定期健康診断の対象者・項目・費用・報告書の提出義務などを徹底解説
安衛則第44条に基づき、常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回、定期健康診断を実施する義務があります。
しかし、対象者や検査項目、かかる費用や報告書の提出期限など、疑問を抱えている人事労務担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、これらの疑問を丁寧に解説していきます。
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健康診断の実施方法や結果の活用については、以下のお役立ち資料で解説していますので、ぜひご活用ください。
>>>資料ダウンロード(無料)はこちらから:健康診断業務マニュアル
人事労務が知っておくべき健康診断は3つ
会社が実施すべき健康診断は複数あります。本題に入る前に、人事労務が最低限知っておいたほうがよい健康診断を3つご紹介します。
>>>「健康診断」について詳しく解説している記事はこちら
・特殊健康診断(安衛法第66条 第2項及び第3項、じん肺法)
一定の有害な業務に従事する労働者に対して実施する健康診断です。
>>>詳しくはこちら
・雇入時の健康診断(安衛則第43条)
常時使用する労働者を雇入れる直前、または直後に実施する健康診断です。
>>詳しくはこちら
・定期健康診断(安衛則第44条)
常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回実施する健康診断です。
本記事では、「定期健康診断」について詳しく解説していきます。
定期健康診断の「いつ・どこで・誰に・何を・いくら」を詳しく解説
定期健康診断の「いつ・どこで・誰に・何を・いくら」について、まずは次の要点を押さえましょう。
上の表の要点について、より丁寧に解説していきます。
いつ:実施日・結果報告書の提出期限・個人票の保管期間について
定期健康診断は1年以内ごとに1回の実施が法律で定められています。ただし実施日時の指定はありませんので、会社ごとに決めましょう。
安衛法第66条の3に基づき、定期健康診断の結果に基づく健康診断個人票の作成と5年間の保存義務があります。
健康診断結果を保管する際のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
また常時50人以上の労働者を使用する事業者は、「定期健康診断結果報告書」の提出が必要です。(安衛法第52条)
報告書の提出期限は具体的な明記はないですが、「健康診断実施後、遅滞なく提出すること」とされています。
健康診断結果の報告書は電子申請が可能です。また、2025年1月より、電子申請が原則義務化の予定となっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
どこで:健診クリニック選びと予約方法
定期健康診断の受け方は3つのケースが想定されます。
- 医師または巡回健診車を招き、会社や公民館などで集団健診を行う
- 会社が指定した医療機関(健診施設)で健診を受ける
- 労働者それぞれが任意の医療機関(健診施設)で健診を受ける
健康保険組合の補助金を利用する場合は、組合が指定している医療機関を選びましょう。
予約方法4ステップ
会社が医療機関を指定する場合、予約方法は会社ごとに異なりますが、一般的な手順は次のとおりです。
- 健康組合が指定する医療機関(健診施設)が複数あるので、会社側でいくつか選出する
- 定期健康診断の実施時期を会社側で決める
- 医療機関の場所と日程を従業員に知らせる
- 従業員が各自でインターネットや電話で申し込み(予約)を行う
誰に:定期健康診断の対象者はパートや契約社員も確認が必要
安衛法第66条及び安衛則第44条に、「常時使用する労働者」に対して実施する義務があると規定されています。
次の(1)と(2)のいずれの要件も満たす場合、パートやアルバイト、契約社員も含め、すべてが実施対象者です。
(1)期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。
(2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。
引用:厚生労働省東京労働局HPより抜粋
(1)のみに該当する場合でも、1週間の所定労働時間が通常労働者の1/2以上(※)なら実施するのが望ましいとされています。
(※)通常労働者(正社員)の1週間の所定労働時間は40時間なので、4分3以上=30時間以上、2分の1以上=20時間以上となる。
派遣社員の定期健康診断は「派遣元の企業」に実施義務がある
派遣社員の健康診断については、一般健康診断は派遣元に、特殊健康診断は派遣先に実施義務があります。
画像出典元:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう」
上記の画像から分かるように、定期健康診断は一般健康診断に分類されるため、派遣元の企業が実施しましょう。
雇用形態別の健康診断の取り扱いについては、以下の資料で図や表を用いてわかりやすく解説しています。資料は無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
>>>資料ダウンロード(無料)はこちらから:雇用形態別!健康診断まるわかりブック
定期健康診断は拒否できる?
企業に受診義務がある健康診断ですが、労働衛生法により、従業員側にも健康診断を受ける義務が定められています。そのため、健康診断の受診を拒否することはできません。
企業が従業員に健康診断を受けさせないと、労働安全衛生法により、50万円以下の罰金を科せられる場合があります。
とはいえ、「結果を会社に知られたくない」「病院に行く時間がない」など様々な理由で従業員が拒否するケースもあるでしょう。
以下の記事では、健康診断を拒否する従業員へのアプローチの仕方と、拒否されないための工夫をご紹介しています。
何を:定期健康診断の法定項目は11個!省略できる項目もある
安衛法で定められている定期健康診断の検査項目は以下のとおりです。
画像出典元:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう」
画像の(※2)については、それぞれの基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略することが可能です。
画像出典元:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく 健康診断を実施しましょう」
省略できるか否かは、年齢などにより機械的に決定されるのではなく、自覚症状及び他覚症状、既往歴などから総合的に判断されます。
いくら:定期健康診断の費用は会社負担! 組合からの補助金あり
厚生労働省HP「よくある質問」には「労働安全衛生法等で事業者に義務付けられている健康診断の費用は、事業者が負担すべき」と明記されているため、会社負担が原則です。
健康診断は保険の効かない自由診療であるため、医療機関や地域によって費用のふり幅が大きいです。相場は一人当たり5,000~15,000円とされています。
健康保険組合や自治体の補助金制度、国の助成金制度を上手く活用して(※)、費用を軽減するのがおすすめです。
(※)「キャリアアップ助成金パンフレット(令和3年度)p44」より
定期的に制度内容に変更あり
以下の記事では、健康診断における会社負担の範囲について、より詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
受診している時間の賃金はどうすべきか?
厚生労働省HP「よくある質問」によると、一般健康診断を受診している時間の賃金については次のように記載されています。
- 受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべき
- 円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい
再検査・精密検査の必要があった場合は、費用は労使間の協議によって決まるとされています。
一般的には、再検査の必要がある従業員には再検査の勧奨までで終了している企業が多いです。再検査の費用に関しては、安全衛生委員会で労使の合意を取り、就業規則に明記しておくのもひとつの手でしょう。
人間ドックは定期健康診断の代用になる? 費用は誰が負担?
定期健康診断の法定項目を満たしていれば、人間ドックでの代用は可能です。従業員は人間ドックの結果の写し等を会社側に提出する必要があります。
また人間ドックの費用負担については、労働安全衛生規則に定められていない項目を含むため、労使双方の話し合いで決める場合が多いです。
- 全費用を従業員の自費負担にする
- 法定項目のみ会社負担にし、法定外の項目は自己負担
- 健康保険組合や自治体の補助金を利用し、一部を会社負担
上記は一例ですが、対応は会社によってさまざまです。
定期健康診断で異常が見つかった人への対応(事後処置)は?
異常所見があった労働者に対し、以下の事後処置を行う必要があります。
- 保健指導、受診勧奨の実施(安衛法第66条の7)
- 就業判定(安衛法第66条の5)
健康診断を実施してから3か月以内に、就業制限や休業などの措置が必要かどうか、産業医の意見を仰ぎましょう。
具体的な事後措置の取り組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
健康診断の結果を見られるのは誰?
健康診断の結果を見られるのは、「産業医、保健師等、衛生管理者その他の労働者の健康管理に関する業務に従事する者」などの産業保健業務従事者です。健康診断実施の担当者、人事労務担当者、職場の管理監督者などが挙げられます。
産業保健業務従事者以外の者が結果を取り扱う際は、就業措置において必要最小限に留めるように定められています。
健診結果などの健康に関する情報は「要配慮個人情報」にあたるため、情報の取扱いには十分な配慮が必要です。
健康情報取扱規程については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
定期健康診断の要点をチェック!
定期健康診断は1年以内ごとに1回の実施が必要であり、正社員はもちろんのこと、条件を満たせばパートや契約社員も実施対象者となります。
健康診断の実施方法や結果の活用については、以下のお役立ち資料で解説していますので、ぜひご活用ください。
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また、健康診断個人票の作成や定期健康診断結果報告書の提出を含めると、人事労務担当者の業務負担は非常に大きいです。
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