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安全衛生教育とは?法律に沿って種類や実施方法を解説

「安全衛生教育」は、労働災害や業務上疾病の予防目的、労働者の安全と健康を守る上で欠かせません。

実際に「安全衛生教育」の実施方法に思い悩む事業所担当者も多いはず。

当記事では、安全衛生教育の概要はもちろん、教育の重要性や義務化されている・されていない教育と、それぞれの具体的な方法を解説します。


目次[非表示]

  1. 1.安全衛生教育とは?
  2. 2.安全衛生教育を実施する対象者
  3. 3.安全衛生教育の指導者
  4. 4.安全衛生教育の種類
  5. 5.安全衛生教育の実施方法
  6. 6.安全衛生教育に取り組んでいる企業の事例
  7. 7.安全衛生教育の実施で労働災害を防ぎましょう!


以下の資料では、安全衛生教育の種類や実施方法について図でわかりやすく解説しています。ぜひお役立てください。

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安全衛生教育とは?

「安全衛生教育」とは、労働災害や業務上疾病を未然に防止し、労働者の安全と健康を守る上で不可欠な教育として位置づけられています。


・安全衛生教育の重要性

安全衛生教育を行う本来の目的は「労働災害の防止」です。

多重業務かつ業務切迫の中、業務に従事していると、労働者は安全性より効率を重視し、業務の省略や簡易化を図ろうとする傾向があります。

しかし、業務の簡易化を求めれば求めるほど、安全に対する危機意識は失われてしまいがち。

実際に、現場で作業を行う労働者や労働者を指揮・監督する者が、安全についての知識や技能を十分に持っていなければ、安全対策による効果を得るのは難しいです。


さらに、危険な業務に従事する労働者が安全についての知識や技能を十分に持たず、作業方法を間違ってしまうと、大きな労働災害につながりかねません。

労働者が安全かつ健康的に業務に従事できるよう、労働者はもちろん、労働者を指揮・監督する事業者それぞれが安全衛生教育の重要性を理解しておく必要があります。


・安全衛生教育の内容

業種・職種・雇用形態などにかかわらず全ての労働者に対して、作業開始時や作業内容変更時に安全衛生教育を実施しなければいけません。

教育内容に関しては労働安全衛生規則第35条により定められており、詳しくは次項で解説していきます。


安全衛生教育を実施する対象者

安全衛生教育を実施する対象者は主に作業者、安全衛生に係る管理者や経営トップ、安全衛生専門家、技術指導をする者です。

厚生労働省「安全衛生教育等推進要綱」にある通り、対象者は経営トップから安全衛生専門家、管理監督者、一般の作業従事者まで幅広く、それぞれの役割や立場から必要な安全衛生教育を規定していることが分かります。

また、働き方の変化に伴い就業者の雇用形態も多様化しています。

安全衛生教育は雇入れ時のみならず、業務内容変更時など、パートタイム労働者や期間労働者においても必要であり確実に実施しなければいけません。


安全衛生教育の指導者

安全衛生教育の指導者の要件は、「当該業務についての最新の知識並びに教育技法についての知識及び経験を有する者とする」とされています。

具体的には、

  • 衛生管理者
  • 安全管理者
  • 総括安全衛生管理者
  • 業務に精通した労働者

などが挙げられます。


衛生管理者については、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

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安全衛生教育の種類

安全衛生教育法にて、安全衛生教育の種類は6つあり、実施義務化されているものが3つ、実施に努める必要なものが3つあります。


義務

努力義務

雇入れ時・作業内容変更時の教育

安全管理者等への能力向上教育

特別教育

危険・有害な業務に従事する者に対する安全衛生教育

職長等に対する教育

健康教育・健康保持促進措置


【義務】雇入れ時・作業内容変更時の教育

労働安全衛生法第59条1項2項により、事業者は労働者を雇い入れ時や労働者の業務内容変更時、労働者に対して安全衛生教育をする必要があります。

<内容>

具体的な内容は以下の通りです。

安全衛生教育

引用:厚生労働省|安全衛生教育の教育内容

ただし安衛法施行令2条3号によれば、機械設備や有害物質を取り扱う現場作業を伴わず、事務仕事が中心となる業種などにおいては1〜4の内容は省略可能となっています。


【義務】特別教育

労働安全衛生法第59条3項により、事業者は厚生労働者が定める危険または有害な業務に労働者を従事させる場合、労働災害の防止を図る目的で業務に関する特別の安全衛生教育、つまり特別教育を実施する必要があります。

特別教育を必要とする業務は、アーク溶接や小型車両系建設機械の運転など49の業務です。

詳しい業務は労働安全衛生規則第36条に規定されているため、参考にしてみてください。

ちなみに事業者は特別教育を行った場合、受講者や科目などについて記録を作成し、3年間保存しなければなりません。


【義務】職長等に対する教育

労働安全衛生法第60条により、建設業や製造業(一部業種を除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業において、事業者は新たに職務に就くことになった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者に対し、特に必要とされる事項についての安全または衛生のための教育を行う必要があります。

<内容>

  • 作業方法の決定および労働者の配置に関すること
  • 労働者に対する指導や監督方法に関すること
  • リスクアセスメントの実施に関すること
  • 異常時等における措置に関すること
  • その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること

<時間>

職長教育では、およそ2日間にわたりさまざまな講習を受講することとされています。


【努力義務】安全管理者等への能力向上教育

能力向上教育は、安全衛生業務に従事する者の能力を維持・向上させるため、対象者へ実施する安全衛生教育のことをいい、事業者の努力義務とされています。

<対象者>

  • 安全管理者
  • 衛生管理者
  • 安全衛生推進者
  • 衛生推進者
  • 作業主任者
  • 元方安全衛生管理者
  • 店社安全衛生管理者
  • その他の安全衛生業務従事者

<種類>

初任時教育と定期教育および随時教育の3つ

※初任時に教育を行ったのち、定期教育や大きな作業替えが生じた際に随時教育をするという流れです。

<時間>

原則一日程度の受講時間を要します。


【努力義務】危険・有害な業務に従事する者に対する安全衛生教育

危険・有害な業務に従事する者に対する安全衛生教育は、労働安全衛生法に基づいています。事業者が労働災害の動向、技術革新等社会経済情勢の変化に対応しつつ、事業所における安全衛生の水準の向上を図るため、危険または有害な業務に現に就いている者に対して行います。

<対象者>

  1. 就業制限に係る業務に従事する者
  2. 特別教育を必要とする業務に従事する者
  3. 1、2に準ずる危険有害な業務に従事する者です。

<教育内容>

労働災害の動向や技術革新の進展等に対応する事項

<時間>

原則一日程度の受講時間を要します。


ちなみに、事業者は危険有害業務従事者に対する安全衛生教育の実施にあたっては、事業場の実態を踏まえつつ実施しなければなりません。


【努力義務】健康教育・健康保持促進措置

労働安全衛生法第69条により、事業者は労働者に対して健康教育や健康保持増進を図る措置を継続的かつ計画的に実施するように努める必要があります。

健康教育は労働者一人ひとりが自身の健康について目を向け、健康維持・増進に努められるようサポートするものです。

例えば、健康教育や運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、保健指導などが挙げられます。

なお、労働者も事業者が講ずる措置を利用して、自身の健康保持や増進に努めなければなりません。



労働安全衛生法については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

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安全衛生教育の実施方法

安全衛生教育の実施方法は以下の通りです。

  1. 教育の実施計画等の作成
  2. 実施責任者の選任
  3. 教育内容の充実
  4. 安全衛生教育センターの活用


どのような方法や手順で行うか詳しく紹介します。


①教育の実施計画等の作成

教育の種類ごとに対象者や実施時間、実施場所、講師、教材等を定めた年間の実施計画を作成します。

労働者の職業生活を通じての継続的な教育を実施するために、中長期的な教育計画を作成することが望ましいとされています。

また、教育を継続的、効果的に行っていくために、事業者は労働者ごとにどのような教育をいつ受けたか等の記録を作成しておくことも重要です。


②実施責任者の選任

実施計画の作成、実施、実施計画の記録・保存等教育に関する業務における実施責任者を選任します。


③教育内容の充実

教育内容を充実させるためには、以下の点に気をつける必要があります。

  • 講師は、当該業務に関する知識・経験を有し、かつ、教育技法に関する知識・経験を有する者であること
  • 視覚教材を活用しカリキュラムの内容を十分満足するほか、労働災害事例等に即した具体的な内容とする
  • 教育技法は、現場での実習、受講者が直接参加する事例研究、課題解決等の討議方式を採用するなどの工夫を行う
  • 労働者の危険感受性を高めるため、危険を体感するような教育も有効である
  • 危険に対応する知識や技術を持っていない若年層に対しては、実際に従事する業務に特有の危険性や有害性、危険有害物の正しい取り扱い方法、作業手順なども含む実践的な雇入れ時教育を実施する


④安全衛生教育センターの活用

安全衛生教育の水準の向上を図るため、安全衛生教育センターを設置しています。

センターでは事業者が行う安全衛生教育のトレーナー、インストラクター等の養成や安全衛生担当者、管理・監督者等の資質向上のための講座を開設しています。

結果、安全衛生教育センターを活用し、事業場内での講師養成等を行うことも、より有効な安全衛生教育の実施につながるのです。


安全衛生教育に取り組んでいる企業の事例

厚生労働省長野労働局における報告をみると、教育内容の充実を図った成功事例等が上げられています。


1.製造業

事業場構内の掲示板に、関係労働者に対して、必要な知識や点検基準などを分かりやすくイラスト等により提示物として作成・提示する(例:ワイヤーロープの交換基準について写真付き解説を付けて作成されたものを提示)


2.建設業

保健師から健康談話のほか、実践指導として、安全保安用品の製造・販売・レンタルメーカーにて制作された「VR自己体験安全教育」を使用して教育実施(例:10のシチュエーションを体験する映像教育で、ヘッドマウントディスプレイで視聴して体験する)


3.製造業

長期的な人材育成を目的に従業員や部署ごとに教育内容を設定、各作業工程におけるスキルマップを作成して計画的に安全衛生教育をおこなっている。
一定のレベルに達した従業員にはマスタークラスとして、作業に関する教育の講師になれる。


安全衛生教育の実施で労働災害を防ぎましょう!

安全衛生教育は、労働者の安全と健康を確保するために必要不可欠です。

不十分な安全衛生教育や未実施は、労働災害や業務上の疾病につながりかねません。

各事業所のみならず、国も安全衛生教育の促進活動を推進していることから、安全衛生教育の内容はもちろん種類や対象者、重要性を正しく理解することが大切です。

また、労働者の安全確保に向け、効果的な安全衛生教育になるよう、見える化するなどの工夫を実践していきましょう。



以下の資料では、安全衛生教育の種類や実施方法について図でわかりやすく解説しています。ぜひお役立てください。

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mediment(メディメント)は、従業員のあらゆる健康データを一元管理し、産業保健業務の効率化を支援するクラウドシステムです。 クラウドシステムならではの多彩な機能で、あらゆる業務のペーパーレス化を実現し、従業員のパフォーマンス向上に貢献します。

監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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