アルバイトも健康診断は受診必須?義務になる条件と費用について解説
企業における従業員の健康診断は、法律で義務付けられているため、必ず実施する必要があります。
一方で、正社員以外を雇っている企業では「アルバイトでも同じように健康診断を受けてもらう義務があるのか」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
本記事では、アルバイトでも健康診断の義務が発生する条件やかかる費用、健診をスムーズに受けてもらう対策など、アルバイトを対象とした健康診断に関する企業の対応について詳しく解説します。
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アルバイトも健康診断を受けてもらう義務はある?
健康診断の実施は、事業場の規模に関係なく全ての事業場に義務付けられています。労働安全衛生法によると、常時使用する労働者に対して1年に1回の健康診断の実施が必要であると定められています。
アルバイトを含む、雇用形態別の健康診断については以下の資料で詳しく解説していますので、ぜひお役立てください。
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健康診断については、以下の記事で詳しく解説しています。
一定の有害な業務、また特定業務労働者に対しては6カ月に1回健康診断の実施が必要です。
これらはアルバイトであっても、一定の条件を満たしている場合は実施義務の対象となります。その条件とは、以下の2つです。
- 常時使用する労働者である
- 特定業務、有害業務に携わっている
アルバイトで健康診断を受ける義務が発生する上記の条件について、詳しくご紹介します。
アルバイトでも健康診断の対象となる2つの条件
アルバイトであっても労働時間・勤務期間などが常時使用する労働者に該当する場合や、特定業務や有害業務に携わっている場合は、健康診断を実施する必要があります。
それぞれ詳しく解説します。
一定の労働条件を満たす
労働時間や契約期間の条件を満たしているアルバイトは「常時使用する労働者」に該当するため、健康診断を1年に1回実施する義務があります。
「常時使用する労働者」とは、以下の条件に該当するケースを指します。
- 1年以上契約している人、または1年以上契約することを予定している人(無期契約の人も含む)
- 1週間の労働時間が正社員の労働時間の3/4以上の人
厚生労働省「パートタイムの健康診断を実施しましょう!」より引用
1の条件を満たしており、週の労働時間が正社員の1/2以上3/4未満のアルバイトに対しては、健康診断の実施義務はありません。しかし、厚生労働省の通達では健診の実施が望ましいとされています。
また、アルバイトであっても常時使用の労働者の条件を満たす場合は、雇入時健康診断も実施することが求められます。
特殊業務に携わる
特殊業務や有害業務に携わるアルバイトも、健康診断の対象となります。
・特定業務従事者健診
深夜業や重量物の取り扱い業務など、特定業務に従事する者に対しては、6カ月に1回健康診断を行います。
労働安全衛生法規則に掲げられている特定業務とは、以下の通りです。
・多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
・多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
・ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
・土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
・異常気圧下における業務
・さく岩機、鋲(びょう)打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
・重量物の取扱い等重激な業務
・ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
・坑内における業務
・深夜業を含む業務
・水銀、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
・鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
・原体によって汚染のおそれが著しい業務
・その他厚生労働大臣が定める業務
このような特定業務に携わる労働者は、アルバイトであっても6カ月に1回の頻度で、一般健康診断を実施しなければいけません。
・特殊健康診断
また、有害業務に携わる人はアルバイトでも「特殊健康診断」を実施する必要があります。有害業務とは、
・鉛業務
・粉じん業務
・有機溶剤業務
・特定化学物質を製造し取り扱う業務
・放射線業務
などが該当します。特殊健康診断は、有害業務が体への悪影響を未然に防ぐことを目的としています。そのため、契約形態・労働時間に関係なく6カ月に1回、さらには雇入時や配置換えの度に該当する種類の特殊健康診断を実施することが義務付けられています。
特殊健康診断については、以下の記事で詳しく解説しています。
アルバイトの健康診断の費用は会社負担が原則
労働安全衛生法により、アルバイトでも上記の条件を満たせば健康診断を実施する義務が発生します。実施義務は企業にあるため、費用は基本的に全て企業側が負担すべきものとされています。
健康診断は保険適用外になるため自由診療になります。定期健康診断の場合、相場は1人5,000円〜15,000円前後とさまざまです。医療機関によって費用は変動するため、健康診断の依頼先は慎重に検討、選定するようにしましょう。
健康診断を受ける義務のあるアルバイトに、スムーズに受けてもらう3つの工夫
アルバイトに健康診断をスムーズに受けてもらうため、企業側が実施できる工夫を3つご紹介します。
①健康診断中の時給の支払い
スムーズに受けてもらう工夫の代表例は、「賃金」に関するわだかまりの解消です。休日を活用して健康診断を実施する場合などは特に、「無給ならわざわざ受けに行くのは面倒くさい」と感じる従業員も増えてしまうでしょう。
そうならないためにも、健康診断に要した時間に対する賃金の支払いは事前に検討しておくことを推奨します。
健康診断には「一般健康診断」と「特殊健康診断」の2種類あります。それぞれの健康診断に対する賃金の支払いについて、法律上の決まりはどうなるのでしょうか?
・一般健康診断
一般健康診断は従業員の健康を守るためのもので、年に一度の定期健診や雇入れ時健診は、一般健康診断にあたります。
業務と直接の関係はないので、健診を実施している間の賃金を支払う義務はありません。
しかし、従業員の健康は業務を円滑に運営するために不可欠です。全ての対象者にスムーズに健診や報告を実施してもらうためにも、健康診断中の賃金の支払いを検討すると良いでしょう。
・特殊健康診断
特殊健康診断は業務の遂行に密接に関係しているため、健診に要した時間は労働時間として換算されます。よって、特殊健康診断の実施中も賃金の支払いが必要になります。
労働時間外に実施する場合は、割増賃金を支払わなければならないと定められています。
②勤務日ではないアルバイトへの対応
条件を満たしたアルバイトは健康診断を受けるのが義務であることを伝え、必要であれば仕事の調整などをして配慮を示し、受診を促しましょう。
健診の日時を事前に伝え予定に加えてもらうようにしたり、健診の実施日を複数日設定したりして、受診するタイミングを見つけやすくする工夫をしてください。
③就業規則への追記
就業規則にアルバイトでも健康診断を受けるべき義務の詳細を記載しましょう。就業規則にきちんと明記しておくことで、業務命令としての扱いが可能になります。
具体的にどのように記載すればよいのか、記載例をご紹介します。
1、労働者に対しては、採用の際及び毎年1回(深夜労働に従事する者は6か月ごとに1回)、定期に健康診断を行う。
2、前項の健康診断のほか、法令で定められた有害業務に従事する労働者に対しては、 特別の項目についての健康診断を行う。
3、第1項及び前項の健康診断の結果必要と認めるときは、一定期間の就業禁止、労働時間の短縮、配置転換その他健康保持上必要な措置を命ずることがある。
就業規則に記載したなら、周知してもらうため配布やメールへの添付、社内掲示板などを使用し知ってもらうように工夫しましょう。
アルバイトに健康診断を拒否された場合の対応
健康診断を拒否された場合、なぜ受けたくないのかまずは本人に理由を尋ねましょう。
- 忙しくて時間がないから
- 心配なときに自分で医療機関を受診するから
- 面倒だから
など、さまざまな理由が考えられます。個々の事情に対し、どのように対応できるか考慮するためにも、まずはきちんと理由をヒアリングしてください。
会社として従業員の健康を守るのも大切な仕事のひとつであると伝え、健診を受けることによって得られるメリットを伝えましょう。
自覚症状がない病気の発見や、生活習慣病の予防などができること、また受けない場合はどのようなリスクがあるかを伝えることもできるでしょう。
事業所が指定する医療機関で受診する場合は、健診結果を提出する必要があることも伝えてください。
健康診断を拒否された際の対応の
詳細については、以下の記事で解説しています。義務ではない人にも健康診断を受けてもらう必要はある?
健康診断が義務ではない人にも、健診を実施する必要はあるのでしょうか?
厚生労働省のアンケートではパートタイム労働者が企業に対して、健康管理のひとつとして健康診断の実施を望む人が多いことが分かっています。
厚生労働省「パートタイムの健康診断を実施しましょう!」より引用
アルバイトも含め、全員の健康管理を企業が行うことで離職率の低下や人手不足の解消が期待できます。健康経営の一環として、アルバイトの健康診断も積極的に行いましょう。
アルバイトにも健康診断を受けてもらい、会社の活性化につなげよう
従業員の健康管理は企業側の責任でもあります。社員だけでなく、アルバイトの健康管理も行うことで会社の活性化につながるでしょう。
そのためにも、実施義務の対象となるアルバイトはもちろん、義務対象に該当しないアルバイトに対しても健康診断を実施することは大切です。
アルバイトの健康にも気を配りながら健康管理をおこない、企業全体で生産性の向上を目指しましょう。
アルバイトを含む、雇用形態別の健康診断については以下の資料で詳しく解説していますので、ぜひお役立てください。