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【人事労務担当者向け】うつ状態が続いて休職するときの流れについて

うつ状態とは、不安障害や統合失調症、適応障害、パーソナリティ障害などうつ病を含むあらゆる精神疾患で見られる症状です。今回はうつ状態が続いて休職する労働者がいる場合の流れや事業所としての対応、再発防止などについてご紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.うつ状態やうつ病などの診断
  2. 2.休職と休職に関する制度
  3. 3.うつ状態やうつ病などと診断された労働者への対応
  4. 4.うつ状態の再発防止のためにできること
  5. 5.うつ状態で休職する労働者が安心して復職できる支援を


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うつ状態やうつ病などの診断

うつ状態が続く人に対して、うつ病をはじめとする精神疾患の診断は実際どのようにされるのか、その流れをご紹介します。


うつ病の症状とうつ病に似た疾患の例

一般的に「うつ」というと「うつ病」が有名で、気分障害のひとつといわれています。うつ病では1日中気分が落ち込み、なにをしても楽しめない、やる気が出ない、集中力が下がる、眠れない、食欲がない、生きているのがつらいと感じる、といった症状が続きます。

こうしたうつ状態は「抑(よく)うつ状態」とも呼ばれ、うつ病のいくつかの症状が続いている状態を指します。また、この抑うつ状態は以下のような他の精神疾患が該当する場合もあります。

  • 双極性障害
  • 気分変調症(持続性抑うつ障害)
  • 適応障害
  • 不安障害
  • 統合失調症 など


うつ状態やうつ病などはどのように診断されるのか

うつ状態やうつ病などは、本人自身がなんらかの症状を訴える、または周囲の人からの勧めで受診する、会社の健康診断やストレスチェックでひっかかったことで面談・受診するといったきっかけから診断されることがあります。

うつ病の診断基準として一般的に使用されているのは、『DSM-5』という「抑うつエピソード」の診断基準です。この基準に基づいた確認のほかに、他の医学的疾患による抑うつ状態を鑑別する場合もあります。

他に本人から既往歴や家族歴、生活、職歴、パーソナリティ傾向やストレス因子などについて問診や診察を通して把握し、血液・尿検査心電図や頭部CT、心理検査などをおこない総合的に判断します。

近年では臨床現場でもうつ病が多様化しているため、「○○うつ病」と呼ばれる細分化したうつ病も提唱されていますが、専門家による考察や仮説の段階にある概念のものも多くあります。


休職と休職に関する制度

働いている人は、うつ状態が続いてうつ病などと診断されて休職となることも少なくありません。

そもそも休職とは、厚生労働省のモデル就業規則では「労働者について、労務に従事させることが不能又は不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約関係そのものは維持させながら、労務への従事を免除すること又は禁止すること」とされています。

しかし、休職の定義、期間の制限、復職に関する休職制度については労働基準法で定められているわけではないため、企業の就業規則によって定義や対応が異なります。

そのため、自社がどのような就業規則で休職についてまとめているか確認することが必要です。


休業にはいくつか種類がありますが、うつ状態やうつ病などのようにメンタルヘルス上の理由による休業には傷病休暇(病気休暇)があります。

​​​​厚生労働省のモデル就業規則では、「休職期間中に休職事由がなくなった場合は、当然に休職が解除され復職となります」「休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職の期間の満了をもって退職とする」としています。


>>>休職や就業規則についてのより詳しい情報は以下の記事をご覧ください。

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休職期間の平均値

厚生労働省が発表している研究によると、うつ病を含むメンタルヘルス不調により休職した労働者の1回目の病休日数平均は107日(約3ヶ月半)、2回目の平均は157日(約5ヶ月)と2回目のほうが長い傾向にあります。

入社年齢が高く、1回目の病休日数が長いことが2回目の病休日数を長くさせる要因であることが示唆されています。

また、短時間勤務を含めた復職日までの療養期間の中央値は106日(約3ヶ月半)で、フルタイムまでの日数の中央値は259日(約8ヶ月半)であることがわかっています。そのため、休職や復職の期間は数ヶ月単位で長期的に見ていく必要があります。


うつ状態やうつ病などと診断された労働者への対応

実際にうつ状態、うつ病と診断された労働者への対応について、ポイントをまとめました。


傷病休業の手続きやこころのケア

うつ状態の労働者に対して人事労務担当者ができることは、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」や企業の就業規則に沿って、適切に対応していくことです。

まずは労働者から主治医による診断書が管理監督者に対して提出されることで、傷病休業が開始されます。休業に関する手続きを進めつつ、同時に労働者のこころのケアおよび療養に専念してもらって回復を待つというスタンスが基本です。

また、休業する労働者は経済的な不安や復職できるのかといった不安を抱えやすいものです。

たとえば、休業中に安心して療養に専念できるような支援のポイントとしては以下が挙げられます。


  • 傷病手当金などの経済的な保障
  • 不安、悩みの相談先の紹介
  • 公的または民間の職場復帰支援サービス
  • 休業の最長(保障)期間等    など

休業中の過ごし方についてわかりやすく書面にしたものを、労働者に提示できるといいでしょう。労働者が休職している間は、主治医を含めた企業と三者連携を早い段階から意識していきます。


職場復帰可能の判断

症状が改善し、労働者に職場復帰の意思があれば、主治医による職場復帰の可否の判断が記された診断書の提出を求めます。

ただし、これは職場で必要とされる業務遂行能力まで回復しているかどうかを判断するものではありません。内容については、あらかじめ主治医に求められる業務遂行能力や社内勤務制度に関する情報を提供しておくことも方法のひとつです。

また、産業医や産業保健スタッフなどが精査して必要な対応を判断し、意見を述べることが重要です。そのなかで、労働者には毎日の通勤、就業が安全に継続できるよう生活リズムを合わせて準備をしてもらうことが大切です。


職場復帰の可否の判断、職場復帰支援のプラン作成

職場復帰を考える際は、労働者に仕事を命じて健康上の問題はないかどうか、本人や主治医、産業医らの意見をもとに本当に職場復帰が可能かの最終判断をしなければなりません。

しかし、場面が限られた診察や本人の意思だけで判断するのは難しいものです。職場では復職準備プログラムなどを通して、必要とされている業務遂行能力までどれだけ回復しているかの判断を進めていくことが大切です。

安全でスムーズな職場復帰を支援するための具体的なプランは以下が挙げられます。


  1. 情報の収集と評価
    ・労働者の職場復帰に対する意思の確認
    ・産業医らによる主治医からの意見収集
    ・労働者の状態などの評価
    ・職場環境などの評価
    ・その他、治療に関する問題点、本人の行動特性や家族の支援状況、職場復帰の阻害要因など
  2. 職場復帰の可否についての判断
  3. 職場復帰支援プランの作成
    職場復帰日、管理監督者による就業上の配慮、人事労務管理上の対応、産業医らによる医学的見地からみた意見、フォローアップ、その他試し出勤精度に利用や事業場外資源の利用など


職場復帰支援プログラムの作成については、以下の記事で詳しく解説しています。

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職場復帰の最終決定、その後のフォローアップ

復職支援の具体的なプランの作成後、最終的に職場復帰の決定をおこないます。労働者の状態の最終確認や就業上の配慮に関する意見書の作成、事業者が最終的な職場復帰の決定をした上で、労働者に対して通知します。

その後、復帰後の事業場の対応や就業上の配慮の内容は、労働者を通じて主治医に伝える流れです。

職場復帰後は、管理監督者による観察と支援を継続的におこない、産業保健スタッフらによるフォローアップおよび職場復帰支援プランの評価や見直しをおこないます。


特にうつ状態やうつ病に関する休職の場合には、通院や治療が年単位になることもあり、病気の再燃・再発の可能性も少なくありません。新たな問題の発生も考えられるため、状況を継続的に注視する必要があります。

不調が見られる場合には早めに主治医や上司に相談するように本人に伝え、本人の状態や経過が順調であれば就業上の配慮事項を変更します。特に通院や服薬を中断していないか、作業の能率や態度に問題がないか、遅刻・早退・欠勤がないかなどを確認します。

また、休職した本人への配慮だけでなく、職場に戻る労働者の支援をおこなう上司や同僚に配慮することも大切です。職場全体で本人の状態を理解するように努めるとともに、上司や同僚に過度の負担をかけないよう配慮が必要です。


うつ状態の再発防止のためにできること

うつ状態やうつ病は薬の影響・休業などで一時的によくなっている場合もあり、長期的にフォロー、再発防止に努めていくことが大事です。そのためにできることをご紹介します。


職場復帰のためのフォロー

傷病休暇開始の早い段階から復職に向けて関係者で連携して対応していくことが求められますが、大切なのは焦らないことです。

うつ状態やうつ病の場合には、本人の症状によっては周りに迷惑をかけてしまっている、前みたいに働ける自信がない、早く復帰しないといけないという焦りや不安が起こりやすい状態にあります。

そのため、本人や職場だけの対応ではなく家族を含めた環境づくりやリワークプログラム・リワーク支援などの活用によって職場復帰に向けたウォーミングアップを図るといいでしょう。

リワークプログラムは医療機関で、リワーク支援は地域障害者職業センターで実施されているプログラムです。リワークプログラムは治療の一環として本人の希望で実施され、専門医が常駐しています。

リワーク支援は精神障碍者総合雇用支援の一環として、本人と雇用事業主、主治医の三者同意のもとに実施されます。主治医の助言を得ながら支援計画を策定し実施します。


うつ状態で休職する労働者が安心して復職できる支援を

労働者が安心して復職できるように、人事労務管理や産業保健スタッフ、職場の上司など総合的なアプローチで支援していくことが大切です。

そのために焦りは禁物です。まずはこころのケアと、企業における休業に関する制度をしっかりと活用した上で無理なく復職できるように、環境づくりを進めていきましょう。



メンタルヘルス不調者の復職支援については、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひお役立てください。

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mediment(メディメント)は、従業員のあらゆる健康データを一元管理し、産業保健業務の効率化を支援するクラウドシステムです。 クラウドシステムならではの多彩な機能で、あらゆる業務のペーパーレス化を実現し、従業員のパフォーマンス向上に貢献します。

監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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