健康診断は契約社員にも必要?実施義務は?条件・雇入れ時&契約更新時の注意点
労働衛生法第66条により、企業は常時雇用する労働者に健康診断を実施させる義務があると定められています。
また、労働者は健康診断を受診し、会社の方針に従って結果を会社に報告しなければなりません。では、契約社員には健康診断の義務が当てはまるのか、本記事にて詳しく解説します。
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契約社員を含む、雇用形態別の健康診断については以下の資料で詳しく解説していますので、ぜひお役立てください。
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契約社員にも健康診断の実施義務が適用される2つの条件
契約社員とは、一般的に勤務先が直接雇用する勤続期間に制限のある社員のことを指します。
1回の雇用契約による勤続期間は3年が上限となっており、契約満了の時点で契約を更新するか契約終了か、いずれかの対応が必要です。
また、2013年に施行された改正労働契約法により、有期雇用で働く労働者は5年以上働いていれば「無期転換ルール」が適用され、労働者の申込みがあれば無期雇用契約労働者に転換されます。
画像引用:厚生労働省「無期転換ルールについて」より
契約社員であっても、条件を満たした場合は健康診断の実施義務が適用されます。
条件は2つあり、1つは契約期間、もう1つは労働時間を満たすことです。それぞれ具体的にチェックしていきましょう。
1.契約期間
労働期間が以下3つの条件のいずれかに当てはまる場合は、健康診断の実施対象になります。
- 無期契約労働者(雇用期間に定めがない労働者のこと)
- 有期契約で契約期間が1年以上の労働者
- 有期契約の更新により1年以上使用される予定のある(または使用されている)労働者
また、短期契約であっても自動契約更新等によって、健康診断実施の条件が適用される場合がありますので確認が必要です。
2.労働時間
1週間の労働時間が通常の労働者の所定労働時間の「4分の3以上」の契約社員は、健康診断の対象となります。
1週間の労働時間が通常の労働者の所定労働時間の「2分の1以上〜4分の3未満」の労働者には、法律上の実施義務はありません。
しかし、契約社員が安全かつ健康に働くことができるよう健康診断の実施が望ましいとされています。
契約社員への健康診断費用は会社負担が原則
健康診断の適用条件を満たす契約社員の健康診断受診費用は、法定受診項目の範囲内であれば、原則として会社側の負担となります。
また、1週間の労働時間が通常の労働者の所定労働時間の2分の1以上〜4分の3未満の労働者に関しても会社負担で実施するのが望ましいでしょう。
また、法定受診項目以外の各種がん検査や脳ドック等のオプション検査、人間ドック等を受診したい場合は、個人負担が原則となります。
契約社員に雇入れ時健康診断は必要?よくある3つのケースで解説
企業には雇入れ時の健康診断実施が義務付けられています。
雇い入れ時健康診断とは企業が新たに常時使用する労働者を雇い入れる際に実施が必要となる健康診断です。
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
労働安全衛生規則第43条より
しかし、契約社員は契約年数や内容にばらつきがあり、雇入時健康診断の実施義務に該当するか悩むケースも多いでしょう。
ここでは3つのケースを例に挙げ、契約社員に対する雇入れ時健康診断の実施義務についてご説明します。
ケース1. 契約時点で1年以上の継続雇用が想定される場合
契約した時点で1年以上の雇用期間となる場合や、契約更新が前提となるような実質上の無期契約のような取扱いになる契約の場合は、入社前あるいは雇い入れ時に健康診断を実施する必要があります。
ケース2.6か月間など「1年未満」の有期契約の場合
6か月間など1年未満の短期的な契約となる場合、雇い入れ健康診断実施義務の対象となる条件を満たさないため、健康診断の実施義務はないと判断して問題ありません。
ただし、予定外の契約更新などで雇用期間が延長される場合は、健康診断が必要となります。
このような場合に健康診断の実施漏れなどが起きないように注意が必要です。
ケース3.3か月の契約期間後、労働状況を見て契約更新を判断する場合
契約期間が3か月間など短期間であった場合は、雇い入れ時健康診断の実施義務はありません。
ただし、契約更新に伴って継続労働期間が1年を超える場合には、健康診断実施の必要性が出てきます。契約更新の際に労働状況の確認が必要となります。
契約更新に伴う健康診断は雇い入れ時健診と定期健診のどちらに該当するか?
契約期間の更新によって1年以上の労働期間となった場合は、健康診断の実施対象となります。
その際に実施する健康診断は「雇い入れ時健康診断」と「定期健康診断」のどちらとするべきでしょうか。
2つの健診実施義務を満たすために、短期間で2回の健診実施が必要かどうか判断に迷うケースも出てくるでしょう。
例えば契約更新が4月、企業の健康診断が6月というケースを考えてみます。
雇入れ時健康診断を4月とした場合、6月の定期健康診断は不要であると考える方もいるかもしれません。
しかし、企業が勝手に判断し、1回の健康診断実施で問題ないと考えてしまうのは危険です。
労働基準監督署に指摘される可能性がありますので、判断に迷う場合は管轄労働基準監督署へ相談すると安心です。
契約社員に健康診断を実施しなかった場合の罰則は?
労働安全衛生法第66条に基づき、事業者(企業)には契約社員に限らず、労働者に対し医師による健康診断の手配・実施が義務付けられています。
健康診断の実施をおろそかにした場合は違法行為とされ、50万円以下の罰金が課せられます。
また、健康診断を受診する条件を満たしている契約社員は、会社の方針に従って健康診断を受診し結果を提出しなければなりません。
必ず健康診断を受診するようにしましょう。
特定業務に従事する契約社員は「実施期間」に注意
契約社員に対する健康診断について、安衛則第44条に基づき「1年以内ごとに1回の定期健康診断実施」を前提にご説明してきました。
一方で深夜業務など、労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者に対しては、当該業務への配置換えの際、および「6ヵ月以内ごとに1回」の健康診断の実施が義務付けられています。
実施期間の違いに注意が必要です。
<労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務>
- 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
- 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
- ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
- 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
- 異常気圧下における業務
- さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
- 重量物の取扱い等重激な業務
- ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
- 坑内における業務
- 深夜業を含む業務
- 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
- 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
- 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
- その他厚生労働大臣が定める業務
上記該当業務に従事する場合は、契約社員であっても契約期間が6カ月以上となる場合に健康診断の受診対象となりますので注意が必要です。
条件を満たせば契約社員も健康診断の実施対象になる!
労働者が安全かつ健康に働けるよう、企業は定期的に「健康診断」を実施する義務があります。
契約社員については、契約期間や更新の有無、更新時期、継続年数など、様々なケースでの就労が予測されます。
知らない間に健康診断の実施義務を怠ることのないよう、担当者は詳細を把握し、適切に健康診断を実施・手配するようにしましょう。
契約社員を含む、雇用形態別の健康診断については以下の資料で詳しく解説していますので、ぜひお役立てください。