ストレスチェック実施者・実施事務従事者の役割の違い、なれる人の要件とは
資料DL「企業内担当者向け ストレスチェック制度に対応するための8つのポイント」
2015年から多くの企業で導入されている「ストレスチェック制度」。厚生労働省から義務付けられ、企業側は労働者のメンタルヘルスケアを行うにあたり、いくつかの担当に分かれます。
しかし、そこで「実施事務従事者」「実施者」といったそれぞれの違いが分からないと、頭を抱えている方も多いはず。
今回、企業関係者がストレスチェックにおいて直面する「実施事務従事者」「実施者」の違いやそれぞれの役割、実施事務従事者と人事権との関係性、さらに必要な体制作りなどを、詳しく解説します。
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ストレスチェック実施事務従事者とは
厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」によれば、「実施事務従事者」とは、「実施者」の補助を行う人のことを指します。
「実施者」「実施事務従事者」それぞれの違いや役割など、詳しく見ていきましょう。
「実施者」と「実施事務従事者」の違い
文字だけ見ると、同じような役割を担うのではないかと感じる方もいるのではないでしょうか。しかし、それぞれの業務を見ると役割は細かく分かれており、違いを理解して責務を果たす必要があります。
ストレスチェック「実施者」
ストレスチェック「実施者」とは、ストレスチェックの企画、さらに結果確認や評価を行う、中心的な役割を担う人です。
労働安全衛生法において、医師や保健師、厚生労働大臣が定める研修を終了した看護師、精神保健福祉士、歯科医師、公認心理士であれば、実施者になれます。
実施者の役割
主に、実施者の役割は以下の通りです。
- 調査票を選定する上での専門的見地からの助言
- ストレス程度の評価方法を決定する上での専門的見地からの助言
- 高ストレス者の選定基準を決定する上での専門的見地からの助言
- 面接指導をうける必要のある従業員の選定
- 実施事務従事者の選任
- (個人のストレスチェック結果を当該従業員へと通知)
- (調査票の回収、集計及び結果の入力)
- (受験者との連絡調整などの実施上の事務作業)
上記の役割のうちで、調査票の選定及びストレス程度の評価方法や、高ストレス者の選定基準を決定する上での専門的な見地からのアドバイスと面接指導が必要な従業員の選定は、必ず実施者が行うことになっています。
一方で、実施上の事務作業の一部(()のついた項目)に関しては、後述する実施事務従事者に依頼し、協力して役割をこなせるようになっています。一般的には、社内外で実施事務従事者を選定し、事務作業の一部を実施事務従事者が担当する体制が採用されています。
実施者の要件
実施者に選ばれる者は、以下(a)~(c)のいれずかの資格をもっていることが必要です
a)医師
b)保健師
c)所定の研修を受けた歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師
2018年8月に労働安全衛生規則の一部が改正されたことにより、新たに実施者となることができる資格として「歯科医師」「公認心理師」が追加されています。
産業医がいない場合の実施者
一般的にはストレスチェックの実施者には企業の産業医が選ばれることが多いようです。
ただ、会社として産業医がついていない場合でも、実施者の要件に当てはまる専門職の方に依頼して実施者とすることができます。また産業医がついている場合でも、他の業務との兼ね合いや契約形態などを理由として当該産業医が実施者を担当することが難しい場合は、要件を満たす別の者に実施者を依頼することが可能です。
共同実施者、実施代表者とは
実施者は一人である必要はなく、複数人で担当することができます。
実施者が複数人いる場合の各実施者を「共同実施者」といい、その複数人の共同実施者の代表を「代表実施者」といいます。実施者が複数人いて、産業医がその一人として選ばれている場合は、安全衛生的な観点で日頃から会社と付き合いのある産業医が代表実施者となることが好ましいとされています。
またストレスチェックの実施を外部に委託する場合でも、会社の内情に詳しい産業医が共同実施者となり、中心的な役割を果たすことが推奨されています。
ストレスチェック「実施事務従事者」
ストレスチェック「実施事務従事者」とは、実施者の補助を行う人のことです。調査票回収・データ入力、結果出力または記録の保存・送付などを行っています。
実施事務従事者の役割
実施事務従事者の役割としては以下のものがあげられます。
- ストレスチェックの実施日程の調整・連絡
- 調査票の配布・回収及び質問票の結果の記録
- ストレスチェックの結果を各従業員へと通知
- 個人のストレスチェック結果を集団的に分析し、結果を事業所に報告
- 面接指導が必要と判断された労働者に対して、その旨を通知
- 面接指導を申し出ない従業員への勧奨
実施事務従事者は事業者あるいは実施者によって選ばれます。
選任された場合は、実施者が行う役割の一部を担うことになるため、担当とする実施事務の範囲を明らかにし、産業医などの実施者とコミュニケーションをとりながら各実施事務に当たることが重要となります。
実施事務従事者の要件
ストレスチェックの実施事務従事者には、実施者の選定に際して求められるような資格などの要件はありません。社内の従業員から適した者を選ぶことが可能です。
しかし、ストレスチェックの受験者に対する直接的な人事権を持つ者は実施事務従事者にはなれません。社内でストレスチェック制度の実施事務従事者を選ぶ際には、従事できる業務において実施者と異なるため注意が必要です。
一般的には、社内の産業保健スタッフや、衛生管理者などが選ばれることが多いようです。それらが難しい場合には一般の事務職員などに役割を担ってもらうことができます。
ストレスチェック実施事務従事者の選任基準は「人事権」の有無
ストレスチェック実施事務従事者の選任基準において、チェック結果が労働者の意思に背き、不利益な取り扱いになることを避けるため「人事権」を持つ人は選任できないという基準があります。
人事権の有無以外に、実施事務従事者には知っておくべき規則や罰則もあるため、理解しておくことが大切です。
実施事務従事者の守秘義務違反には罰則も
実施事務従事者には、労働安全衛生法「第百四条」「百五条」にあるように、守秘義務があります。守秘義務の期限はなく、違反をした場合、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」といった刑罰が課せられるため、注意が必要です。
実施事務従事者でない担当者がサポートできる事務作業もある
ストレスチェックにおいて、「実施の事務」と「その他の事務」に定義づけられており、実施事務従事者以外の人でも、サポートできる事務作業があります。
あくまで、ストレスチェックは特性上、なるべく最少人数で取り組むことが理想的といわれています。
具体的な内容は「厚生労働省|ストレスチェック制度導入ガイド」に載っているため、参照してみてください。
ストレスチェック実施体制を構築する流れを整理
体制構築の前提として、実施事務従事者は、ストレスチェックを開始するためには、事前に体制自体の流れを理解し、頭の中で整理しておく必要があります。
ストレスチェックの流れは、事前に【図①】のような事項を話し合ったのち、【図②】のような体制を作っていくという形です。
【図①】
【図②】
具体的に見てみると、それぞれの役割が分かれているため、ストレスチェック実施時は自己の役割をしっかりと認識しておくことが大切です。また、外部の専門家に依頼する場合、どのような役割を依頼するのかを明確にしておくことで、トラブル回避につながります。
実施事務従事者の役割を明確化してスムーズな体制作りを
「実施事務従事者」は「実施者」の補助を行う人のことをいい、調査票の回収やデータ入力、結果出力または記録の保存・送付など多岐に渡った役割を担っています。
ストレスチェック体制の流れを把握しておくことはもちろん、実施事務従事者の選定には人事権の有無が関与していること、守秘義務が課せられていることなどを理解しておくことで、ストレスチェックで起こりやすいトラブルを回避できます。
ストレスチェック制度において「実施事務従事者」「実施者」「人事権」など、聞き慣れない言葉や勘違いしやすいような内容が多く、ストレスチェックに抵抗を感じてしまいがちな企業も多いでしょう。
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