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衛生委員会とは?参加人数からメンバーの選び方、議題の決め方や議事録の書き方まで徹底解説

衛生委員会とは、労働者の健康維持・促進のための調査審議をおこなう機関です。常時使用する労働者が50人以上の事業場で設置することが義務付けられおり、労使一体となって、健康障害防止や精神的健康の保持増進のための対策について話し合います。

そこで本記事では、「衛生委員の参加人数は?メンバーは誰がいいの?議題はどうやって決める?議事録はどうやって書くの?注意点は?」など、衛生委員会に関する疑問を徹底解説します。


目次[非表示]

  1. 1.衛生委員会の目的と設置基準
  2. 2.衛生委員会のメンバー
  3. 3.衛生委員会で話し合うこと
  4. 4.衛生委員会の進め方
  5. 5.衛生委員会運用のコツ・注意点
  6. 6.衛生委員会のテーマはどうやって決める?​​
  7. 7.衛生委員会の活発化でよりよい職場環境に!


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衛生委員会の目的と設置基準

衛生委員会の目的は、事業者と従業員が協力して、働く人の健康障害や労働災害を防止することで、健康に働ける職場環境を目指すことです。

職場の健康は事業者の取り組みだけでは実現されません。労使一体となって取り組むための場として、衛生委員会が存在しています。

衛生委員会は、労働安全衛生法に基づき、常時使用する労働者が50人以上の事業場で設置することが義務付けられています

衛生委員会の類似機関として、安全教育の実施計画作成など安全に関することを調査審議する安全委員会がありますが、安全委員会の設置基準は業界に応じて以下の通りです。


常時使用する労働者が50人以上
林業、鉱業、建設業、製造業のうち木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、 金属製品製造業、輸送用機械器具製造業、運送業のうち道路貨物運送業、 港湾運送業、自動車整備業、機械修理業、清掃業
常時使用する労働者が100人以上
上記業種を除く運送業、上記業種を除く製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業


なお、衛生委員会と安全委員会のどちらも設置しないといけない事業場は、2つを合わせて「安全衛生委員会」として開催することが一般的です。


衛生委員会のメンバー

衛生委員会の構成員は下記図の通りです。議長以外に人数の定めはありません。また、議長以外は事業者が指名しますが、議長以外のメンバーの半数は、労働者の過半数代表の推薦に基づいている必要があります。

議長
1名
衛生管理者
1名以上
産業医
1名以上
労働衛生業務の経験者(従業員代表)
1名以上


各役割については次の通りです。議長を筆頭に労使双方のバランスよく引き出す構成とすることが求められています。


議長

議長は、統括安全衛生管理者または事業の実施を統括管理する者が務めます。

統括安全衛生管理者を設置していない事業者においては工場長や支店長が指名されることが一般的です。司会進行を担当し、参加者全員の意見を調整する重要な役割です。


衛生管理者

衛生管理者の有資格者で、産業医との窓口になったり、衛生管理の実務を担うキーパーソンです。


産業医

専門家としての知見を活かし、労働安全衛生に関するアドバイスをおこないます。出席は義務ではありません。


衛生委員会で話し合うこと

具体的な内容は、職場環境改善に向けた内容や健康講和になります。先ほどの目的である、従業員に労働災害や過重労働が起きないように、危険性やリスクに対しての対策をおこなっていくための場所となるようにしましょう。

衛生委員会の審議事項は、

①      労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。

②      労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。

③      労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。

④      前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

引用:労働安全衛生法第18条第1項

となっています。


具体的には、

  • 衛生に関する規定の作成
  • 健康の保持増進を図るための基本となるべき対策
  • 衛生に関する実施計画の作成、また実施、評価及び改善
  • 健康診断にかかわること
  • 長時間の労働による健康障害の防止、精神的健康の保持増進

などがあります。


衛生委員会の進め方

衛生委員会は必ず月1回以上実施しないといけません。就業時間内に実施するため、各参加者の都合を見ながら前もって予定を組んでいきましょう。できれば、「毎月第〇曜日×時~」のように決めておくと、予定をつけやすくなり、参加率が上がります。


委員会当日におこなうこと

衛生委員会は、だいたい1時間で実施している企業が多いようです。話し合う内容が少なければ、30分に省略している事例も見受けられます。

産業医の訪問が月1回、1時間程度と制約がある場合には、30分で衛生委員会、残りの30分を過重労働者や高ストレス者、二次健診未受診者との面談にあてるなどの対応をしている企業も多いようです。産業医との契約上の制約があると思いますので、産業医が一番必要なところに介入できるように、調整していきましょう。


実際の委員会では、司会進行役を決めて進めるとスムーズです。話し合いが前向きな建設的なものになるように、委員会を進める上での注意事項を周知・徹底しましょう。事業者も従業員も目指すゴールは一致しているはずなので、それぞれの状況・意見を集約させながらベストなルートを選択できるように、議長が発言を促すなどサポートをしていきましょう。

本音が出れば、より現場に沿ったリアルな課題解決や環境改善に結びつきます。そのため、次第を事前に周知しておくのも良いかもしれません。

ここには一般的な1時間の衛生委員会の次第を載せておきます。


次第
目安時間
内容
補足説明

前回議事の確認・報告

10分

産業医に指摘された職場環境改善の状況

前回の議事ででた課題の再確認

定例報告
20分
①長時間労働に関すること
②職場巡視の報告
③メンタル不調者や休職・復職者について
④労災報告、ヒヤリハットなどの共有やアクシデント報告、従業員からの要望など
①勤怠状況の報告や長時間労働者の面談など
②産業医より
③産業医より
④対策や予防策、社内ルールの改善などもおこなう

年間計画に関する審議

20分

実施状況と課題の抽出

次月の取り組みについて
実施困難点・課題・達成度などの振り返り

産業医からのコメント

5分

健康講和やコメント・アドバイスなど
万が一参加できないときは事前に議題を共有して、助言をもらっておく。

次回の議題確認と総括

5分

議長からのコメント
次回までに取り組むことについても再確認するとよい



衛生委員会の後におこなうこと

衛生委員会、お疲れ様でした。あと少し、残っていることをおこないましょう。衛生委員会は終わった後の処理も重要です。まずは議事録を作成し、衛生委員会で話し合われたことをまとめましょう。企業によっては、次第にそって事前に要点をまとめておいて、それを議事録とする企業もあります。

また、衛生委員会は、実施のたびに従業員に議事内容を周知する必要があります。周知方法はいくつかあり、労働安全衛生法では、

①常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること。

②書面を労働者に交付すること。

③磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

引用:労働安全衛生規則第23条

と定められています。公開方法は、事業場内の見やすい場所での掲示や社内メールでの周知、書面の交付、社内イントラでの発信などが考えられます。


また、議事内容にかかわる記録は、3年間保存が義務付けられています。電子データでも大丈夫ですので保管しておきましょう。

議事録に特に決まった書式はありませんが、下記事項は必ず記載してください。

  • 委員会の実施日時・場所、参加者氏名や人数などの概要
  • 労災の発生報告や巡視結果についてや、年間計画の進歩状況など
  • 産業医からのアドバイスやコメントなどのフィードバック内容
  • 次月の開催予定日時


安全衛生委員会の議事録テンプレートについては、以下の記事でご紹介しています。

  【テンプレート有り】安全衛生委員会の議事録作成のポイントと取り扱いを解説! 安全衛生委員会の開催時は、議事録の作成が義務づけられています。議事録の作成方法がわからない、テンプレートが欲しいという担当者の方も多いのではないでしょうか。 この記事では人事・労務担当者に向けて議事録の作成方法と取り扱いについて説明しています。 mediment(メディメント)


衛生委員会運用のコツ・注意点

衛生委員会は、労働災害の防止のための対策を考えたり、実行したりするための話し合いの場です。せっかく開催しているのですから、ただやるのではなく、目的をもって開催していきたいですよね。衛生委員会を意義あるものにするためには、

①活発なコミュニケーションが生まれる環境をつくること

②年間計画を立てること

が必要不可欠です。


①活発なコミュニケーションを促す

一方的な報告で終わらないように活発な話し合いがおこなわれるような雰囲気作りが大切になってきます。議長は、特に発言のし過ぎに気を付けて、労使双方の意見が出るように、促しましょう。

また、取り組み内容や実施状況がうまくいっていないときは、それを批判するのではなく、どこに問題があり実行できていないのか、何をクリアすればよいのか、本当に実行内容が適切なのか、など様々な視点で検討してみましょう。話し合いが、労使のどちらかの意見に傾きすぎないよう、適宜産業医にも意見を求めることも大切です。


話し合いが進まない、もしくは本筋とそれてしまったときは、衛生委員会の開催目的や議題のゴールなど、目指す場所を参加者全員で確認し、同じ方向に向かえるように修正していくことも時には必要となります。

健康経営は会社の経営と直結していること、会社全体で取り組むものであることを再三伝え、方向性をすり合わせていくことも重要です。

また、労災や過重労働者の報告などがおこなわれますが、個人情報の扱いに十分に留意してください。休業中の労働者や、特別な事情を抱えている従業員の詳細な個人情報を開示することはせず、必要であれば別途、産業医と相談するようにして、個人が特定できないように配慮しましょう。


②年間計画を立てる

年間計画に沿って開催したいと思ったとき、どのように進めていくのが良いでしょうか?

まずは、現状の課題の洗い出しをしましょう。課題は何でも良いです。こんなところが困っている、ここがこうなったらいいな、などざっくばらんに出してみましょう。

そのあとに、似ている項目、共通している項目でつなげる、まとめる作業をしましょう。そして、課題のグループができたら、優先度が高いもの、危険性が高いものを見ていき、今回取り組むテーマを決めましょう。取り組むテーマが決まったら、そのテーマにおける要因・原因を洗い出してみましょう。

いわゆるボトルネックは何か?と見極めることが重要です。いろいろな要因をひとつずつ解決しても、ボトルネックの要因が解決されないと、再び同じ課題が起こる可能性があるからです。


テーマ、ボトルネックが分かったら、年間で解決していくためのPDCAを考えていきましょう。1年間かけて、どのように取り組むのか、1か月単位や数か月単位で取り組むものを見極め、評価の項目や評価方法も考えていきましょう。

この時、従業員代表の方が参加しているので、意見を聞きながら、現場に沿った実現可能な物を考えていきましょう。また、Doは現場で、「いつ・誰が・どのように」実施するのかまで細かく考えていきましょう。

ざっくりとしたあいまいなものだと結局Doがおこなわれず、PDCAサイクルが形骸化してしまうおそれがあります。衛生委員会の実施がムダにならないように、ここは難しいかもしれませんが、産業医のアドバイスなどももらいながら、じっくり向き合っていきましょう。


③他社の取り組みを参考に運用する

衛生委員会を初めて設置するような企業では、自社でどのように運用していけばいいか悩むかもしれません。その際は、他社の事例を参考にすると良いでしょう。
厚生労働省が「安全衛生優良企業の取組事例」という、安全衛生に関する企業取り組みをまとめています。自社と似た業種や従業員数などの企業の取り組みを見ると、具体的にイメージしやすいでしょう。


④悩んだときは産業医に相談する

衛生委員会の運営に悩んだ際は、産業医に相談するのも効果的です。社外の人に見てもらうことで、社内からだけでは出てこなかった視点でアドバイスをもらえるでしょう。
また、産業医は従業員の健康管理や作業環境の整備など高度な専門知識を持っていますので、的確な助言が期待できます。



事業場の従業員数が50名を超えると、産業医を選任する必要があります。産業医の選任方法や探し方のポイントについては、以下の記事をご覧ください。

>>>資料ダウンロード(無料):自社に合う産業医を選ぶために知っておきたいこと

	blog用WPバナー産業医

衛生委員会のテーマはどうやって決める?​​

最後に、「どこから手を付けてよいのか分からない」、「話し合う内容をすべて網羅しているか、抜けがないか確認したい」、「まずは一通り課題の確認をしたい」という方もいらっしゃると思うので、話し合うとよいテーマについて列挙してみました。

ネタ切れしてしまった!という際には、ぜひ参考にしてください。


衛生委員会の定番テーマ一覧

  • ストレスチェックの高ストレス者の判定基準
  • 休職や復職に関する社内規定の確認
  • 有休の消化状況の確認
  • 長時間労働の状況(部署・事業所・役職別など)
  • ノー残業デーの策定
  • 就業規則の確認・改定・労災補償基準の明確化
  • 衛生・健康に関する教育の実施の計画(雇入時・管理者・従業員等)
  • 健康づくりや福利厚生の充実化のための施策
  • 健康づくりに向けた社内報などの情報提供の方法・内容検討
  • ハラスメント対策(相談窓口/外部相談先)
  • 禁煙対策に向けた社内体制の整備
  • 過重労働対策の検討



以下の記事では衛生委員会のテーマについて、詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。

  衛生委員会で取り扱うテーマとは?マンネリ化防止の解決策や注意点を解説! 月1回の開催が義務付けられている衛生委員会のテーマのネタ探しや、マンネリ化に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。 この記事では人事・労務担当者に向けて、衛生委員会のテーマの選び方とマンネリ化防止対策について具体例を交えて説明しています。 mediment(メディメント)


衛生委員会の活発化でよりよい職場環境に!

衛生委員会とは、労働者の健康障害や労災の防止や、健康の保持増進に関する取り組みなどについて、労使ともに話し合いをする場です。

形骸的にならずに、職場改善につながるよう、事前の準備や参加率向上のための工夫をしたり、意見交換が活発になるような進行をしていきましょう。


この記事でご説明した内容を、よりわかりやすい図や表でまとめた資料のダウンロードも可能です。ぜひご活用ください。

>>>資料ダウンロード(無料)はこちら:衛生委員会基礎ガイド

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mediment(メディメント)は、従業員のあらゆる健康データを一元管理し、産業保健業務の効率化を支援するクラウドシステムです。 クラウドシステムならではの多彩な機能で、あらゆる業務のペーパーレス化を実現し、従業員のパフォーマンス向上に貢献します。

監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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