職場におけるセクハラとは?定義や企業で取り組む具体的な対策を解説
職場でセクシュアルハラスメント(セクハラ)が起きてしまうと、労働者だけでなく企業にとっても悪影響がある可能性があります。また職場のセクハラ対策の実施は、男女雇用機会均等法によって義務付けられています。この記事ではセクハラの定義や企業で取り組む具体的な対策を解説します。
目次[非表示]
職場でのハラスメントの現状や、事業主が取り組める防止策については以下の資料で詳しく解説しています。ぜひご活用ください。
>>>資料ダウンロード(無料)はこちら:職場でのハラスメントの現状と防止策
職場におけるセクハラとは?
そもそも職場におけるセクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、どのようなことを指すのでしょうか。
「職場」において行われる「労働者」の意に反する「性的な言動」により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます。 引用:厚生労働省「こころの耳」 |
セクハラが発生する原因や背景には、「性別役割分担意識」に基づく言動もあると考えられます。
<性別役割分担意識の例>
- 「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などと発言する
- 酒席で上司の側に座席を指定したり、お酌を強要したりする
性別役割分担意識に基づく言動自体がセクハラに該当するわけではありませんが、性別役割分担意識に基づく言動をなくしていくことがセクハラ防止の効果を高める上で重要です。
職場とは
基本的には労働者が業務をおこなう場所を指しますが、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務をおこなう場所であれば「職場」に含まれます。
<職場の例>
- 出張先
- 業務で使用する車内
- 取引先との打合せの場所(接待の席も含む)
また、勤務時間外に実施される懇親の場や、社員寮・通勤中であっても、業務の延長と考えられるものは「職場」に該当する可能性があります。
しかし、どこまでが職場に該当するかは、業務との関連性やその状況に応じて個別に考えて適切に判断することが大切です。
労働者とは
労働者とは、事業主が雇用する以下の全ての労働者をいいます。
- 正規雇用労働者
- 非正規雇用労働者(パートタイム労働者、契約社員等)
派遣労働者については、派遣元事業主だけでなく、派遣先事業主も同様にセクハラ対策をおこなう必要があります。
性的な言動とは
性的な言動とは、性的な内容の発言や性的な行動のことです。
<性的な言動の例>
- 性的な内容の発言:性的な事実関係を尋ねること、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘いなど
- 性的な行動:必要なく身体へ接触すること、わいせつ図画を配布・掲示すること、性的な関係を強要することなど
事業主、上司、同僚など同じ職場の人だけでなく、取引先や顧客もセクハラの行為者となる可能性があります。また、セクハラは異性に対するものだけではなく、同性に対するものも含まれます。
職場におけるセクハラの種類
職場におけるセクハラには「対価型」と「環境型」の2種類あります。
対価型セクハラ
対価型セクハラとは、性的な言動に対する拒否や抵抗を理由に、セクハラを受けた労働者が労働条件の不利益を被ることです。
<セクハラの例>
- 部下が飲み会の二次会や食事の誘いに応じなかった
- 社員の性的な話題を公然と発言していた
- 交際を求めたが断られた
<不利益扱いの例>
- 仕事で無視したり仕事に関する重要な情報を回さないなどの嫌がらせをしたりした
- 伝票の整理やコピーとりなど実際の能力より低い難易度の仕事しか割り振らないようにした
- ボーナスの査定を下げた
環境型セクハラ
環境型セクハラとは、性的な言動によってセクハラを受けた労働者の労働環境が不快なものとなったり、悪化したりすることで、見過ごせないほど業務に支障が生じることです。
<言動の例>
- 恋人がいないことや結婚しない理由を勝手に詮索して話した
- 「仕事をするにはコミュニケーションが大事」と言いながら、激励の意味で肩や背中にボディタッチをおこなった
- 業務上必要もないのに年齢、メールアドレスや携帯番号などの個人情報を執拗に聞いた
職場のセクハラ対策が重要な理由
職場におけるセクハラは、被害にあった労働者個人の人権に関わるだけでなく、会社の社会的な評価に悪影響が及ぶ可能性があるため、対策をおこなうことが大切です。労働者が安心して働ける職場環境を整えていきましょう。
セクハラは個人の人権に関わるため
職場でのセクハラは、個人としての尊厳や人格を不当に傷つけるなどの人権に関わる行為です。働く人が仕事で個人の能力を発揮する妨げになるだけではなく、精神的な苦痛など被害を受けた労働者への被害は計り知れないものです。
会社の社会的評価に悪影響を与えかねないため
セクハラは個人の人権を侵害するだけでなく、以下のように企業にとっても悪影響がある可能性があります。
- 職場秩序の乱れや業務への支障が発生する
- 貴重な人材を失う
- 社会的な地位や信用を損なう
義務で定められているため
男女雇用機会均等法において、以下を実施することが事業主に義務付けられています。
- 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
セクハラの内容、「セクハラが起きてはならない」旨を就業規則等の規定や文書に記載して周知啓発する - 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
セクハラの被害を受けた者や目撃した者などが相談しやすい相談窓口(相談担当者)を社内に設ける - 職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応など
セクハラの相談があったとき、すみやかに事実確認し、被害者への配慮、行為者への処分等の措置をおこない、改めて職場全体に対して再発防止のための措置をおこなう
これらは業種や規模に関わらず全ての事業主に義務付けられているため、必ずおこなうようにしましょう。
職場のセクハラ対策として取り組めること
セクハラは個人の人権を傷つけるだけでなく、会社の社会的評価にも悪影響がある可能性があります。職場は「働く人の尊厳を守る場」でもあるため、安心して労働者が働けるように職場におけるセクハラ防止に取り組みましょう。
職場でのセクハラ禁止の周知・啓発
まず、事業主から職場でのセクハラ禁止という方針を明確にすることが大切です。そして、管理職を含む労働者への周知・啓発をおこないましょう。
<具体的な取り組み例>
- セクハラとはどんなことが該当するのか周知・啓発する
- セクハラをおこなってはならない旨の方針を明確化する
- セクハラ行為者を厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定する
また、周知・啓発は、一度だけ実施するのではなく、継続的に取り組むことが大切です。人事異動のタイミングで研修を実施するなど継続的に取り組む工夫をしましょう。
セクハラ相談窓口を設ける
職場でセクハラが発生してしまった場合の苦情を安心して相談できる体制を整えることも大切です。
<具体的な取り組み例>
- 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
- 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにする
また、セクハラ相談窓口では幅広く相談に対応できるようにすることが大切です。セクハラが実際に起きている場合だけでなく、放置すればセクハラになる可能性のある場合や、セクハラに該当するか微妙なケースであっても、労働者が安心して相談できる体制を整えておきましょう。
プライバシーの保護をおこなう
職場におけるセクハラについての個人情報は、相談者・行為者共に個人のプライバシー保護に関連するため、労働者が安心して相談できるようにプライバシー保護に取り組みましょう。
<具体的な取り組み例>
- 相談者・行為者等のプライバシー保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルにする
- 相談窓口の担当者に必要な研修をおこなう
- 相談窓口では相談者・行為者等のプライバシー保護のために社内報、パンフレット、社内ホームページでの広報又は啓発のための資料等に掲載し、配付する
十分な対策で職場でのセクハラを未然に防ごう
職場のセクハラを防ぐには、会社の方針として指針を示したり、安心して相談しやすい環境を整えることが大切です。積極的に取り組み、一人ひとりが能力を十分に発揮できる環境にしていきましょう。
職場でのハラスメントの現状や、事業主が取り組める防止策については以下の資料で詳しく解説しています。ぜひご活用ください。