健康診断結果の見方を徹底解説!数値や判定からわかること
健康診断結果の見方がわかるようになれば、自身の健康状態を的確に把握し、結果に基づいた健康管理をおこなえます。
この記事では、企業側が円滑な健康経営につなげられるよう、健康診断結果の数値や判定の見方、注意点を徹底解説します。
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健康診断の実施方法や結果の活用については以下のお役立ち資料で解説していますので、ぜひご活用ください。
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健康診断結果の判定の見方
健康診断結果の判定区分は、医療機関により細かい内容は異なるものの、主に以下のように分けられます。
A |
異常なし |
B |
軽度異常 |
C |
要再検査・生活改善 |
D |
要精密検査・治療 |
E |
治療中 |
健康診断の結果、Cの「要再検査」やDの「要精密検査」と判定された場合には、なるべく早期に医療機関を受診することが求められます。
企業単位で実施する健康診断の大きな目的は、異常の早期発見や予防です。就労が困難になるような重大な病気・ケガを未然に防ぎ、健康的に働き続けられるよう健康診断をうまく活用しましょう。
とはいえ、多くの労働者は健康診断結果を受け取っても、「実際にどのように見ていいのか」「何を示しているか分からない」といった声も多く聞かれます。
企業はそういった労働者に対して、産業医を通じての健康管理指導へつなげるなどの対策が求められます。労務担当者も健診結果の基本的な見方を把握しておくと良いでしょう。
C・Dの判定では、二次検査が必要になります。二次検査の義務の有無や受診勧奨については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
健康診断結果の数値の見方と注意点
そもそも、健康診断は自己の病気の予防や早期発見ができるのはもちろん、生活習慣から起こる「生活習慣病」の予防につなげられることも、目的としています。
健康診断は、自分の体を見つめ直す大切な機会の1つです。自己の健康管理に役立てられるよう、健康診断結果における数値を正しく理解でき、注意点を知っておきましょう。
・身体測定
身体測定は身長測定・体重測定・腹囲測定のほか、BMI(体格指数)、%FAT(体脂肪率)を測定します。
ちなみに、BMIは身長と体重が分かれば、誰でも以下の方法で計算し、算出できます。
BMI(体格指数):体重(kg)÷(身長(m)×2)
BMII(体格指数)のほか、%FAT(体脂肪率)、腹囲に関しての基準値、異常値の場合における説明を表に示したので、参考にしてみてください。
基準値 |
数値の説明 |
|
BMI(体格指数) |
18.5〜24.9 |
高値:肥満傾向 低値:痩せ傾向 |
%FAT(体脂肪率) |
体重に占める脂肪量 |
|
腹囲 |
男性:85㎝未満
女性:90㎝未満
|
メタボリックシンドローム
判定するための指標、
内臓脂肪の蓄積度合いを調べる
|
・血圧
血圧は、血管の弾力性・太さ・心臓から送られる圧や量をかけ合わせて、示された値です。主に、心臓のポンプ機能が正常に働いているかどうかを確認するために、計測しています。
全身状態のバランスが崩れ、血液の流れが悪くなれば、高血圧や低血圧となります。高血圧や低血圧の状態を放置すれば、最悪の場合、命の危険性につながる可能性もあります。
一般的に、血圧には収縮期血圧と拡張期血圧があります。
基準値 |
要注意 |
異常 |
||
血圧
|
収縮期血圧 |
100~129㎜Hg以下 |
130~159㎜Hg |
160㎜Hg以上 |
拡張期血圧 |
~89㎜Hg以下 |
85~99㎜Hg |
100㎜Hg以上 |
基準値というのはあくまで基準値です。基準値から外れ、要注意に該当するからといって、早急に治療が必要というわけではありません。
医師は、それぞれの全身状態や生活スタイル、食生活などを踏まえ、血圧コントロールの必要性や内服薬でのアプローチが必要かどうかを判断します。
・眼科検査
眼科検査では、視力の程度を確認するための検査です。裸眼視力が0.7未満の場合、近視や乱視が疑われます。
・聴力検査
聴力検査は、特殊な音を流すことで、低音・高音の両方が聞こえるかどうかを確認するための検査です。
1,000Hzの低音では30dB以下の音が聞こえれば正常、4,000Hzの高音では30dBが正常と言われています。それ以上の音でないと聞こえない場合、難聴や中耳炎といった病気が疑われます。
基準値 |
要注意 |
異常 |
|
1,000Hz |
30dB以下 |
35dB |
40dB以上 |
4,000Hz |
30dB以下 |
35dB |
40dB以上 |
・尿検査
尿に糖やたんぱく質、血液が含まれているかどうかを調べ、腎臓や尿管、暴行、尿道などの異常を見つけるための手がかりとなります。
【糖】
再検査 |
異常 |
|
陰性(-) |
(±)(+) |
(2+以上) |
【蛋白】
再検査 |
異常 |
|
陰性(-) |
(±)(+) |
(2+以上) |
【潜血】
再検査 |
異常 |
|
陰性(-) |
・血液検査
血液検査では、肝機能検査や脂質検査、糖尿病検査、一般検査の4つに分かれます。
①肝機能検査
肝機能検査では、総蛋白(TP)やアルブミン(Alb)、AST(GOT)、ALT(GPT)の数値から、肝機能状態を評価します。
【総蛋白】
基準値 |
高値 |
低値 |
|
TP |
6.5~7.9mg/dl |
多発性骨髄腫、慢性肝炎、脱水症 |
ネフローゼ症候群、栄養障害、 肝疾患、炎症性疾患 |
【アルブミン】
基準値 |
高値 |
低値 |
|
アルブミン |
3.9mg/dl |
脱水 |
肝疾患 |
【AST(GOT)とALT(GPT)】
基準値 |
高値 |
|
AST(GOT) |
0~30IU/I |
肝機能障害 |
ALT(GPT) |
0~30IU/I |
肝機能障害 |
【LDH・ALP・γ-GTP・LAP・総ビリルビン(T-Bil)】
基準値 |
高値 |
|
LDH |
101 ~224IU/l |
心疾患や血液疾患 |
ALP(アルカリフォスターゼ) |
93~344IU/I |
肝胆道疾患 |
γ-GTP |
0~50IU/I |
アルコール性肝障害 |
LAP |
30~80IU/I |
肝・胆道疾患 |
総ビリルビン(T-Bil) |
0.2~1.2mg/dl |
肝機能検査におけるそれぞれの数値が高い場合、肝硬変や脂肪肝、肝臓がんなどの肝疾患のほか、心疾患や胆道疾患などを引き起こす危険性があります。
アルコールを摂りすぎないようにすることはもちろん、1日3回バランスよく食事をとることや、脂質や糖質の多い食事は避けること、ストレスや疲れを溜め込まず、十分な睡眠をとるようにしましょう。
②脂質検査
総コレステロール(TC)やHDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪(TG)といったデータから、血液内の脂質状態を確認します。
基準値 |
高値 |
低値 |
|
総コレステロール(T-cho) |
140 ~199mg/dl |
動脈硬化 |
栄養吸収障害、低βリポたんぱく血症、肝硬変 |
中性脂肪(TG) |
30~149mg/dl |
動脈硬化 |
異常な高値:急性膵炎 |
HDLコレステロール (HDL-cho) |
40mg/dl |
高値の方が望ましい |
脂質代謝異常、動脈硬化 |
LDLコレステロール (LDL-cho |
60~119mg/dl |
動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞 |
少ない方が望ましい |
※HDLコレステロール:血管の壁から余分なコレステロール(悪玉コレステロール)を除去し、「善玉コレステロール」といわれる
※LDLコレステロール:末梢組織にコレステロールを運び、「悪玉コレステロール」といわれる
総コレステロールや中性脂肪、LDLコレステロール値が高値の場合、血液中の脂質バランスが崩れ、血液がドロドロの状態になり、動脈硬化が早く進んでいることを示します。
動脈硬化を放置すれば、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる危険な病気を引き起こしかねません。そのため、LDLコレステロールや中性脂肪が高い場合やHDLコレステロールが低い場合は、食生活に十分気を付ける必要があります。
③糖尿病検査
血糖値(FPG)やHbA1c、グルコース(GLU)の数値から、糖尿病の危険度を評価できます。
基準値 |
||
血糖値(FPG) |
99以下 |
高値:糖尿病や膵臓癌、ホルモン異常 |
HbA1c |
0~5.50% |
血糖コントロールの度合いを示す |
グルコース(GLU) |
60~99mg/dl |
高値:高血糖 低値:低血糖 |
血糖値の数値が高ければ、糖尿病や膵臓癌、ホルモン異常が疑われます。
また、HbA1cは、過去1~2ヶ月間における平均的な血糖状態を反映するものであり、糖尿病の状態が把握できます。空腹時血糖(FPG)が126mg/dlかつHbA1cが6.1%異常なら、糖尿病と判断されます。
糖尿病は、血糖が高い状態が続くことで、硬化を進行させます。放置すれば、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症、糖尿性神経障害といった合併症を引き起こしかねません。
そのために、栄養バランスのよい食事をとり、定期的な運動や禁煙により、血糖コントロールをしていくことが大切です。
④一般血液検査
一般血液検査では、赤血球数や白血球数、ヘモグロビン、血小板といった数値などから、血液関連の異常が起きていないかどうかを確認できます。
基準値 |
高値 |
低値 |
|
赤血球(RBC) |
男性:400~539万/μⅼ 女性:360~489/μⅼ |
多血症 |
貧血 |
白血球(WBC) |
3,100~8,400/mm3 |
炎症性疾患、腫瘍、細菌性感染症 |
ウイルス感染症、貧血、薬物アレルギー |
ヘモグロビン(Hb) |
男性:13.1~16.3g/dl 女性:12.1~14.5g/dl |
鉄欠乏性貧血 |
|
ヘマトクリット(Ht) |
男性:38.5~48.9% 女性:35.5~43.9% |
鉄欠乏性貧血 |
|
MCV(平均赤血球容積) |
83.0~97.0fl |
ビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血、過剰飲酒 |
鉄欠乏性貧血、慢性炎症に伴う貧血 |
MCH(平均赤血球血色色素量) |
28.0~34.0pg |
||
MCHC(平均赤血球血色素濃度) |
32.0~36.0% |
||
血小板数(PLT) |
14.5~32.9万/μⅼ |
血小板血症、鉄欠乏性貧血 |
再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、肝硬変 |
・心電図検査
心電図検査では、心機能の状態を見ることで、不整脈や心肥大、冠硬化、心筋障害、心筋梗塞などの病気を発見するための検査です。
・呼吸機能検査
大きく息を吸ったり吐いたりすることで、%肺活量や1秒率といった数値を算出し、呼吸機能を確認します。
【%肺活量】
基準値 |
異常 |
80.0以上 |
79.9以上 |
%肺活量の基準値は80%以上ですが、79.9以下では肺の膨張不良を示し、間質性肺炎や肺線維症が疑われます。
一秒率は、最大に息を吸い込み、一気に吐き出した場合、最初の1秒間に何%の息を吐き出せるかを確認する指標です。69.9%以下では肺気腫や慢性気管支炎などが疑われます。
【一秒率】
基準値 |
異常 |
70.0以上 |
79.9以上 |
実施義務がある健康診断の種類とは?
事業者が、労働安全衛生法第66条に基づき、医師による健康診断を実施する必要があります。実施義務がある健康診断は2種類あり、「特殊健康診断」と「一般健康診断」の2種類です。
・特殊健康診断
特殊健康診断とは、労働衛生対策において、有害な業務といわれる業務に携わる労働者が受ける健康診断のことをいいます。
有害な業務とは例えば、屋内作業における有機溶剤業務や放射線業務、特定化学物質業務、高気圧業務、除染等業務、石綿業務、鉛業務、四アルキル鉛業務等の取り扱い等のことを指します。
これらの業務に従事しなくなった場合でも、実施しなければいけない場合もあります。 検査項目内容は業務内容に応じて異なりますが、有害業務に携わる労働者の健康を守ることは大切であることはもちろん、実施しなければ、違法行為につながるため、注意が必要です。
特殊健康診断の詳細については、以下の記事で解説しています。
・一般健康診断
一般健康診断とは、業種に関係なく、すべての企業で実施しなければなりません。 企業によって実施義務のある健康診断は異なりますが、すべての企業に共通する健康診断は「雇入れ時の健康診断」と「定期健康診断」の2つです。
健康診断については、こちらの記事で詳しく解説しています。
健康診断の検査項目
一般健康診断にあたる雇入れ時の健康診断と定期健康診断には、以下の11種類の検査項目があります。
参考:厚生労働省|労働安全衛生法に基づく健康診断の概要
- 既往歴および業務歴の調査
- 自覚症状および他覚症状の有無
- 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
- 胸部X線検査
- 血圧測定
- 貧血検査(血色素および赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、結成トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
・雇入れ時の健康診断
雇入れ時の健康診断は、企業で常時勤める労働者に対して、雇入れの際に実施する必要があります。
正社員に限らず、一定条件を満たしたパートやアルバイト、契約社員なども、雇入れ時健康診断の対象者に該当する場合があります。実施する場合、対象者の範囲に注意が必要です。
・定期健康診断
定期健康診断は、企業で常時勤める労働者(特定業務従事者を除く者)に対して、1年以内ごとに1回など、定期的に実施する必要があります。 基本的に、定期健康診断の受診間隔は1年以上空けてはいけないため、実施シーズンを定めておくと、企業も労働者にとっても実施・受診しやすいでしょう。 また、定期健康診断の項目においては、医師が必要でないと認めるものは除外できます。
定期健康診断の詳細については、以下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。
健康診断結果の数値や判定を理解し健康促進に努めよう!
健康診断は、自己の体を見つめ直すための大切な機会の1つです。
検査結果の数値を正しく理解することで、生活習慣病の予防や新たな病気の早期発見につながります。
健康であるからこそ、私たちは生き生きと仕事に努められます。健康診断の実施義務がある企業側は、労働者が積極的に健康診断を受診し、健康維持・健康増進できるようサポートするため、ぜひ、参考にしてみてください。
健康診断の実施方法や結果の活用については以下のお役立ち資料で解説していますので、ぜひご活用ください。