「雇入れ時健康診断」は義務!費用やパート対応など事前準備を確認
事業所が常時使用する労働者に定期的に健康診断を受診させることは、労働安全衛生法において事業所の義務とされています。
この健康診断は、新規に雇い入れた従業員にも必ず適用する必要があり(労働安全衛生規則第43条)、これを「雇入れ時健康診断」と呼びます。
新しい従業員に「雇入れ時健康診断」を漏れなくスムーズに受診してもらえるように、概要を学び、事前準備を行いましょう。
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健康診断の実施方法や結果の活用については以下のお役立ち資料で解説していますので、ぜひご活用ください。
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雇入れ時健康診断とは?
「雇入れ時健康診断」とは、常時使用する従業員を新規に雇い入れた場合に実施する健康診断のことです。
年に1回行われる「定期健康診断」と同じく労働安全衛生法令において義務化されており、違反した場合には50万円以下という罰則( 労働安全衛生法第120条)もあります。
「雇入れ時健康診断」の目的は、安全や健康に配慮した適正配置のために、企業が労働者の身体状況を把握することです。当然ですが、採用や評価の基準にしてはいけないことを意識して取り組みましょう。
検査方法などは、年に1回行われる「定期健康診断」とほぼ同じですが、検査項目が一部異なることには注意が必要です。
定期健康診断については、以下の資料で詳しく解説しています。
検査項目
「雇入れ時健康診断」の検査項目は、以下の11項目です。「定期健康診断」との違いに注目しながら確認しましょう。
(厚生労働省『労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう』より引用)
「雇入れ時健康診断」と「健康診断」の検査項目は似通っていますが、以下の2点が異なります。
①喀痰(かくたん)検査の有無
- 雇入れ時健康診断:「4 胸部エックス線検査」
- 定期健康診断 :「4 胸部エックス線検査および喀痰検査」
②項目の省略
- 雇入れ時健康診断:検査項目の省略不可
- 定期健康診断 :医師の判断で一部の検査項目を省略できる
新しい従業員に間違いなく受診してもらえるよう、注意しておきましょう。
一斉受診と個別受診
事業所が行う健康診断は、事業所が必ず医療機関を予約して一斉に受診させなければならない、というわけではありません。従業員が個別に受診する方法でも大丈夫です。
個別受診の場合は、従業員が自身で病院の予約を取り、各自で受診します。その結果を事業所に提出していただきます。
採用人数や採用場所によって一斉に受診することが難しい場合などもあるでしょうから、自社に合った方法を選択しましょう。
ただし、個別受診の場合は注意が必要です。
- 検査項目の漏れが出る
- なかなか受診してもらえない
上記のような問題が考えられますので、個別受診を選択する場合は従業員に対して項目や期日の通知だけでなく、予約や受診の経過を確認するなど、少し細かい配慮をしてあげましょう。
雇入れ時健康診断は「いつまで」か?入社前でもよい
労働安全衛生規則第四十三条では、雇入れ時健康診断は「常時使用する労働者を雇い入れるとき」に行うものとしており、「いつまで」という期日は明確に決められていません。
また雇い入れる直前又は直後に実施するようにとされており、「入社前」の実施も可能です。
ちなみに雇用した従業員が入社前3か月未満の間に健康診断を受けていた場合、必要な検査項目が網羅されていれば、その結果を提出してもらっても問題ありません。就職活動にあたり健康診断を受診している場合もありますので、事前に従業員に確認することもおすすめします。
従業員の入社前後は対応業務が多いため、自社の都合に合わせた計画を立て、実施スケジュールを決めましょう。
雇入れ時健康診断の「対象者」はパートも確認が必要
雇入れ時健康診断の対象者は「常時使用する労働者」とされています。実はその中には、一定の要件を満たしたパート・アルバイトも含まれます。
「常時使用する労働者」とは次の1および2の要件を満たす者です。
1.使用期間
- 一般業務従事者は一年以上使用される予定の者
- 特定業務従事者(労働安全衛生規則第45条関係)は六月以上使用される予定の者
2.労働時間数
- 同種の業務に従事する労働者の一週間の所定労働時間数の四分の三以上であること ( 同種の業務に従事する労働者の一週間の所定労働時間数の四分の三未満である労働者であっても、概ね二分の一以上である者も対象とすることが望ましい)
上記の「使用期間」「労働時間数」の両方を満たす従業員は「常時使用する労働者」となり、パート・アルバイトであっても健康診断の対象者とされます。
ただし、上記の要件に関わらず派遣労働者の場合は基本的には派遣元の事業場で実施することになっています(有害業務従事労働者については別)ので、対象には含まれません。
漏れがでないように、個々の雇用契約書をもとに確認しましょう。
それぞれの雇用形態における健康診断については、以下の資料で図や表を用いてわかりやすく解説しています。資料は無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
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健康診断の「費用」に加え、受診時間の賃金もできれば企業で負担を
雇入れ時健康診断に要する費用負担については、定期健康診断と同じです。
事業所に健康診断の実施が義務付けられている以上、健康診断の費用は、当然に事業所が負担すべきものとされています。
また健康診断を受けている時間の従業員への賃金も、可能な限り支給することが望ましいでしょう。
受診時間の賃金というのは、健康診断が業務追行と直接の関係がなく労働時間とみなされないため、「労使間の協議によって定めるべきもの」として、法令では明確に定められていません。
しかし、厚生労働省は「円滑な受診を考えれば受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」としていますので、可能な範囲で企業が負担することをおすすめします。
加えて、再検査・精密検査の必要があった場合も同様に、費用は労使間の協議によって決まるとされています。
一般的には、再検査の必要がある従業員には再検査の勧奨まで行っている企業が多いです。再検査の費用に関しては、就業規則に明記しておくのもひとつの手でしょう。
健康診断における会社負担の範囲については、以下の記事で解説しています。
雇入れ時健康診断に必要な「事前準備」
次に、雇入れ時健康診断をスムーズに行うためにできる事前準備を確認しておきましょう。
雇用者への説明を丁寧に
雇入れ時健康診断では、特に雇用者への説明を事前に丁寧に行いましょう。
企業のことをまだよく知らない新規の従業員にとって、健康診断はプライバシーの問題だけでなく、採用や人事に関わるのではないかという不安が付きまとうことも多くあります。
そのため、以下のような健康診断の目的や意義をしっかりと従業員に説明しましょう。
- 雇い入れ時健康診断は企業の義務である
- 労働者の安全を守るための健康管理である
- 採用や評価には一切関係がない
従業員が健康診断に理解を示し、自主的に受診してもらうのが理想です。
就業規則での明文化を
雇入れ時健康診断の未受診者が出ないように、就業規則に盛り込むなどの対策も効果的です。
健康診断は業務と関係がないため、どうしても受診が遅れがちになります。健康診断は法令で定められた事業所の義務であることから、事前に就業規則に「未受診者への懲戒処分」を入れておく企業も多く、事前準備としておすすめです。
通知・予約を早めに
医療機関の予約と従業員への通知は、早めに行いましょう。
医療機関が混雑していると、予約がなかなか取れない場合があります。また受診から結果まで1か月近くかかることもありますし、全員の診断結果が揃うまでを想定して計画しましょう。
個別受診の場合は、特に早めの通知が必要です。予約が取れないケースもありますし、対象者がすぐに行動してくれるとは限りません。
従業員の雇用前後は企業側の業務が多く忙しくなりますし、早めの行動をおすすめします。
事前準備で雇入れ時健康診断は漏れなく実施を!
従業員の健康診断は、企業の安全と信頼・発展に重要な役割を果たすものです。義務だからと事務的に行うのではなく、ぜひ細やかな対応をしていただければと思います。
その中でも「雇入れ時健康診断」は入社前後の従業員が対象であり、企業側とのコミュニケーションもまだ薄いため、しっかりとした説明や早めの通知など事前準備が大切です。
企業側も従業員も健康診断の趣旨を理解して、積極的に実施できるよう、できることから取り組みましょう。
健康診断の実施方法や結果の活用については以下のお役立ち資料で解説していますので、ぜひご活用ください。
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