ストレスチェック&ワークエンゲージメントの両輪で生産性アップ!違いや具体例を解説
資料DL「企業内担当者向け ストレスチェック制度に対応するための8つのポイント」
従業員50人以上の事業所では、ストレス対策として、ストレスチェックの実施が義務づけられています。それに加え、健康への意識が高い企業が、ストレス減少効果が大きく期待できると注目し、取り組み始めているものが「ワークエンゲージメント」です。
ストレスチェックとワークエンゲージメントに向けた取り組み、どちらも実施を検討しているものの、それぞれ同じ取り組みなのか、それとも相反するものなのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
当記事では、ストレスチェックとワークエンゲージメントの違いやメリットを徹底解説します。
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ストレスチェックだけじゃない! ワークエンゲージメントの活用によるストレス対策とは?
企業の従業員へのメンタルヘルスケアの一環として、ストレスチェックは浸透しつつあります。
また、健康への意識が高い企業では、ストレスチェックに加え、従業員の「ワークエンゲージメント」を上げ、従業員が仕事に対してやりがいを持ち、いきいきと楽しく働けるよう、健康経営を目指す企業が増えています。
では、「ストレスチェック」のみならず注目されている「ワークエンゲージメント」について、詳しく見ていきましょう。
エンゲージメントとは?
ワークエンゲージメントはさておき、そもそも、「エンゲージメント」とはどのような意味合いの言葉なのでしょうか。
「エンゲージメント」とは、「没頭」「婚約」「誓約」「約束」「契約」という意味です。企業活動においては、企業に対する「愛着」「思い入れ」といった企業と従業員との絆を示します。
一見、モチベーションと同じ意味合いなのではないかと感じた方もいるかもしれません。しかし、モチベーションは「動機づけ」「やる気」などを示し、外的・内的な要因により影響を受けます。
一方でエンゲージメントとは、組織への貢献が前提となり、企業と従業員が同等の立場として存在し、それぞれの想いが一致している状態を指します。
従業員のエンゲージメントが高まれば、従業員と企業との結びつきが強くなり、結果として従業員は企業に貢献し、意欲的に仕事に取り組める好循環が生まれます。
ストレスチェック:メンタルヘルス不調の未然防止
一方、ストレスチェックは、労働者のメンタルを正しく把握し、仕事における負担軽減やうつなどのメンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組みです。
2015年12月から、従業員50人以上の事業所は、毎年1回以上実施することが義務付けられています。
もちろん、企業側が労働者すべてのメンタルヘルス不調を理解し、改善できたら最善ですが、ストレスチェックの本来の目的は、ストレスの原因抽出と高ストレス者に対しアプローチして、メンタル不調を未然に予防することです。
ワークエンゲージメント:心身の健康向上・ポジティブメンタルヘルス
では、エンゲージメントは理解できたものの、ワークエンゲージメントは何かと疑問を感じた方もいるはず。
ワークエンゲージメントとは、「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」として、以下の3つが揃った状態と定義されています。
- 活力:仕事から活力を得ていきいきとしている
- 熱意:仕事に誇りとやりがいを感じている
- 没頭:仕事熱心に取り組んでいる
引用文献:厚生労働省|ワーク・エンゲイジメントの概念について
さらに、ワークエンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた 「一時的な状態」ではなく、仕事に向けられた「持続的かつ全般的な感情と認知」によって特徴づけられています。
ワークエンゲージメントは、「個人」と「仕事全般」との関係性を示す概念であることに加えて、個人の中で日々の時間の経過とともに一時的な経験として変動していく面もあるものの、基本的には、持続的かつ安定的な状態を捉える概念となっています。
つまり、従業員が仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、いきいきと活力を得ながら労働できることは、ワークエンゲージメントが高い状態ということです。
ストレスチェックとワークエンゲージメントの違い
ストレスチェックとワークエンゲージメントは、どちらもストレス対策につながる仕組みの1つですが、方向性は異なります。
ストレスチェックは予防やケアを目的とした(ネガティブ)メンタルヘルスであるのに対して、ワークエンゲージメントの活用は心身の健康を高めるポジティブメンタルヘルスであるという点です。
また、ストレスチェックが高ストレス者へのケアや改善対策など、限定したアプローチを実施するのに対し、ワークエンゲージメントは健康な人も対象とし、企業全体を底上げする取り組みをする点も異なります。
ワークエンゲージメントのようなポジティブな点に目を向け、自社の強みを伸ばすための対策をマネジメントに組み込んでいくことが大切です。
ストレス対策にワークエンゲージメントが活用できる3つの理由
2019 年に実施された「経済産業省主催の経営競争力に向けた人事マネジメント研究会の調査結果」を見てみると、ワークエンゲージメントはさまざまな効果を得られることが分かります。
ここでは、ストレス対策にワークエンゲージメントが活用できる理由として、3つの視点で解説していきます。
引用文献:経済産業省|「平成30年度産業経済研究委託事業(企業の戦略的人事機能の強化に関する調査)」
1.従業員のやる気やモチベーションを高められる
ワークエンゲージメントの活用により、従業員の活力や熱意を持って仕事に取り組める環境を整えられ、モチベーションの向上につながります。
また、ワークエンゲージメントが高いことで、仕事に関してポジティブな感情を抱きやすくなり、心理的な負担も軽減されるといわれています。
2.個のスキルの最大化・創造性や業務貢献度の向上が期待できる
個々のワークエンゲージメントが高まることで、それぞれの自発性も高まり、与えられた以上の仕事をこなし、自分のみならず、周囲の仕事状況にも目を向け、サポートするといった行動が増えます。
また、従業員の積極性や創造性が引き出され、スキルの向上が図れるため、結果的に従業員の業務貢献度向上が期待でき、生産性や企業業績アップにつながるでしょう。
3.離職・転職・欠勤のリスクが低減できる
仕事にやりがいを感じ、職場環境への好感度が高まれば、「この仕事は好きだから辞めたくない」環境だと認識します。
すると、うつ病などをはじめとするメンタルヘルス不調に伴う病気のリスク軽減はもちろん、優秀な人材の離職や転職、欠勤を低減できます。
さらに、新入社員の定着率向上にもつながり、新たな採用活動に関する人件費の削減なども図れるといわれています。
ワークエンゲージメントを高める具体的な取り組みイメージ
2019年に実施された「経済産業省主催の経営競争力に向けた人事マネジメント研究会の調査結果」から、健康意識の高い企業はワークエンゲージメントの活用に向けた取り組みが始められていることがわかります。
アプローチ内容に関して、簡単に見ていきましょう。
引用文献:経済産業省|「平成30年度産業経済研究委託事業(企業の戦略的人事機能の強化に関する調査)」
従業員が自社で働くことに意義や目的を見出せるよう、企業戦略の提示を積極的に行うほか、それぞれが希望するキャリアアップにつなげられるようなサポート、さらに、福利厚生の充実や満足のいく報酬を与えるなどのアプローチがなされています。
つまり、従業員のワークエンゲージメントを高めるためには、従業員に寄り添った企業のアプローチが大切です。
ワークエンゲージメントの測定方法とは
実際に、ワークエンゲージメントの測定方法があることで、企業はアプローチした結果を評価しやすいです。
そこで、一般的に利用されている測定方法について解説していきます。
一般的な尺度「UWES」
ワークエンゲージメントを測定する方法として「UWES(Utrecht Work Engagement Scales)」があります。
UWESでは、ワークエンゲージメントの構成要素3つである「活力」「熱意」「没頭」の尺度を質問項目に組みこみ、17問の質問形式でワークエンゲージメントを測定します。
測定結果が高ければ、ワークエンゲージメントが低く、反対に低ければ、ワークエンゲージメントが高いといわれています。
企業側は、従業員に対して継続的に「UWES」を利用して、従業員の生き甲斐や働き方に関する現状を理解・分析することが、ワークエンゲージメントの向上につながるでしょう。
ストレスチェック「新職業性ストレス簡易調査票」でも測定可能
ワークエンゲージメントの測定方法として「UWES」のほか、80項目版のストレスチェック「新職業性ストレス簡易調査票」でも、ワークエンゲージメントの測定ができます。
従来の「57項目版」ではなく「80項目版」を活用する測定方法は、受検時間が長くなるため、従業員にとって負担を感じる方もいるかもしれません。
しかし、「80項目版」を利用することで、企業は、より細かく職場環境の実態把握ができるようになるため、職場環境改善につなげやすくなるメリットがあります。
80項目版のストレスチェック「新職業性ストレス簡易調査票」の測定でも、企業は従業員のメンタルや職場環境を多角的に理解・分析でき、従業員のメンタルヘルス向上・生産性向上につなげられると知っておくことが大切です。
ストレスチェックとワークエンゲージメントの両面からマネジメントを
ストレスチェックとワークエンゲージメントは、それぞれの意味合いや構成要素、アプローチの仕方などは異なります。
しかし企業は、ストレスチェックによる一次予防を図り、ワークエンゲージメントの向上といった多角的な視点からアプローチすることで、従業員のメンタルヘルス不調を早期に発見でき、症状の悪化等を予防・従業員の生産性の向上や定着につなげられます。
可能な範囲でストレスチェックとワークエンゲージメントの両面からストレスマネジメントに取り組み、健康経営に活用していけるとよいでしょう。
資料DL「企業内担当者向け ストレスチェック制度に対応するための8つのポイント」