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「安全衛生委員会」設置義務はある?構成メンバーや法令について詳しく解説

労働者の安全を守るための「安全衛生委員会」。どのような事業場に設置義務があるのでしょう。また設置にあたり、選出する構成メンバーや話し合う内容などに決まりはあるのでしょうか?

法律の規定をもとに詳しく解説していきます。


目次[非表示]

  1. 1.安全衛生委員会とは?
  2. 2.安全衛生委員会を設置義務とする目的
  3. 3.安全衛生委員会「法律で設置義務とされている事業場」
  4. 4.安全衛生委員会で「話し合う内容」と「具体的なネタ」
  5. 5.安全衛生委員会の「開催頻度」
  6. 6.安全衛生委員会の「記録(議事録)」と「開示」
  7. 7.安全衛生委員会の「構成メンバー」
  8. 8.法律で設置義務とされる安全衛生委員会!労使双方の意見を平等に取り入れる体制が大切



安全衛生委員会とは?

「安全衛生委員会」とは、「安全委員会」と「衛生委員会」を統合して実施した場合の名称です。

それぞれ一定の基準に該当する事業場に設置が義務付けられているもので、両方に該当する企業は統合して開催することが認められています。


<安全委員会>

  • 労働者の業務の危険を防ぎ、安全を確保するための委員会
  • 常時50人以上の労働者を使用している事業場のうち、一定の基準に該当する事業場に設置が義務付けられている(労働安全衛生法第17条)

<衛生委員会>

  • 労働者の健康やメンタルヘルスの不調を防止するための委員会
  • 常時50人以上の労働者を使用する全ての事業場に設置が義務付けられている(労働安全衛生法第18条)

<安全衛生委員会>

  • 衛生委員会と安全委員会を統合して開催した委員会
  • 衛生委員会と安全委員会、両方の設置義務対象の事業場が統合して開催することが認められている(労働安全衛生法第19条)


安全委員会と衛生委員会が扱うテーマは異なるため、統合して「安全衛生委員会」として設置した場合は、それぞれのテーマが十分審議されるような対応が必要です。



以下の資料では、安全衛生委員会の基本や効果的に実施するためのポイントを解説しています。

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記事で読みたい方はこちら▼

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安全衛生委員会を設置義務とする目的

「安全衛生委員会」の目的は、労働者の危険や健康障害を防止することです。

1972年に安全衛生委員会の設置が義務付けられるまでは、労働災害の発生件数が非常に多くなっていました。
労働者の危険や健康障害を防ぐには労使が一体となることが大切なため、委員会の設置が義務付けられました。
委員会では事業所と労働者双方が意見を交換して検証し、労働災害に対応していくことが求められています。


安全衛生委員会「法律で設置義務とされている事業場」

安全衛生委員会の設置義務となる事業場の細かい基準を確認しましょう。


設置義務の対象となる事業場

安全委員会・衛生委員会の設置義務の対象事業場は、以下の図のとおりです。(労働安全衛生法第8条及び第2条第1項及び第2項)

引用:厚生労働省「安全委員会、衛生委員会について教えてください。」


常時使用する労働者の数が50人以上の事業場は、「衛生委員会」の設置が義務であり、加えて上記図の一定の業種・規模の事業場は「安全委員会」の設置も必要です。

つまり、衛生委員会と安全委員会を統合して「安全衛生委員会」として設置する事業場は、労働者50人以上で上記図の業種・規模に該当する企業です。


設置義務の対象外となる事業場

一方で、常時使用する労働者が50人未満の事業場は、衛生委員会・安全委員会ともに設置義務はありません。

ただし、設置義務対象外の事業場も「安全または衛生に関する事項について関係労働者の意見を聞くための機会を設けるようにしなければならない(労働安全衛生規則第23条の2)」と定められています。

設置義務対象外の事業場も、従業員へのヒアリングや意見箱、アンケートなどを用い、労働者の意見を聞きやすい体制を整えておきましょう。


安全衛生委員会で「話し合う内容」と「具体的なネタ」

安全衛生委員会で話すべき調査審査事項と、具体的な内容についてご紹介します。


法律で定められている調査審議事項

安全委員会・衛生委員会では「調査審議事項」として、以下図のような内容を話し合い改善していくことが決められています。(労働安全衛生法第17条第1項、労働安全衛生法第18条第1項)

引用:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「安全衛生委員会を設置しましょう 」


「安全委員会」では業務上の安全について、「衛生委員会」では労働者の健康(メンタルヘルス含む)についてが議題となります。


話し合う具体的なネタ

上記の調査審議事項に関すること(労働者の安全や健康について)であれば、具体的に話し合う内容に決まりはありません。例えば以下のような議題があります。


<安全衛生委員会で話し合う具体的なネタ>

労災事例から

・実際に起きた労災の検証と改善策について

健康診断から

・健康診断の実施率や再受診率についての検討
・生活習慣病予防のためのタバコや食生活の指導

季節から

・熱中症予防・風邪予防のために社内でできること

社内公募から

・社内のコミュニケーション問題
・残業や過労の現状調査と対策
・危険防止のための社員からの提案の対応 など

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労働者の健康や安全のための委員会となると固く考えてしまいがちですが、日常業務に沿った身近な議題にすることが大切です。

例えば、「支給されている作業靴のすり減り具合の確認と交換の目安(転倒防止)」のようなテーマも重要な安全管理のひとつです。広い視野で様々な事案を積極的に話し合いましょう。


安全衛生委員会を開催する時の注意点

安全衛生委員会で話し合う上で、注意点があります。個人が特定されないようにする配慮が必要です。

労災に関わった人や、議題を提案した人が匿名を希望していることもありますので、注意を怠らないようにしましょう。


安全衛生委員会の「開催頻度」

安全衛生委員会は法律で定められている制度であり、安全委員会・衛生委員会・安全衛生委員会ともに、月に一回以上開催することが決められています(労働安全衛生規則第23条)。

事前に年間の日程を決めておき、可能であれば議題もスケジュール化しておくといいでしょう。


安全衛生委員会の「記録(議事録)」と「開示」

開催頻度だけでなく、記録と開示についても法律に定めがあります。


安全衛生委員会の記録(議事録)

委員会を開催した際には、その都度議事録を作成しなければなりません(労働安全衛生規則第23条)。議事録には、以下のような内容を記録しましょう。

  • 開催日
  • 参加メンバー
  • 発生した労災について(状況・原因・改善案)
  • 話し合った議題と対応措置の計画 など


安全衛生委員会の議事録の作成方法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

  【テンプレート有り】安全衛生委員会の議事録作成のポイントと取り扱いを解説! 安全衛生委員会の開催時は、議事録の作成が義務づけられています。議事録の作成方法がわからない、テンプレートが欲しいという担当者の方も多いのではないでしょうか。 この記事では人事・労務担当者に向けて議事録の作成方法と取り扱いについて説明しています。 mediment(メディメント)


安全衛生委員会の議事録保管

作成した議事録は、3年間保管することとされています(労働安全衛生規則第23条)。


安全衛生委員会の内容の開示

委員会を開催したら、話し合った内容、決まったことなどを遅滞なく従業員へ周知することも義務付けられています(労働安全衛生規則第23条)。

周知方法として、以下の3つが挙げられています。

  1. 常時各作業場の見やすい場所に掲示する、又は備え付ける。
  2. 書面を労働者に交付する。
  3. 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する。

具体的な議事録の開示方法として、執務室や食堂など従業員が見やすい場所への掲示、従業員全員に書面を配布、イントラネットなど従業員がいつでも確認できる場所への掲示が挙げられます。

話し合った内容が現場に活かされないと、委員会の意味がありません。全従業員に周知できるよう、事業場に合った方法で開示しましょう。


安全衛生委員会の「構成メンバー」

安全衛生委員会を設置するには、委員を集める必要があります。必要な構成メンバーは、事業場が指名します。

安全委員会・衛生委員会に必要な構成メンバーは下記図であり、統合した安全衛生委員会を設置する際は合わせて5つのメンバーを集めましょう(労働安全衛生法第19条第2項)。


引用:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「安全衛生委員会を設置しましょう 」


1.総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者

委員会の議長を務める重要な役割です。

事業場に「総括安全衛生管理者」がいる場合は管理者に指名し、いない場合は、事業を実質的に統括管理する権限と責任を有する者を指名しましょう。人事部長や総務部長などが指名される場合が多いです。

統括安全衛生管理者には、資格は必要ありません。


2.安全管理者

安全管理者とは、総括安全衛生管理者の職務のうち「安全」に係る技術的事項を職務とする管理者です。

一定の業種及び規模の事業場ごとに選任が義務付けられています。

安全管理者がいない事業場は、要件を満たす者を選出し、資格をとってもらって指名しなければなりません。

安全管理者は専門的な知識が必要で、労働安全コンサルタントの資格がある者、一定基準の学科を卒業し実務経験があり研修を修了した者など厳しい要件があります。選出には時間がかかるので注意してください。


3.衛生管理者

衛生管理者とは、総括安全衛生管理者の職務のうち「衛生」に係る技術的事項を職務とする管理者です。常時50人以上の労働者を使用する事業場に選任が義務づけられています。

衛生管理者がいない事業場は、業種に応じて必要な資格を取って選出する必要があります。安全管理者と同様、選出に時間がかかる可能性があるので注意しましょう。


安全管理者と衛生管理者の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

  安全管理者と衛生管理者の違いって?職務や必要な選任資格について解説! 労働安全衛生法により、事業所は労働者の人数に応じて、安全管理者や衛生管理者などを選任しなければなりません。 当記事では、安全管理者と衛生管理者の違いや職務、必要な選任資格を解説します。 mediment(メディメント)


4.産業医

産業医は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に選出することが義務付けられており、安全衛生委員会の設置義務対象の事業場には必ず存在している医師です。

安全衛生委員会を設置する際には、委員の構成メンバーとして指名を行いましょう。



以下の記事では、産業医の業務内容や選任義務についてご紹介しています。ぜひご一読ください。

  産業医とは? 選任義務・役割や業務内容・探し方などを簡単に解説! 安衛法第13条に基づき、常時50人以上の労働者を雇う場合は産業医の選任が義務づけられています。 産業医の設置を初めて実施する人事労務担当者に向け、産業医の選任条件や役割、業務内容、探し方と契約方法、費用相場などをわかりやすく解説します。 mediment(メディメント)


5.労働者(安全・衛生に関し経験を有する労働者)

安全・衛生に関して経験を有している労働者であり、資格などは必要ありません。実際に事業場で働き、現場の状況がわかる人を選出してください。


各構成メンバーの人数と選出方法

5つの構成メンバーの選出方法として、以下の内容が定められています。事業の規模や業務内容によって選出しましょう(労働安全衛生法第19条)。

  • 「1.総括安全衛生管理者又は事業の実施を統括管理する者若しくはこれに準ずる者」は1名を事業場が指名する
  • 1以外の構成メンバーに人数の定めはない
  • 1以外の構成メンバーの半数は、労働者の過半数で組織する労働組合の推薦に基づき事業場が指名する(過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者の推薦)


法律で設置義務とされる安全衛生委員会!労使双方の意見を平等に取り入れる体制が大切

安全衛生委員会は、安全委員会と衛生委員会を統合した委員会であり、労働者50人以上を常時使用する一定の業種・規模に該当する企業に設置義務があります。

労働者の危険や健康障害を防止し、安全を守るための委員会です。労使双方の意見を平等に反映できるよう、審議内容や開催期間、構成メンバーなど法律で細かく規定されています。

ルールに沿って適正な者を選出し、議題も広く社内から募るなど、誰もが安全に健康的に就業できる環境を目指して開催しましょう。


以下の資料では、安全衛生委員会の基本や効果的に実施するためのポイントを解説しています。

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mediment(メディメント)は、従業員のあらゆる健康データを一元管理し、産業保健業務の効率化を支援するクラウドシステムです。 クラウドシステムならではの多彩な機能で、あらゆる業務のペーパーレス化を実現し、従業員のパフォーマンス向上に貢献します。

監修者情報

三浦 那美(メディフォン株式会社産業看護師/第一種衛生管理者)

看護師として大学病院の内科混合病院にて心疾患や糖尿病、膠原病などの患者対応業務に従事。その後、看護師問診や海外赴任向けの予防接種を行っているクリニックに転職。これら医療機関での経験を通じ、予防医療やグローバルな医療提供の重要性を感じ、メディフォンに入社。現在は、産業看護師として健康管理システム「mediment」のオペレーション業務やコンテンツ企画を担当。

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