健康リスクとは?概要と集団分析方法を紹介
ストレスチェックを実施すると、心理社会的な仕事のストレス要因の程度と労働者の健康に与える影響の大きさを「健康リスク」として判断できます。そして「健康リスク」を参考に、職場環境の改善に繋げることができます。
この記事では、ストレスチェックにおける健康リスクや集団分析の概要と活用方法を解説します。
以下の資料では、ストレスチェックの結果を活用したメンタルヘルス不調をふせぐ方法を解説しています。ぜひ業務にお役立てください。
>>>ダウンロードはこちら:メンタルヘルス不調をふせぐためのストレスチェック活用法
健康リスクとは
健康リスクとは「仕事のストレス判断図」から計算される仕事のストレスに関するリスク程度の指標の1つです。
仕事のストレス判断図とはストレスチェック診断で職業性ストレス簡易調査票を使用した場合に、結果を分析する際に用いられる判断図のことです。ストレスチェックの結果を分析する際は、仕事のストレス判断図より総合健康リスクを計算し、労働者が感じている仕事のストレスを計ります。
なぜストレスチェックの実施が必要か
そもそもストレスチェック制度は、労働者自身のストレスへの気付きを促進することとストレスの原因となる職場環境の改善につなげることの2点が目的です。
労働安全衛生法の改正に伴い、2015年12月1日からストレスチェック制度が常時50人以上の労働者を使用する事業場で義務化、常時50人未満の労働者を使用する事業場では努力義務となりました。
また、労働者の健康確保対策の推進として、2023年度から2027年度に計画されている第14次労働災害防止計画では下記が具体的取組みとして設定されています。
ア) メンタルヘルス対策
(ア)労働者の協力を得て、事業者が取り組むこと
・ストレスチェックの実施のみにとどまらず、ストレスチェック結果を基に集団分析を行い、その集団分析を活用した職場環境の改善まで行うことで、メンタルヘルス不調の予防を強化する。引用:厚生労働省「第14次労働災害防止計画(2023年度~2027年度)-|こころの耳」
ストレスチェックの概要については、以下の記事で詳しく解説しています。
集団分析における総合健康リスク調査の実施
集団分析の方法はさまざまですが、ストレスチェック診断に「職業性ストレス簡易調査票」を使用した場合は「仕事のストレス判定図」を用いて実施するのがおすすめです。
「仕事のストレス判定図」は2種類あります。
- 量―コントロール判定図:仕事の量的負担と仕事のコントロール(仕事の裁量権)を要因として作成される判定図
- 職場の支援判定図:上司の支援と同僚の支援から作成される判定図
引用:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票を用いた ストレスの現状把握のためのマニュアル」
仕事のストレス判定図上の斜めの線は、仕事のストレス要因から予想される病気や疾病、休業などの健康問題のリスクを標準集団の平均を100として表しています。
たとえば、総合健康リスクが120であれば仕事のストレスのために心理的ストレス反応、疾病休業、医師受診率などのリスクが1.2倍になると評価でき、職場環境改善等の対策を検討することが必要となります。
このように結果を標準集団と比較することで、仕事のストレス要因の特徴を全国平均と比較して見つけることができます。
総合健康リスクの算出方法
職業性ストレス簡易調査票の回答を「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」「上司の支援」「同僚の支援」の4つの尺度で労働者ごとに得点化し、下記の計算式より総合健康リスクを算出します。
総合健康リスクの計算式=「量-コントロール判定図の値」×「職場の支援判定図」/100 |
総合健康リスクは、現状の職場のストレス状態が労働者の健康にどの程度影響を与えるかを判断するための指標であるため、総合健康リスクの数値が高いほど労働者の健康リスクが高い状態であることを示しています。
量―コントロール判定図
ここからは仕事のストレス判定図を解説していきます。
まず「量―コントロール判定図」は仕事の量的負担と仕事のコントロールというストレス要因の尺度で構成されています。
仕事の量的負荷
「量―コントロール判定図」の横軸「仕事の量的負荷」について、職業性ストレス簡易調査票では以下のような質問が当てはまります。
・非常にたくさんの仕事をしなくてはならない
・時間内に仕事が処理しきれない
・一生懸命働かなければならない
引用:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57 項目)」
「仕事の量的負荷」は、点数が高いほど健康リスクが高くなります。また、調査票の回答が「そうだ/まあそうだ」が男性で6個以上、女性で5個以上の場合は、仕事の負担が重くなっていないかチェックすることがおすすめです。
仕事のコントロール
「量―コントロール判定図」の縦軸「仕事のコントロール」について、職業性ストレス簡易調査票では以下のような質問が当てはまります。
・自分のペースで仕事ができる
・自分で仕事の順番・やり方を決めることができる
・職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる
引用:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57 項目)」
「仕事のコントロール」は、点数が高いほど健康リスクは低くなります。調査票の回答が「ややちがう/ちがう」が2つ以上ある場合は、仕事のコントロール度について見直すのがおすすめです。
職場の支援判定図
「職場の支援判定図」は、同僚の支援と上司の支援という尺度で構成されています。
職場の支援判定図の点数が高いほど健康リスクは低いですが、調査票での回答が「多少/多くない」の数が5個以上見受けられる場合は、職場の支援状況を見直すようにしましょう。
引用:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57 項目)」
上司の支援
職場の支援判定図の横軸「上司の支援」は職業性ストレス簡易調査票では以下のような質問が当てはまります。
・どのくらい気軽に話ができますか(上司)
・あなたが困った時、どのくらい頼りになりますか(上司)
・あなたの個人的な質問をしたら、どのくらいきいてくれますか(上司)
同僚の支援
職場の支援判定図の縦軸「同僚の支援」は職業性ストレス簡易調査票では以下のような質問があてはまります。
・どのくらい気軽に話ができますか(職場の同僚)
・あなたが困った時、どのくらい頼りになりますか(職場の同僚)
・あなたの個人的な質問をしたら、どのくらいきいてくれますか(職場の同僚)
分析の注意点
仕事のストレス判定図は、「仕事の量的負担」「コントロール」「上司支援」「同僚支援」の4つの側面のみで評価しています。そのため、集団分析をおこなう際は他の情報も考慮して、産業保健スタッフと相談しながら総合的にリスク評価をおこなうようにしましょう。
また、職業性ストレス簡易調査票に限りませんが、ストレス調査をおこなう場合には実施責任者や実施者と実施目的をあきらかにしたり、プライバシーの保護について十分配慮したりと細心の注意が必要です。
健康リスクの活用法
ストレスチェック制度はPDCAサイクルに沿って、組織的に取り組むことが重要です。そのため、ストレスチェック実施から集団分析までおこなったら、その結果を活用して職場環境改善に取り組むようにしましょう。
集団分析によって明らかになった課題別の職場環境改善計画の一例をご紹介します。
引用:労働者健康安全機構・厚生労働省「これからはじめる職場環境改善」
ストレスチェックの集団分析については、以下の記事で詳しく解説しています。
ストレスチェック項目についてはこちら
健康リスク結果を活用して職場環境改善へ
ストレスチェックの実施や健康リスクを分析し、労働者のストレスの程度を把握することで職場の環境改善が期待できます。
健康リスクの結果の他にも考慮して、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止していきましょう。
以下の資料では、ストレスチェックの結果を活用したメンタルヘルス不調をふせぐ方法を解説しています。ぜひ業務にお役立てください。