【記入例あり】産業医の選任届とは?作成・提出・変更時の届出方法を解説!
労働者の健康管理等を効果的におこなうため、常時50名以上の労働者を使用する事業場においては、産業医を選任し、選任届を提出しなければなりません。
この記事では人事・労務担当者に向けて産業医の選任届の作成・提出・変更方法と記入例について説明しています。
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産業医選任届とは?
「産業医選任届」とは、産業医を選任後、所轄の労働基準監督署へ提出する報告書です。
常時使用する従業員が50名を超えると、事業者は産業医を1名選任することが定められています。
産業医を選任すべき理由が発生した日から14日以内に選任し、「産業医選任届」を遅滞なく所轄の労働基準監督署へ提出しましょう。
作成は、人事・総務の担当者がおこなうケースが多いです。
【記入例あり】産業医選任届の作成~提出までの3ステップ
産業医を選任したら、すみやかに労働基準監督署へ選任届を提出しましょう。
産業医選任届の作成から提出までの3ステップをご説明します。
ステップ1.必要書類を揃える
最初に必要書類を揃えましょう。必要書類は以下の3つです。
【必要書類】
- 産業医選任届
- 産業医の資格証明書(産業医認定証または労働衛生コンサルタント登録証)のコピー
- 医師免許証のコピー
【産業医選任届の入手方法】
- 労働基準監督署に出向き、直接取りに行く方法
- 厚生労働省のWebサイトから様式をダウンロードする方法
-
「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用する方法
労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス※インターネット上で報告書の作成ができます。電子申請ではなく、印刷して窓口か郵送での提出になります。記入方法の説明が表示されますし、ミスがあれば、エラーメッセージで教えてくれるため、記入漏れを防げます。
【フォーマット】
引用:総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告
【電子申請】
電子申請も可能ですので利用しましょう。手続情報表示|e-Gov電子申請
ステップ2.書類の記載
書類を入手したら、必要項目を記入しましょう。必要な項目は以下の①〜⑫までです。
各項目の記入の仕方について説明していきますので参考にしてください。
記入漏れや記入ミスがあった際には労働基準監督署より再提出を求められる場合があります。
ミスのないように注意し、不明点は、産業医に確認して記入しましょう。手書きする場合は黒のボールペンを使用してください。
産業医選任届の記入例
以下は産業医の選任届の記入例です。作成時の参考にしてください。
記入例の番号に沿って、記入内容をそれぞれ解説していきます。
①【労働保険番号】
事業場の労働保険番号を記入。
②【ページ数】
1人の産業医選任届のみ提出する場合、ページ数には「1/1」と記入します。2人の産業医選出届を提出する場合は、1枚目に「2/1」、「2/2」と右詰めで記入します。
③【事業場の情報(名称、所在地、電話番号)】
産業医を設置する事業場の名称、所在地、電話番号、労働者数を記入します。電話
番号は「‐(ハイフン)」で区切ります。
④【事業の種類】
日本標準産業分類の「中分類」から記入します。
総務省「統計基準等|日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)-分類項目名」
⑤【事業場の労働者数】
常時雇用する従業員数を記入します。「常時雇用する従業員」とは、産業医選任の基準となる従業員規模と同様に考えます。
1) 期間の定めなく雇用されている者
2) 過去 1 年以上の期間について引き続き雇用されている者または雇い入れ時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者(一定の期間を定めて雇用されている者または日々雇用される者であってその雇用契約期間が反復更新されて、事実上①と同等と認められる者)
※出向等で該当の事業場での就業をしていない者は含めません。
⑥【産業医の情報】
産業医の氏名・フリガナを記入します。
※濁点、半濁点の場合、同一 枠内に「ガ」「パ」と記入します。 選任年月日と生年月日を記入。昭和55年5月24日の場合は、「555 524」です。(5の前に 0は不要)
⑦【産業医選任年月日】
生年月日の時と同様、右詰めで記入します。
⑧【選任種別】
産業医の「5」と記入します。
⑨【産業医の医籍番号】
医師免許証に記載の医籍番号を記入します。種別は、日本医師会認定産業医の場合は「1」、労働衛生コンサルタントの場合は「3」です。
⑩【辞任・解任について】
産業医が交代している場合は前任の産業医の情報も記載が必要です。(氏名、カタカナ、辞任、解任の年月日)
⑪【参考事項】
初めて産業医を選任した場合は「新規選任」と記入します。産業医の専門科名も記載します。産業医が開業している場合は「開業医」と記載します。
⑫【届出日・届出先名・事業者職氏名・捺印】
届出日、届出先(所轄の労働基準監督署)、会社の代表者の名前を記入し、捺印し
ます。
代表者の署名であれば押印はなくても問題ありません。
ステップ3.書類の提出
選任届を作成したら所轄の労働基準監督署へ提出しましょう。
【提出場所】
提出場所である所轄の労働基準監督署は、以下の所在案内から各都道府県のページを開くと、労働基準監督署の管轄一覧表を確認できます。
所在案内:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省
【提出方法】
提出方法は3種類ありますので、任意の方法を選択します。
- 所轄の労働基準監督署の窓口にて提出する。
「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省」にて所轄の労働基準監督署を調べ、直接出向いて提出する。 - 所轄の労働基準監督署へ郵送にて提出する。
「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省」にて郵送先の住所を検索し、提出する。 - 「手続情報表示|e-Gov電子申請」から電子申請をする。
産業医が変更になった場合も必ず届け出よう
労働安全衛生規則第13条4項により産業医が変更になった場合も同様に、産業医を変更する理由が発生した14日以内に選任し、前任の産業医の辞任と新しい産業医の選任届を提出する必要があります。
産業医の不在期間の発生は、従業員の健康を守るため、可能な限り避けなければなりません。
産業医を選出するのには、時間や労力を要しますので産業医が変更になる可能性がある場合には、早めに探す準備をしておきましょう。
4 事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。
引用:労働安全衛生規則 第13条4項
そもそも産業医とは?選任方法は?
選任届の作成方法についてご紹介しましたが、そもそも産業医は、医師免許と産業保健に関する専門知識をもって労働者が健康的に働けるように支援する医師です。
事業者(会社や経営者)に対し、医学に関する専門的な立場から健康管理上の指導・助言をおこないます。 産業医は医師免許のほかに、産業保健に関する専門知識が必要なため、「産業医の要件」が厚生労働省によって定められています。
産業医は、医師であって、以下のいずれかの要件を備えた者から選任しなければなりません。
(1)厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
(2)産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
(3)労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
(4)大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれらの経験者
引用:労働安全衛生規則 第14条第2項
産業医を選ぶ際のポイントについては、以下のお役立ち資料で詳しくご紹介していますのでぜひご活用ください。
>>>資料ダウンロード(無料):自社に合う産業医を選ぶために知っておきたいこと
また、産業医については以下の記事で詳しく解説しています。
産業医には2種類ある
産業医には、「嘱託産業医」と「専属産業医」の2種類があります。大きく異なるのは勤務形態です。
【嘱託産業医】
嘱託産業医とは、非常勤で働く産業医を指します。 従業員数が50名以上999名以下の規模の企業の場合、嘱託産業医の選任で問題ありません。 月1回〜数回、1回あたり数時間勤務するのが一般的です。
【専属産業医】
専属産業医とは、企業に専属で働く産業医です。従業員の数が1,000名を超えている場合、あるいは、500名以上の従業員が有害業務に従事する場合に選任されます。 なお、従業員が3,000名を超える場合は専属産業医を2名以上選任しなければならないと決められています。 常勤で週4〜5日程度、勤務するのが一般的です。
産業医の選任方法
産業医を選出する方法は、主に以下の4つの方法があります。 どの方法にもメリットとデメリットがありますので、企業に合った方法で産業医を選任しましょう。
1.地域の医師会に相談する
地域の医師会が問い合わせをおこなっている場合は、企業から近いところにいる産業医を紹介してもらいましょう。 メリットは、産業医と直接連絡を取りやすく、移動時間も短くて済みます。医師によっては、柔軟に訪問してもらえる可能性があります。
デメリットは、訪問時間や報酬等、契約内容を各企業で産業医と直接話し合って決めていく必要があるため、契約までに時間や労力を要する場合があります。
2.健診機関からの紹介
健診機関には産業医が所属していることも多いため、紹介が受けられるケースがあります。 メリットは、定期健診とセットで依頼した場合には、割引が受けられる等のコストの削減が期待できる点です。 デメリットは、健診時期になると繁忙期のため、健診業務が優先となり、従業員の産業医としての業務に支障が出る可能性も否定できません。
3.産業医紹介サービスを利用する
産業医の紹介サービスを利用する方法です。メリットは、さまざまな専門分野の医師が多数登録している点です。 近年増加するメンタルヘルス対策に備えて、心療内科・精神科の産業医を希望する場合等、希望条件に沿う医師を紹介してもらえます。 医師に伝えづらい項目を代わりに伝えてくれたり、交渉してくれたりするのも魅力的です。
デメリットは、サービスが充実している分、コスト面では他の方法よりも高くなるケースが多いです。
4.人脈を駆使して探す
従業員の人脈を駆使して探すという方法もあります。メリットは、他の方法に比べ、コストが抑えられる点です。 デメリットは、実際には知人に産業医がいる方は少ない点です。 また、知人に産業医がいて選任した場合、知り合いならではの義理や縁があるために、融通をきかせてもらえる場合もあれば、トラブルが発生した際に意見を言いづらい、また自社に合わなかった場合に解雇しづらいというデメリットもあります。
その他の方法として、自社の親会社に産業医がいる場合は、同じ方を産業医として選任できるか相談してみましょう。
産業医を選任または変更したら選任届を忘れずに提出しよう!
産業医の選任届について作成方法や提出方法について説明しました。
産業医の選任は法律で定められている義務であるだけでなく、従業員が安心して健康的に働くために不可欠です。
新任・変更に関わらず、14日以内に選任し、選任したらすみやかに所轄の労働基準監督者へ選任届を提出しましょう。産業医選任届は従業員の健康を守る大切な報告書になります。
忘れずに提出し、企業の信頼へと繋げましょう。
産業医を選ぶ際のポイントについては、以下のお役立ち資料で詳しくご紹介していますのでぜひご活用ください。