従業員が産業医面談を拒否したら?企業としての配慮点や対処方法を紹介
産業医面談は、心身の両面から従業員の健康をサポートするためにおこなわれるものです。しかし、従業員が産業医面談を拒否した場合はどのように対処すれば良いのでしょうか。
産業医面談は労働安全衛生法で定められた企業側の義務ですが、従業員には法的な義務はありません。その際の配慮点や対処方法についてご紹介します。
産業医を選ぶ際のポイントについては、以下のお役立ち資料で詳しくご紹介しています。
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産業医面談とは
産業医面談とはどのような目的で、どのような場面でおこなわれるものなのでしょうか。ここではその概要をご紹介します。
産業医については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
産業医面談の基準
産業医面談は従業員の健康をサポートするためにおこなわれ、労働安全衛生法で定められた企業側の義務です。従業員の健康とは身体的なものだけでなく、精神的・心理的な健康も含まれています。
労働安全衛生法により義務付けられているのは、ストレスチェックで高ストレス者に該当した従業員、長時間労働の従業員への面談です。他にも、健康診断の結果で異常・要再検査・要精密検査となった場合、病気の治療・休職・復職に関する面談も従業員の申し出を受けておこなうことができます。
そのなかで、産業医は従業員が万全の体調で仕事に取りかかれるよう、健康診断とその結果に基づく措置、治療と仕事の両立支援、ストレスチェックや長時間労働に対する面接指導などをおこないます。
従業員が50人以上の事業場では産業医を選任して、従業員の健康管理等について相談し、アドバイスをもらうことができます。
詳しくはこちらの記事でも産業医面談についてまとめています。
産業医面談の目的や相談内容について
産業医面談の目的や相談内容はさまざまですが、主にどのような内容を話すのでしょうか。
ストレスチェックで高ストレス者に該当した従業員への面談
ストレスチェックで高ストレス状態と判断された従業員から面談の申し出があった場合、会社の状況を理解している産業医が面接指導をおこなうことが望ましいでしょう。
産業医面談では、産業医が従業員のストレス状況を評価するだけでなく、従業員自身にストレス状況を振り返ってもらい、必要な対処ができるようサポートすることを目的としています。
事前の問診や面接時には、以下のような内容を確認します。(一部抜粋)
- ストレスチェックの結果の振り返りと確認
- ストレスの原因と考えられる要因
- 現在の心身の状態
- 既往歴
- 労働時間
- 睡眠時間
- 休日の過ごし方
- 業務上の背景要因の確認
- 対応についての話し合い など
長時間労働の従業員への面談
時間外・休日労働時間が月80時間を超えた従業員については、本人からの申し出を受けて、産業医面談を実施することができます。
事前の問診や面接では、業務の過重性と従業員の心身および生活状況について、以下のような項目を確認します。(一部抜粋)
- 出勤・退勤時間
- 仕事による負担の有無・裁量度
- 上司からの意見
- 健康診断の結果
- 睡眠状況
- ストレスチェックの結果
- 疲労蓄積度自己診断チェックリスト
- 業務内容や長時間労働発生の理由や今後の見通し
- 既往歴
- 自覚症状
- 仕事以外のストレスの有無 など
健康診断で異常・要再検査・要精密検査となった場合の面談
企業は健康診断で異常や再検査、精密検査が必要となった従業員に対し、産業医による面談指導をおこなうことが義務付けられている措置のひとつです。
健康診断で再検査や治療が必要な状態にもかかわらず、従業員が再検査を受けない場合には、産業医は面談で医療機関の受診を勧めるなどの対応を取ります。
病気の治療・休職・復職に関する面談
治療と仕事の両立支援として、治療を受けながら就業する場合、従業員本人の申し出により面談をおこない、産業医から従業員の病状、生活状況、就業の可否、業務内容で気を付ける点などについてアドバイスを受けることができます。
また、休職や復職の際にも、産業医と面談をおこない、復職の可否、業務内容、職場環境について相談できます。
従業員が休職した際の産業医の役割については、以下の記事で詳しく解説しています。
従業員が産業医面談を拒否した場合の対処
従業員の健康をサポートするうえで重要な産業医面談ですが、もし従業員が拒否する場合にはどのように対処すれば良いでしょうか。
産業医面談は拒否できるのか
労働安全衛生法では、高ストレス者に該当した従業員や長時間労働者など、産業医面談が事業者側に義務付けられているケースがあります。しかし、従業員に対しては法的義務がないため、強制的に面談を受けさせることはできません。
たとえば、「特に負担に感じていないので、私には必要ありません」「自分で別の相談先を探しますから、大丈夫です」と、本人に自覚症状がなく面談の必要性を感じない場合や、企業への不信感があって他にサポートの場所を求める場合に、従業員が産業医面談を拒否することがあります。
そのような場合でも、「必ず受けてください」「あなたのためを思っています、これは業務命令ですよ」と強要してはいけません。
従業員が拒否した場合には、無理強いはせず、あらためて面談の意義を丁寧に説明し、理解を促すことが大切です。それ以上の直接的な介入は控えつつ、状況の変化に応じて適切なタイミングでフォローアップする姿勢が求められます。
産業医面談で企業側が配慮すべきこと
従業員が産業医面談を拒否する場合、または面談に後ろ向きな場合は、まずは拒否する理由を聞き、面談を受ける意義やメリットを説明し、実施への理解を促す必要があります。あらためて従業員一人ひとりに合わせてわかりやすく説明し、理解を得るよう努めましょう。
拒否する理由を傾聴する
心の健康に関する情報はデリケートなものも含まれるため、傾聴する姿勢が重要です。
頑なに拒否する場合には、拒否理由を一方的に聞くのではなく、現在の身体の状況や困りごと、健康診断やストレスチェックの結果への思いなどを汲み取りながら、背景を理解することが大切です。
話を十分に聞いたうえで、産業医は専門家として適切なアドバイスをする必要があります。
たとえば、
「心配な状況ですよね、一度専門の病院へ受診をお勧めします」
「まずは○○が大切ですから、○○の相談を受けてみてはどうでしょうか」
「安心して働けるよう、まずは○○することから始めてみませんか」
など、具体的な提案をすることもあります。
産業医による面接指導では、あくまでもセルフケアの指導やアドバイス、受診勧奨が必要かの判断にとどまり、診断を下すものではありません。
産業医面談の事前の周知と準備
産業医面談の目的や内容がよくわからないと、不信感が募るおそれがあります。そのため、事前に社内で産業医面談の開始を周知するなど、準備が必要です。
産業医へつなぐ窓口担当者が信頼関係を築く
なかには会社への不信感から、産業医を信用できないと主張する従業員もいます。そういった場合は、窓口となる者が間に入り、従業員との信頼関係を築くケースがあります。
プライバシーに配慮した面接環境を用意する
面談の場所や方法の選定なども、従業員の秘密が厳守されるように配慮し、周囲が気にならず、リラックスして受けられる場所にしましょう。
基本的には従業員と産業医の個別面談ですが、面談の内容によっては本人の了承を経て人事や上司も同席し、業務内容や部署配置、契約内容について相談することもあります。
上記のような対応をとっても、従業員が本音を語らず、面談は受けてもその後の受診を拒否する場合もあります。
その際は、
「健康診断の結果もあわせてみると、身体症状がありますので受診が必要な状態です」
「もしこういう状態になったら受診してください、あるいは相談に来てくださいね」
「心配なことが出てきたら、いつでも声をかけてください」
と、産業医や産業医面談の窓口担当者として門戸を広く開けていることを伝えるようにします。
産業医面談を有意義なものにするために
産業医面談は、従業員の身体的・精神的な健康をサポートするための重要なものです。その目的や内容を改めて理解した上で、拒否する従業員に対してもできること・できないことを認識することが大切です。
従業員の健康維持・向上のために、企業側として産業医面談を有意義なものにしていきましょう。
産業医を選ぶ際のポイントについては、以下のお役立ち資料で詳しくご紹介しています。