のパフォーマンス向上に貢献します。

監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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