【担当者必見】健康診断をおこなう病院の選び方と実施の流れを解説
従業員の健康診断は、労働安全衛生法第66条にて企業に義務付けられているものです。適切な健診の受診と業務の円滑化を図るためには、どのようにして病院を選定すれば良いのでしょうか。
本記事では、企業の人事労務担当者に向け、健康診断をおこなう病院の選び方について解説します。
健康診断の実施方法や結果の活用については以下のお役立ち資料で解説していますので、ぜひご活用ください。
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健康診断の実施は企業の義務
健康診断の実施は、労働安全衛生法第66条で定められた企業の義務です。
(健康診断) |
企業は、常時使用する労働者に対して労働安全衛生法に基づいた健康診断を実施する必要があります。労働安全衛生法に基づく「一般健康診断」には、いくつかの種類があります。一般健康診断の種類については次項より説明します。
▼そもそも健康診断とはなにか、概要について知りたい方はこちら
一般健康診断の種類
企業に実施が義務付けられている健康診断には次の5つがあります。
健康診断の種類 |
対象者 |
実施時期 |
雇入時の健康診断 |
常時使用する労働者 |
雇入れのとき |
定期健康診断 |
常時使用する労働者(特定業務従事者を除く) |
1年以内ごとに1回 |
特定業務従事者の健康診断 |
労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者 |
労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務への配置換えの際と、6ヶ月以内ごとに1回 |
海外派遣労働者の健康診断 |
海外に6ヶ月以上派遣する労働者 |
海外に6ヶ月以上派遣するときと、帰国後国内業務に就かせるとき |
給食従業員の検便 |
事業に付属する食堂または炊事上における給食の業務に従事する労働者 |
雇入れのとき、配置換えのとき |
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」
これらのうち、多くの企業に必要となるのが「雇入時の健康診断」と「定期健康診断」です。雇入時の健康診断は雇用の際に必須の健康診断で、新たに雇用した人がいるときに実施します。定期健康診断は、1年以内ごとに1回実施しなければなりません。
これらの健康診断は、「常時使用する全ての労働者」が対象です。パート労働者でも、1年以上の雇用契約、または雇用期間の定めがない場合、1年以上引き続いて雇用した実績があり、かつ一週間の労働時間数が正社員の4分の3以上ある場合は健康診断を実施する必要があります。
そのほか、アルバイトや契約社員の健康診断について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
一般健康診断の項目
雇入れ時および定期健康診断では、最低限実施が必要な検査項目が次のように定められています。
雇入れ時 |
定期健康診断 |
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参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」
ただし、定期健康診断では、それぞれの基準に基づき医師が必要でないと認めるときには身長、腹囲、胸部エックス線検査、喀痰検査などを省略できるとしています。検査を省略できる基準は次のとおりです。
省略できる検査項目 |
省略できる基準 |
身長 |
20歳以上の方 |
腹囲 |
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胸部エックス線検査 |
40歳未満で、次のいずれにも該当しない方
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喀痰検査 |
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貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、 |
35歳未満の方、36~39歳の方 |
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」
健康診断実施後に必要なこと
また、人事労務担当者は健康診断を実施した後には次の業務をおこなう必要があります。
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健康診断の実施と、その後の業務は煩雑です。健康診断を実施する病院を選定する際には、これら業務の効率化という視点も必要でしょう。
次項からは、従業員の健康に配慮しつつ、業務の円滑化を図れる病院の選び方についてご紹介します。
健康診断をおこなう病院の選び方
健康診断をおこなう病院を選ぶ際には、前述した内容を踏まえたうえで、次のポイントを事前に確認しておきましょう。
健康保険組合への確認
健康保険組合の多くは、加入する企業に健康診断にかかる費用の補助を実施しています。ただし、補助を受けるための条件が定められていることもあるため、健康診断をおこなう医療機関を決める前に、健康保険組合に補助の条件などについて確認しておくと良いでしょう。
健康保険組合に確認しておきたいこと
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また、健康診断の依頼を検討している医療機関が、補助の対象であるかもあわせて確認しておきましょう。
受診可能人数の確認
医療機関によって、1回に受診できる人数が異なります。とくに従業員数が多い企業は、何度かに分けて健康診断を実施しなければならない場合もあります。このようなケースでは、受診可能人数を事前に確認し、健康診断の受診スケジュールを立てていく必要があります。
医療機関には、1日に実施している健康診断の回数や一度に受診できる人数とあわせて、予約方法やオプション検査の有無やその内容について確認しておくと良いでしょう。
予約方法の確認
健康診断の予約方法には、「希望日型」「予約枠型」「個人手配型」の主に3種類があります。
希望日型の場合、健康診断の希望日一覧を医療機関に提出することで、医療機関側で日時を調整してもらえます。
予約枠型は、事前に医療機関に予約枠を確保してもらい、企業の担当者がその枠にあわせて従業員を当て込む方法です。
個人手配型の場合、医療機関への予約は従業員自身がおこないます。
事前にどの方法で予約するのかを医療機関に確認しておき、自社に合った方法で予約できる医療機関を選定しましょう。
健康診断後の対応内容の確認
健康診断後の業務の円滑化のためにも、医療機関側が健康診断後の結果の通知などをどのようにしておこなうのかを事前に確認しておきましょう。
具体的には、結果の通知の方法や再検査・精密検査の対応、再検査・精密検査・治療が必要な場合に他の医療機関を紹介できるかなども確認しておきたいポイントです。
医療機関へのアクセスを確認
オフィスや事業所からのアクセスが容易な医療機関で健康診断を実施することは、社員にとっても大きなメリットです。仕事の合間に健康診断を受診してもらえるだけでなく、医療機関との情報連携の円滑化も見込めるなどの利点もあります。
検討している医療機関それぞれの位置と、アクセス方法を把握しておくと良いでしょう。
健康診断業務の流れと健康診断後の業務について
前述したように、健康診断では実施後にもさまざまな業務が発生します。ここからは、健康診断の実施までの流れとその後の対応について説明します。
健康診断業務の流れ
健康診断業務は、基本的に次のような流れで進めていきます。
<雇入れ時・定期健康診断実施にかかる業務の基本的な流れ>
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これらに加え、見積もりの取得や予算の検討、補助金の申請、健診項目のチェックなどの業務も発生します。
健康診断後の業務
健康診断の実施後に発生する業務には、健康診断の結果の通知と診断結果についての医師の所見の確認、健康診断結果の保管の主に3つがあります。
健康診断の結果の通知
健康診断の結果の通知については、常時50人以上を雇用する企業は定期健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出する必要があります。
また、人事労務部門の担当者や衛生管理者などが就業上の措置を実施するために診断結果の提供を希望する場合は、人事労務部門の担当者や衛生管理者にも結果の通知をおこなえます。
2025年1月からは、定期健康診断結果の報告書は原則電子申請による提出が義務化となります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
医師の所見の確認
健康診断で異常が見られる従業員がいた場合、勤務が可能かどうかを確認する必要があります。勤務が可能な場合でも、医師などによる保健指導を受けさせるよう努める必要があります。
健康診断結果の保管
健康診断の結果は、5年間保存しなければなりません。従業員ごとの健康診断個人表を作成して、健康診断の結果を保管しましょう。ただし、法定外の検査項目の保管には、従業員の同意が必要です。
健康診断結果の保管方法のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
従業員の健康と業務の円滑化のためにも自社に合った病院選びを
従業員の健康診断は、労働安全衛生法にて企業に義務付けられているものです。定期的に実施の必要がある健康診断に関する業務は、医療機関や健康保険組合とのやり取りや従業員の受診日程調整、実施後の結果の通知など多岐にわたります。
健康診断を受ける医療機関を選ぶ際には、従業員の健康を守る視点とあわせて、業務の効率化・円滑化も望める医療機関を選定することをおすすめします。
健康診断の実施方法や結果の活用については以下のお役立ち資料で解説していますので、ぜひご活用ください。