産業医の意見書は面談によって違う?意見書の効力やフォーマットについて解説!
従業員の健康を守るためには、産業医の意見を取り入れて総合的に判断します。
そこで注目されるのが産業医の意見書です。本記事では、産業医の意見書の内容や違いについて詳しく解説していきます。
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産業医の意見書とは?面談内容によってさまざま
産業医の意見書とは、産業医がおこなう職場巡視や産業医面談のあとに、事業者に向けて業務上の助言・意見などをまとめた報告書のことです。
産業医面談は、健康診断・ストレスチェック・長時間労働・休職復職関連などさまざまで、面談内容に応じて「意見書」を作成します。
事業者に向けた意見書の一例は以下のとおりです。
- 就業上の措置(時間短縮勤務・フレックスタイム・通勤方法など)
- 職場環境の改善や整備
- 所属部署や業務内容の変更
- 休職に関する内容
- 復職の判断(可否)など
産業医を選ぶ際のポイントについては、以下のお役立ち資料で詳しくご紹介していますのでぜひご活用ください。
>>>資料ダウンロード(無料):自社に合う産業医を選ぶために知っておきたいこと
また、産業医については以下の記事で詳しく解説しています。
では、具体的にどのような産業医の意見書があるのかチェックしていきましょう。
健康診断に関する意見書
産業医は健康診断の結果、異常の所見があると診断された従業員に対し、健診後3ヶ月以内に意見を聴取し、改善点のアドバイスと意見書を作成します。
産業医が「健康診断個人票」の医師の意見の項目欄に就業判定を記入する形式です。
就業判定は3区分に分かれており、内容は以下の通りです。
引用:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について」
企業は産業医の意見書を参考に、就業制限が必要な場合には就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮などの措置をおこないます。
また、要休業の判定が出た場合には一定期間の休暇、休職などの対応を取りましょう。
ストレスチェックに関する意見書
従業員が50人以上いる事業所では、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。
ストレスチェック後に、高ストレスと判定された従業員に対して産業医面談を実施し、面談後にストレス状態や健康について産業医が意見書を作成します。
意見書には、就業場所の変更や作業の転換・時間外労働の制限・職場の環境改善・医療機関への受診などの内容を記入し、事業者の対応や措置を求める形です。
ストレスチェック後の面談は、従業員に対して強制力はありませんが、できる限り面談してもらえるよう、企業側と産業医が促すことが大切でしょう。
高ストレス者への対応については、以下の記事で詳しく説明しています。
休職・復帰に関する意見書
産業医は、従業員が休職する場合や、休職した従業員が復職する場合に意見書を作成します。
休職する場合には「主治医の診断書」が必要ですが、「産業医の意見書」については必ず提出するわけではありません。
ただし、就業規則の休職制度に「産業医面談の実施」が記されているときには、主治医の診断書と従業員の体調を踏まえた上で意見書が必要になるでしょう。
また、休職中の従業員が復職する際にも、主治医の診断書を踏まえて産業医面談をおこない、復帰の可否を決める意見書が必要です。
産業医の意見書は、従業員の健康確保やスムーズに職場復帰する重要な役割を果たしています。
復帰時の産業医の意見書と主治医の診断書は違う?
主治医の診断書は、従業員の病状の回復具合や日常生活に支障がないかを判断します。
対して産業医の意見書は、業務遂行能力・労働意欲・労働後の疲労回復能力があるかなど、職場環境を想定して復職できるかを判断していきます。
日常生活ができるレベルであっても、職場復帰ができるかどうかはまた別問題です。
もし見解が分かれた場合は、普段から従業員の労働管理を実施している産業医の意見書を優先する場合が多いようです。
復職には、主治医の診断書、次に産業医の意見書を参考にして、最終的に企業が復職の判断をします。
長時間労働に関する意見書
時間外・休日労働時間など一定時間を超える長時間労働、かつ従業員に健康被害が及ぶ可能性がある場合には産業医面談が必要です。(労働安全衛生法第66条の8)
産業医は、健康リスクのある従業員にアドバイスをおこない、指導後は就業判定や必要な措置に関しての意見書を作成します。
長時間労働の意見書には以下の内容が含まれます。
- 通常勤務・就業制限・要休業(就業区分)
- 就業上の措置(労働時間や作業内容の制限)
- 医療機関への受診など
長時間労働者への産業医面談についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
体調不良やメンタルヘルス不調時に関する意見書
従業員の体調不良やメンタルヘルス不調時にも産業医の意見書を作成します。
体調不良時の意見書
体調不良による従業員の欠勤や遅刻が増え業務に影響が出ている場合は、産業医面談を実施します。
産業医からの指導やアドバイスのほかに、就業が難しくなれば時短勤務や休職など就業制限を必要とする意見書を企業に提出します。
メンタルヘルス不調時の意見書
過重労働によるストレス疾患や、業務上の人間関係などが原因でメンタルヘルス不調の可能性がある従業員に対しては、人事労務担当者だけでなく産業医の対応も必要です。
産業医面談をおこない、医療機関への受診勧奨やストレス対処法の指導、他にも就業判定や就業への配慮を必要とする意見書を企業側に提出する場合もあります。
産業医の意見書の効力はある?
そもそも産業医の意見書は、事業者に対して業務上の措置や助言が報告されたものであって、法的強制力はありません。
ただし、産業医の意見書を無視して従業員に健康被害が出た場合には「安全配慮義務違反」となる可能性があります。
また、産業医が意見書を提出しても改善が見られない際は「産業医からの勧告」を受ける場合も。
労働安全衛生法13条5,6によると「労働者の健康を確保するため必要があるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる」とありますので、事業者は勧告を尊重しなければいけません。
産業医の意見書は、従業員の健康確保には欠かせないものになってくるため、産業医と事業者が連携しながら健康管理を進めましょう。
厚生労働省の産業医意見書に関するフォーマットを紹介
厚生労働省では、長時間労働・高ストレス者への面談指導に関する意見書マニュアルを公表しています。
他にも、職場復帰に関する意見書のフォーマットもありますので、参考にしてください。
また、厚生労働省の委託によって設置された中央労働災害防止協会においても、職場復帰に関する意見書のフォーマットが紹介されています。
人事労務担当の方は、産業医面談の際に必要な「産業医の意見書」を準備しておくと安心でしょう。
- 厚生労働省:長時間労働・高ストレス者の意見書フォーマット
- 厚生労働省:職場復帰に関する意見書
- 中央労働災害防止協会:心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援 の職場復帰支援の手引き
産業医の意見書を参考に労働災害に対応していきましょう
産業医の意見書は、高ストレス・健康診断での異常所見・長時間労働による健康被害・休職や復職などの健康状態を判断し、対応していくために有効な手段です。
就業判定や就業措置を、事業者や従業員本人の考えのみで判断するのは難しいでしょう。適切な措置を実施していくためにも、産業医の意見書を参考にして、労働災害を防いでいきましょう。
産業医を選ぶ際のポイントについては、以下のお役立ち資料で詳しくご紹介していますのでぜひご活用ください。