安全衛生管理計画書とは?作成方法・活用方法も解説
建設現場の安全衛生にかかわる安全衛生管理計画書は、労働局に提出が推奨されている重要書類です。本記事では、業務を安全かつ円滑に遂行するためにも大切な安全衛生管理計画書とは何か、またその作成方法や活用方法について解説します。
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以下の資料では、安全衛生教育の種類や実施方法について図でわかりやすく解説しています。ぜひお役立てください。
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安全衛生管理計画書とは
安全衛生管理計画書とは、企業が1年間に取り組む安全衛生活動をまとめた書類のことです。企業が取り組む安全衛生活動の内容には、法令による定めはありません。そのため、内容については安全衛生管理計画書を作成する各企業が細かく決定していく必要があります。
安全衛生管理計画書の目的
安全衛生管理計画書は、従業員の安全と健康を守ることを目的として作成する書類です。
労働安全衛生法において、企業は労働者の安全と健康の増進に努めることを責務としています。これをふまえ、厚生労働省では安全衛生管理計画の立案(Plan)と実施(Do)、評価(Check)、改善(Act)のPDCAサイクルを回していくことが重要であるとしています。
各都道府県にある労働局でも、企業の安全衛生活動を促進するために安全衛生管理計画書の作成を勧めています。安全衛生管理計画書を作成し活動を続けていくことで、職場における事故・災害の防止や従業員の健康の増進を図れます。
労災については以下の記事で詳しく解説しています。
安全衛生管理計画書の書式について
安全衛生管理計画書は企業が独自に作成する書類です。したがって、定められた書式はありません。これから安全衛生管理計画書を作成する場合は、厚生労働省や各都道府県の労働局が公開している見本をもとに、自社で使いやすい書式を用意するとスムーズに作成できるでしょう。
安全衛生管理計画書作成の5ステップ
では、具体的にどのようにして安全衛生管理計画書を作成すれば良いのでしょうか。安全衛生管理計画書は、次の5つのステップで作成します。
<安全衛生管理計画書作成の5つのステップ>
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各ステップの内容について、次項より詳しく説明します。
1.現状の把握
まずは、自社の現状を正しく把握し、分析をおこないましょう。現状の把握には、一般社団法人安全衛生マネジメント協会が提供する「チェックシート」の活用がおすすめです。
ファイルをダウンロードし記入例に沿って入力をおこなうことで、自社の安全衛生における現状を把握できます。
チェックシートに入力する際には、安全衛生管理計画書を作成する担当者だけでなく、現場の声も含められるよう従業員に聞き取りをおこなったり、さまざまな立場の方が話し合ったりしながら進めていくと良いでしょう。これにより、安全衛生への意識向上を図れます。
2.問題点の抽出
作成したチェックシートの「検討項目」を確認します。検討項目に含まれる、自社の安全衛生における問題点を抽出していきましょう。
問題点を抽出する際に特によく見ておきたい情報は次の通りです。
<問題点の抽出に重要な情報>
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これらの情報から、制度や管理、設備、作業方法、教育訓練などにおける問題点を把握して、重要な課題は何かを洗い出していきます。
3.基本方針・目標の設定
抽出した問題点をクリアできるように、安全衛生に関する基本方針と目標を設定します。基本方針を定める際には、経営陣の意見をふまえつつ、緊急性が高いものや防災効果が高いものなど、重点的に取り組む課題を基本方針のベースとして定めます。
目標を設定する際には、数値でわかりやすく示すことが大切です。例えば、「災害ゼロ」「災害5件以下」のような形です。また、目標は努力することで達成できる内容が望ましいでしょう。
4.具体的実施項目の決定
設定した目標に沿って、実施項目を具体的に決定していきます。実施項目は、自社の問題点を解決でき、かつ実現可能なものにします。安全衛生管理計画は、作成後に実施することが大切です。そのため、実現不可能なものは除外していきましょう。
実施項目の参考として、厚生労働省が公開する各種資料を活用する方法もあります。
5.安全衛生管理計画書の作成
ここまでで設定した、目標と具体的実施項目をふまえた安全衛生管理計画書を作成します。計画書には、具体的な推進方法を月別または四半期別に記載します。また、実施項目ごとに実施担当者と状況をチェックする管理者を定めましょう。
計画書に記載する事項は、次の通りです。
<安全衛生管理計画書に記載する主な事項>
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安全衛生管理計画書では、各項目を実施するうえでの注意点なども記載しておくとわかりやすいでしょう。
安全衛生管理計画書の活用方法
安全衛生管理計画書の目的は、従業員の安全と健康増進にあります。安全衛生管理計画書は、作成したのちに計画にある内容を実施していくことが大切です。
従業員に計画を周知したうえで、記載した内容を1年間実行します。計画の実行中はPDCAサイクルを意識して、適宜内容を見直しながら行動に反映していきます。
計画内容を実行する
安全衛生計画書を作成したあとは、全社に共有して周知します。1年間、定めた計画に沿って安全衛生に関する事項を実施し、実施内容を記録します。次年度までに、各実施項目の達成度合いを評価しておきましょう。
加えて、計画の進捗状況を定期的に確認することも重要です。3ヶ月を目途にチェックをおこない、その結果を安全衛生委員会または安全衛生労使懇談会などに報告して、問題がみられた場合には計画を修正します。
1年間の実施内容を振り返り改善点を洗い出す
記録した内容をもとに、1年間の実施内容を振り返ります。計画通りに実施できたか、できないものがあった場合の理由は何かをあらためて社内で検討・評価し改善点を洗い出しましょう。
話し合った内容は、安全衛生計画書の実施状況欄や評価欄に記入していきます。
改善点をもとに次年度の計画を策定する
明確になった改善点をもとに、次年度の計画を策定します。改善点とあわせて、新たな機械や設備を導入した場合や、法令・規程の改定があった場合、組織編制の改変などがあった場合には、それらも次年度の計画に反映させます。
安全衛生管理計画書作成のメリット
安全衛生管理計画書を作成し、計画を実施していくことで、企業は次のようなメリットを享受できます。
安全衛生管理の方針の明確化と共有が可能になる
安全衛生管理計画書を作成するなかで、自社の安全衛生方針が定まります。方針を策定し、計画書を通して従業員に周知することで、安全衛生に関する方針を全社に共有できます。
方針が周知されると、各従業員は現場にある危険性を把握して、業務中に注意すべきことを理解した状態で業務にあたれます。
労働災害の防止につながる
職場における事故や災害はできるだけ発生させないことが重要です。実際に安全衛生管理計画書を作成し実行している企業では、労働災害の減少、ヒヤリ・ハットの減少、職場の危険有害要因の減少などの成果を得ているケースもあります。
また、安全衛生に関するPDCAサイクルによって、より一層安全性の向上を図れることもメリットです。
安全意識の向上が期待できる
労働安全衛生管理計画書の共有によって、日々の作業での危険性や有害性がわかり、従業員は安全を意識しながら作業をおこなえるようになります。事故やトラブルが軽減されることは、円滑な作業による生産性の向上や納期の短縮などにもつながります。
安全衛生管理計画書を作成し職場の安全性を高めよう
安全衛生管理計画書は、従業員の安全を守るために重要なものです。安全衛生管理計画書を作成することで、自社の安全衛生方針や実施すべき項目、重点的に取り組むべき項目が明確化され、従業員の行動に反映されていきます。
安全衛生管理計画書を作成した後は、内容を行動に移し評価・改善を続け、さらなる安全性の向上に努めると良いでしょう。
以下の資料では、安全衛生教育の種類や実施方法について図でわかりやすく解説しています。ぜひお役立てください。